②
先夜、わっきゃ大酒ば飲んだ。いや、大酒ば飲むのは、むったどだはんで、なんも珍らすい事でねばってろ、その日、仕事場がらの帰りに、駅のとこで久す振りの友人と逢ってまり、さっそくわあのなずみのおでんやさ案内すて大いに飲み、そろそろ酒っこ苦痛なとなりかけて来た時さ、雑誌社の編輯者が、たぶんこごだべかと思った、て喋ってウイスキー持参であらわぃ、その編輯者の相手ばすてまたそのウイスキーば一本飲みつくすて、こりゃもう吐いてまるべが、どすべ、と自分ながら、そらおっかねくなってろ、さすがにもう、このへんでよそうと思っても、こんどは友人が、ちゃかしてろわーさこぃがらおごらせでけれじゃ、としゃべり出す、電車さ乗って、その友人のなずみの小料理屋にひっぱっれてろ、そこでまんだ日本酒ば飲んで、やっとその友人、編輯者の両人とわかぃた時は、わっきゃもう、あさげねくれに酔ってまった。
「とめでけれ。家まであさいで行げそうでねえ。このまんま、寝ぢまうはんで。たのむじゃ。」
わっきゃ、こたつさ足ばつっこみ、二重廻すば着たまま寝てまった。
夜中に、ふと眼っこさめた。まっくらだ。数秒間、わっきゃ自分の家で寝てらような気がしちゃあ。足ばわんつかうごかすて、自分が足袋ばはいてらままで寝ちゃあのさ気附いてはっとすた。すまった! まね!
ああ、こった経験ば、わっきゃこぃまで、何百回、何千回、くりかえしちゃあ事か。
わっきゃ、唸った。
「お寒ぐね?」
と、キクちゃんが、くらやみの中でしゃべった。
わーど直角に、こたつさ足ば突込んで寝てらんた。
「なんも、寒ぐね。」
わっきゃ上半身ば起すて、
「窓がら小便すてもいがね。」
て喋った。
「どんぞ。そのほうが簡単でいわ。」
「キクぢゃんも、時々やるんだが。」
わっきゃ立上って、電燈のスイッチばひねった。つかね。
「停電だとこで。」
とキクちゃんがちっちぇくしゃべった。