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日記帳に書かれる文字

作者: 灯火蝋燭

 私は数日前、帰り道を歩いているとボロボロな本を見つけた。

いつもなら気にせず家に帰るのだが、何だかその本が気になってしまい手に取った。

 手に取った本を開くと、日記帳な様子。しかし文字が書かれているのは始めのページだけ。始めのページも日記帳と書かれているだけだった。

「まだ書けるのに…勿体ないな」と思い、家に持ち帰ることにした。

 家に持ち帰り本を開くと、2ページ目に文字が書かれている。その時は「さっきまで1ページ目しか書かれていなかったのに」などとは気にせず2ページ目を読んだ。

『4月5日 今日から日記を書き始めるぞ~!』

もし友達に言われたなら、そうなんだぁ~くらいしか思わない内容だ。

3ページ目を見ようとページをめくったが、何も書かれていない。これは日記と言えるのだろうか。

 次の日、私が気がついた時には朝だった。時計を見ると遅刻するような時間では無かったので、ゆっくりと学校へ行く準備をした。

色々な事情で一人暮らしをしているため、遅刻にはより注意しなければならない。

 学校へたどり着き、友達の山田に昨日拾った日記帳の話をした。

山田は「交番に届けなくていいの?」と言ってきたが、私がノートとして使おうと思っていたので、「大丈夫大丈夫。」と返事を返した。

特に問題もなく学校を終え、家に帰ることにした。

 無事家に着き、日記帳を開く。

日記帳には昨日無かったはずの3ページ目に文字が書かれている。

さすがの私もおかしいなと思ったが、恐怖心よりも好奇心の方が上回った。

 3ページ目には

『4月6日 明日から楽しい中学校生活!どんな友達が出来るか楽しみだなぁ。』

良い学校生活になるのだろうかと思いつつ、次のページへ進む。

 4ページ目には

『4月7日楽しくない。仲が良かった友達とはクラスが違うし、新しい友達もできない。楽しくない。』

昨日までの楽しそうな雰囲気とは変わり、ネガティブな雰囲気になっている。

この日記を書いた子は精神的に参っていないかと心配になるが、明日も学校があるので寝ることにした。

 日記帳を拾った日から3日目。いつものように学校へ行き、帰ってきたが、今日は日記に続きが書かれていなかった。







 あれから毎日毎日、日記帳の続きを楽しみにしていた。日記帳を拾ってから31日が経ったが、続きが書かれることは無し。

もう書かれることは無いのだろうか。











 日記帳を拾ってから62日目。この頃には日記帳のことなど忘れていた。

だが、とある日にふと日記帳のことを思い出した。何故思い出したかと言うと、山田に日記帳の話をされたからだ。

「あの日記帳どうしたの?」そう言われた私は「忘れてた。けどまだ家にあるよ。」と言った。

 家に帰り、あの日記帳を探した。私がだらしないということもあり、数時間かけてやっと見つけた。

久しぶりに日記帳を開いたが、書かれているのは4、5、6ページ目にしか書かれていない。

私は少しがっかりした気持ちと、続きが書かれていて嬉しい気持ちという何とも中途半端な気持ちだった。

 そんな気持ちの中読んだ4ページ目には

『5月4日 結局友達は1人もできなかった。学校に行っても楽しくない。楽しくないよ。』

本格的にこの子も精神的にまずいのではと思い、ページをめくった。

 5ページ目には

『5月16日 お願い。誰か味方して。お願い。辛いの。お願い。』

もう確実にこの子は病んでるだろうと思い、最後のページをめくる。

 6ページ目には

『5月20日 ありがとう。さようなら。私はあそこにいってきます。ありがとう。さようなら。』

あそことは何処なのか。学校のことを指しているのか、それとも…

背中に悪寒が走り、急いで後ろを向く。

 心臓がドクン、ドクンと鼓動する。周りを見渡す。







何も無い。大丈夫。そう思っても、心臓はドクンドクンと音を鳴らす。

口からははぁはぁと息が出る。

「どうした自分。落ち着け自分。」私は自分にそう言い聞かせる。

体も震えている。とりあえず寝れば落ち着くだろう。


 朝だ。これほど安心した朝は無いだろう。

私は何事も無かったかのように学校へ行った。親友の山田にも昨日のことを言わずに、家に帰る。

 また家に着き、日記帳を開く。

今日は続きが書かれている。

 昨日の日記は絶望しているような内容だったが、今日はどうだろうとドキドキしながら読む。

『5月23日 こんなに良い気持ちなのは初めてだ。お別れしたのは悲しいけれど、それを上回る嬉しさがある。』

良かった、何かは知らないが、喜んでいる。

きっと苦しみが取り除かれたのだろう。

 日記を拾ってから64日目。もう日記を書いた子の心配はしていない。心配ではなく、苦しみが取り除かれたようで良かったという気持ちならあるが。

 安心した私はいつもの話をして家に帰る。

毎日これを繰り返している。
















 日記帳を拾ってから最後の日。

日記帳を拾ってから4年が経った。

 日記帳に対しての興味をもう失っていた。

あの日記は邪魔になるから捨てようと考えていて、日記帳は何処にあるかと探す。

捨てる前にもう一度だけ読んで見ようと思い、日記帳を久しぶりに開く。

 『14月62日 もう見てくれない。1人でずっと彼処にいる。家族もいない。私の選択は間違っていたの?どうなの?ねぇ、教えてよ。』

 また絶望している。日付もおかしお。大丈夫?大丈夫?と思わず声を出す。

すると後ろから、『大丈夫。』と声が聞こえる。

 誰だ。と聞く。『いつも見てくれていたでしょ?』と返事が返ってくる。

 確実に誰かいる。

また私の背中に悪寒が走る。ドキドキしながら後ろを向く。

 そこにはセーラー服をきた女の子が1人立っていた。

「あなたは誰?」と聞くと、『やだなぁ。いつも日記を見ていたでしょ?』

 どうしてここに彼女がいるのか。扉には鍵をかけている。

怖い。恐い。怖い。恐い。怖い。恐い。

 『そんなに怖がらなくていいよ。それはさておき、私は寂しいの。ねぇ、付いてきてくれない?』

 この言葉を聞き、危険だと本能が告げている。

私は本能に従い、扉へと走った。

だが、この行動は間違いだった。

 扉に向かって走り出した瞬間、腹に何かが突き刺さった。

痛い。逃げないと。そう思えば思うほど、意識は遠のいていく。










『ありがとう。これで寂しくない。』










 最後に聞こえた。

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