4.正体
お昼休み。
聡美は食堂に来ていた。
洋子は離れた場所から聡美の様子を見ている。
「こ、ここいいかな?」
聡美は食事を手に、昼食中の弘樹に声をかけた。
「いいよ」
向かい側に座る聡美。
「あ、君はさっきの」
聡美の心拍数が上がる。
(まただ。また緊張してきた)
「あ、あのさ」
「うん?」
「横澤くんって好きな人いるの?」
(なに聞いてんだ俺?)
「いないかな」
「じゃあさ、私と、その……」
もじもじしだす聡美。
「……?」
「つ……」
「つ?」
そこへ他の男子生徒がやってくる。
「横澤!」
「あ、悪い。約束があったんだ」
弘樹はそう言うと、食べ終えた食器を返却し、男子生徒と共に去っていった。
「失敗したみたいだね」
と、洋子。
「なんでいきなり告白させようとしてくれてんの?」
「だって好きなんでしょ?」
「なわけあるか」
聡美は食べ終えた食器を片付ける。
「ええ? でも他の男子はドキドキしないんでしょ? それ絶対に恋だから」
(恋、ねえ)
聡美と洋子は食堂を後にする。
「放課後、一緒に帰るのよ?」
「え? あ、いや」
放課後。
聡美はカバンを手に靴置き場に立っていた。
そこへ帰宅しようとする弘樹がやってくる。
「横澤くん、一緒に帰ろう?」
「俺と?」
「うん。一緒に帰りたいんだ」
「いいよ」
聡美は弘樹と共に帰路に就く。
「久木さん、さっきお昼休みに言いかけてたのってなに?」
聡美は背後に集中している。
「久木さん?」
「え?」
「だから、さっき言ってたの」
「ごめん、なんのことか覚えてない」
「そうなの?」
「うん」
「それより、さっきから後ろばかり気にしてるけど……」
「なんか気配を感じてね」
「気配、だって?」
振り返る弘樹。
弘樹は目を凝らした。
「そこか!」
光弾を放つ弘樹。
「……!」
聡美はその光景に驚いた。
光弾は何かに当たり、その姿を露にした。
それは怪物だった。
「横澤くん、あなた?」
「みんなには内緒だよ」
「じゃなくて、あなたACR?」
「知ってるの?」
「私もACRだから」
怪物は弘樹に迫る。
「終わりだ」
弘樹は接近してきた怪物に近距離から光線を浴びせた。
爆裂霧散する怪物。
「もしかして、それバトルスーツなんじゃ?」
「ご名答」
弘樹の中身が背中から頭を出す。
「……!」
弘樹の中から出てきた人物は、端正な顔立ちをした長髪の女の子だった。
「これが私の本当の姿よ。横澤 愛花っていうの」
聡美も自分の背中から秀一の頭を出す。
「俺、久木 秀一」
「秀一くんか。私が今まで会ってきた男子よりかっこいいね」
「君こそ可愛いよ」
「ほ、褒めてもなにも出ないからね!」
スーツを被る愛花。
秀一も聡美の中に戻った。
「ちょうどいいや。久木さん、俺と付き合って」
「な……それじゃ、あべこべ」
「ダメか?」
「ダメじゃないけど……」
「じゃ決まりね!」
「強引だなあ、もう……」
かくて、聡美と弘樹は付き合うことになった。