41話 『遠征軍』
次の日の朝。目が覚めるとエルが抱きついて寝ていた。まぁ、いつもの事だから気にしない。
今日の朝飯は和食だな。
ご飯に味噌汁、秋刀魚、それにたくあんもあるな。
まぁ、一応説明しておこう。
ご飯はこの土地で栽培した物だ。
味噌汁の具は取れたワカメに作った豆腐。
秋刀魚は一昨日取れた大量の海産物の中の一種だな。この世界の生き物は基本的に美味しい。魔力が多いほど美味しいし、少ないとしても前に居た世界よりも圧倒的に美味い。まぁ、例外もあるが。それは置いておいて。俺が創造するものはあくまでも前の世界の物なので種を創り、この世界で育てた方が美味しくなるのが分かった。そのため街の中の一角に畑を作った。
そのおかげで美味い飯が食えているのだ。
まぁ、そんな訳で。今日も美味かった。
朝飯を食べ終えた俺は。ソファーに座って角砂糖を3個入れたコーヒーを飲み。テレビで今季のアニメを見ながら。膝の上にエルを乗せてその頭を撫でる。と言う至福の時間に入っていた。
ん?テレビはどうやって繋いでいるのかって?
まぁ、スマホと同期させて画面を送っている。
そんな時、スマホが震えて通知が来た。
「ん?なんだ。」
まさか自宅のWiFi使ってるのがバレた訳じゃないよな?
通知 門付近にて200程の生物を検知。
ちっ、こんな時に魔物の大量発生か?
それとも軍でも来たのか?
「んぁ?どうかしたのか?」
「ああ、ちょっとな。エルはここで寝ていてくれ。ちょっと行ってくる。」
「ぅむ...むにゃむにゃ...」
さて、さっさと終わらせて帰るか。
あ、そうだ。一応史記を呼んでおくか。軍だったら対応を任せられるしな。
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そんな訳で事情を説明している暇は無いので史記を捕まえて移動しながら話した。
そして。門の前には。
「あちゃー。まさかこうなるとは。」
「そうだな。」
「ここに来れる人間って居るんですね。」
「そうだな...」
「どうします?」
「うーむ、とりあえず。相手から見つから無いようにして一旦様子を見る。」
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俺は第109期、ブレイド隊の隊長にされたエバンだ。今日俺は多分死ぬんだろう。
魔の森と言う危険地帯に行かされるのだから。
子供のしつけにも使われるほど有名なあの森の危険度を上の連中はわかっちゃいない。あのクズ共め!いつも危険な仕事をさせられているのは俺達なのに!あいつらはいつも美味しい所だけをかっさらって行きやがる!いつかぶっ殺してやる!
......なんて悪態をついてもどうせやる勇気も無ければそんな機会も無い。何せこれから死ぬのだから。
嗚呼、今に思えばついてない人生だったな。
何をするにも優秀な兄と比べられ、お前は愚図だのノロマだのと親に言われ。
せっかく彼女が出来たと思えば、とんでもない性格の悪い女だった。
めちゃくちゃ頑張って達成した仕事は全てが上司の手柄になった。
そんな俺でもいい隊長に拾われ、そこから出世して、ようやく報われると思った矢先。魔の森に出兵だ。隊長のブレッドさんはいい人だった。実力もある。人格だって優れていて、みんなを引っ張っていた。俺の英雄だ。そんな人は、ついさっきこの森で死んだ。奇襲だった。ボブゴブリン15体、それにゴブリンが50匹だ。急に横から出てきたボブゴブリンに頭を棍棒で殴られ、袋叩きにされて死んじまったよ。はっとした俺達は何とかそいつらを全滅させた。そして、その後は烏合の衆だ。これからどうすると言う話がずっと続いて、そんでもってリーダーが必要だと言う結論になり、全員が拒否して最後には無理矢理俺に押し付けられた。
そんでもって帰ろうとしたさ。こんな森を進むのは明らかに無理だからな。
そう思ったら俺達が来た方向から気やがったんだよ。クソッタレのゴブリンロードがな!
仕方ないから俺達は森の奥を進んだよ。
数日間ひたすらに歩いて帰る方向も進んでる方向も分からなくなるほど歩いて歩いて、歩きまくったんだ!傍目には蛮族にしか見えなかったと思うぜ?なんてったって武器の在庫も切れちまったからゴブリンの棍棒を奪って殴り殺してたんだからな!みんな目が据わってたぜ?生か死かの極限状態で武器無し、防具も重いだけで意味が無い。食材無し。連れてきた馬?みんな食っちまった。皮肉な事にこの森に来たことでめちゃくちゃレベルアップした。そして傷を負ってはレベルアップで治してたから再生なんてスキルまで手に入っちまったよ。はっ!お陰で死ににくくなった。
そして喰えるものは何でも喰ってたから悪食なんて意味のわからんスキルも手にはいった。それに毒耐性と狂化スキルもだ。悪くねぇ。
とはいえ、こんだけスキルが手に入ってるのは最前線で戦ってるやつらだけだ。中間に居る奴らなんて綺麗なもんだぜ?なにせ何もしてないからな。にしても本当に使えねぇよなぁ。こいつらも喰っちまうか?いや、ダメだ。今俺は一体何を考えた?落ち着け。俺達の目的はこの森を脱出して上の連中をぶち殺す事だ。何故仲間を喰おうとした?このドアホが!クソッ!こんな事になってるのはあの上の連中のせいだ!
そんな事を思っていたら街が見えた。
はぁ?おかしいだろ?こんな森の中に街なんかある筈ねぇ!とうとう頭がイカレちまって幻覚でも見えてんのか?ちっ!とにかく近づいてみねぇと分からねぇな。行くしかねぇか。
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ふむ、なるほどな。事情は分かった。
眼の力ね。便利だな。
俺が何をしたのかと言うと、神眼で過去を見た。
過去視ってやつだ。まぁ、出来ると思ったら出来ただけなんだが。
さて、こいつらどうするか。
かなり疲弊しているようだな。特に隊長のエバンと言う奴が。うーん、助ける義理は無いんだよな…だからと言って助けないと後味が悪いし、エルに怒られるか?ん?なんだ史記。絶対怒られるだろうって?......はぁ。仕方ないな。最低限の休息、そして食料、装備を渡して帰って貰うか。まぁ、ここでの出来事は記憶から消去するがな。
そんな訳で仕方ないから門で偽装を解いてそのまま待ち構えていた。いきなり攻撃とかされないといいんだがな。
少し待つと蛮族、もとい兵士達が来た。
「止まれ!何の用だ!」
なんて言ってみる。何の用かは分かってるのだが、一応聞いてみる。
「こんな見た目ですまねぇ、これでも一応軍なんだ。物質の補給がしたい。中に入れちゃあくれねぇか?」
「ふむ、嘘では無いようだな。
だが、盗賊の類かも知れないから装備は預からせて貰うぞ?」
「ああ、それで構わねぇ。」
やけに素直だな。冷静なのか?
それとも素手だとしても制圧出来ると思ってるのか?まぁ、門には危険物のスキャンが出来る機能を搭載してある。金属、毒物は持ち込めない。
棍棒何かは分からないが...
正直、襲われたら殺してしまうだろうな。
元々助ける義理が無いのだから。
「分かった。1人でもおかしな真似をしたらお前達全員殺すからな?」
だから釘を刺しておく。
「ああ、分かってるよ。
そもそも俺達には襲う様な体力も気力もねぇ。」
そして小声で中間に居た奴らは除くがな。と言った。
はぁ。面倒事の予感がする。




