5.付き合って!
ACR基地。
「長官、他にもバトルスーツを持ってる人がいるなら説明して下さい!」
「なんのことだ?」
「横澤 愛花って子ですよ」
「横澤? バトルスーツは聡美が初号機だが?」
「え?」
「二号機以降はまだ製造していない」
「それじゃ弘樹は?」
「弘樹、だと?」
長官の目の色が変わる。
「話しておいた方がいいか。弘樹のデータは盗まれたんだ」
「盗まれた?」
「ああ」
「犯人は?」
「非公式な組織だからな。警察に被害届を出すわけにもいかない」
「……………………」
「ACR捜査部は総力を上げて調べているが、尻尾が掴めないんだ。横澤 愛花と言ったな。弘樹を使ってるのは確かなのか?」
「はい、俺の前で脱ぎました」
「そうか。少し調べてみよう」
長官はそう言うと部屋を後にした。
(弘樹、お前は何者なんだ?)
聡美はACRを出ると、横澤家に向かう。
ピンポン。
横澤家のインターホンを鳴らした。
弘樹が出てきた。
「聡美か。上がってくれ」
聡美は横澤家に上がる。
「弘樹、聞きたいことがある。お前は何者だ?」
「何者って、戦士だよ」
「長官に聞いたが、お前はACRに属していない。弘樹も盗まれたものだと言っていた」
「俺がいつACRに所属してるなんて言った?」
「え?」
「このスーツはもらったんだ」
「もらった……?」
「メガネをかけた爺さんからな」
「名前はわかるか?」
「確か、滝丸とか言ってたな。いずれ訪れる大いなる厄災から世界を守れって言われて、スーツをもらった。その時にACRの話も聞かされたよ」
「滝丸……。戦い方はどこで?」
「そんなの自己流だよ」
「そうか」
「それで、今日は何しに来たんだ? ただ遊びに来たってわけじゃないだろ」
「話を聞きに来たんだ。スーツのな」
「ごめん。スーツに関しては何も知らない。ただ、戦う力が身に付くだけって聞いただけで」
それにしても——と、弘樹が聡美の胸を触る。
「きゃあ!?」
聡美は弘樹を突き飛ばした。
「痛! お前、まな板な」
「いいだろ別に」
「男はな、女性の胸でその価値を決めるんだ。大きい方がモテるぞ?」
「邪魔なだけじゃん」
「心外だな」
「親父と言いあんたと言い、男ってどうしてこうスケベなの? あ、俺も男か」
「俺は女だぞ、中は」
「そうだったね」
聡美は立ち上がる。
「もう帰るのか?」
「うん、用事があるんだ」
「気をつけて帰れよ」
聡美は横澤家を出ると帰路に就いた。
「うわああああ!」
背後から高校生くらいの少年が駆けってくる。それを怪物が追っていた。
聡美は目にも留まらぬ速度で怪物の前に立ち塞がると、瞬時に攻撃を浴びせた。
吹っ飛ぶ怪物。
「あ?」
立ち止まり様に振り返る少年。
「き、君は?」
「久木 聡美。高校生戦士よ」
「戦士?」
聡美は起き上がった怪物に向かって駆けった。
拳で乱打し、グロッキーに陥れる。
「トドメ!」
聡美は光線で怪物を粉砕した。
「助けてくれてありがとう」
「どういたしまして」
振り返る聡美。
少年は思った。可愛い。
「君、強いんだね。それに光線出したのも凄かったよ」
「誰にも言わないでね。騒ぎになるから」
「うん」
「それじゃ」
聡美は歩き出した。
「待って!」
「え?」
振り返る聡美。
「あの、僕の、彼女になってくれないかな?」
(モテるじゃんかよ)
少年の顔を見つめる聡美。
(童顔だけど、悪くないな)
「いいよ。名前は?」
「吉崎 啓介。啓介って呼んでいいからね」
「わかった。よろしくね、啓介くん」