3.それって恋なの?
久木家。
聡美は部屋で寝ていた。
この久木家は、田舎から出てきた秀一が高校に通いやすいようにと、両親が用意した家である。
ガチャ。
玄関の扉が開く。
「うん?」
物音に気づいた聡美は、玄関へ向かった。
「誰?」
玄関に年配の男女が立っている。
「君は誰だ?」
「誰って、俺だよ」
そう言って聡美は気づいた。
着ぐるみを着たままだった。
「あ、これは事情がありましてですね……」
聡美は二人に着ぐるみを着た秀一であることを明かした。
「ほう……」
突然、男性が胸を触ってくる。
「きゃあ!?」
聡美は女の子らしい悲鳴を上げて男性を突き飛ばした。
「何すんだよ親父のエッチ!」
「ちょっとお父さん!」
立ち上がる男性。
「いや、生き物としての機能があるというからついな」
「ついな、じゃねえよ!」
「悪かったって」
で——と、続ける男性。「ACRに入ったそうだな。長官さんから連絡があった」
「極秘組織なのに親には言うんだ……」
「まだ高校生だからな」
「それで、なんでまたこっちに?」
「お前が心配でな。今日から父さんたちもここに住むことになった」
「田舎の家は?」
「残してはあるぞ」
「ふーん。まあ、二人がこっちで暮らしてくれたら少しは楽になる。炊事洗濯とか一人でやらなきゃならないから、ちょうどよかったよ」
聡美はそう言うと、用を足しにトイレへ入った。
ジャー、と流してトイレを出る。
「秀一」
「なに?」
「お前、ずっとその姿なのか?」
「ああ、脱ぐの面倒だからな」
「高校は?」
「編入生ということにしてある」
「そうか」
「それじゃ、俺は学校行くから、この辺で」
聡美はいったん部屋に戻ると、着替えて学校へ向かった。
学校に着くと、聡美は精悍な顔立ちの男子生徒と遭遇した。
(確か、隣のクラスの……)
横澤 弘樹だ。
「君は確か編入生の……?」
「ひ、久木 聡美」
聡美の心拍数が上がる。
(なんだろう? すごく緊張する……。まさか、ね)
聡美は恋愛感情を疑ったが、男の自分が男に恋なんてとすぐに否定した。
しかし、生体機能を再現したバトルスーツとなれば、あり得ないことでもないかもしれない。
「俺、横澤 弘樹っていうんだ」
「うん。よろしくね」
「おう」
じゃ——と、弘樹は先に教室へと去っていった。
聡美も靴を履き替えて教室に向かう。
「おはよう」
教室に入った聡美は、洋子に挨拶した。
「おはよう、聡美」
「洋子に質問があるんだけど」
「質問?」
「今、靴置き場で横澤くんと会ったんだけど、急に緊張しちゃってね」
「ほほう。それは恋ですな」
「ないない! それはない! だって……」
俺は男だから、そう言おうとして口をつぐむ聡美。
「だって?」
「いや、なんでもない。とにかく、私が恋だなんてそんなの」
「じゃそれを確かめようじゃない」
「確かめる?」
「そう。お昼休みに決行よ!」