36話 『傷』
店を出た俺達は次の店を探すことにした。
「ぷはぁっ!やっと新鮮な空気が吸えるのじゃ!」
「ああ、そうだな。」
「うぇぇ、嫌な臭いが服に移ってしまったのじゃ」
「匂い消しってどの魔法で出来るんだろうな。」
「さぁ?我にも分からん。」
「まぁ、やってみるか。」
「頼むのじゃ」
服の臭いを分解するイメージで魔力を込めると無臭になった。これは便利だな。嗅覚とかで探してくる敵とかから追跡されている時とか使えそうだ。と言っても今のところそんな予定は無いが。
「ふぅ、あの嫌な臭いから解放されたのじゃ!」
何か竜の嫌がるような物が合ったんだろうか?
目に見える限りそんなものは無かったんだけどな。まぁ、媚薬や惚れ薬とか怪しげなものはあったがな。
閑話休題。店回り再開だ。
宛もなく2人で歩いていると、何でも屋と書いてある店を見つけた。
「入ってみるか?」
「うむ、そうするかの」
中は割と広くて色々な物が売ってるな。
保存食から家具まで、基本的には何でもあるな。
魔物の素材も扱ってるし、本もあるな。
客も結構居るみたいだし、売れているんだろうな。だがまぁ、特に欲しいものは無いな。
保存食は要らないし、これよりもいい家具も自力で作れる。魔物の素材に関しては前にやった魔物の大量発生した時に腐るほど集めた。しかもめちゃくちゃいい状態でだ。本も見てみたが、童話のような物ばかりであまり必要のない物だった。
野菜や果物、そして肉や魚も売っていたのだが、鮮度が悪く、形も悪かったため止めた。
そんな感じで買うものが無かったので店から出て行った。
「何にも無かったな。」
「そうじゃなぁ」
「そろそろいい時間だから集合場所に行くか。」
「そうじゃな」
「ああ、そういえばエルは人見知りなのか?」
「ん?急にどうしたのじゃ?」
「いや、ふと気になってな。」
「うーむ、そんなことはないと思うのじゃが。
我はあまり人が好きでは無くての。」
「へぇ、そうなのか。」
「あ、いや、主や街の連中は好きじゃよ?
ただ人と言う種族には中々いい思い出が無くての。」
それは...
「嗚呼、我は竜じゃからな。」
「.........」
「幾星霜が経とうとも人に狙われ、追われ、そして攻撃される。たとえ、我が何もしなくても...じゃ。」
まぁ、冒険者、何て連中が居るこの世界で竜に挑む奴が居ない訳が無い。
そして、エルが人を嫌いに理由も分かる。
ああ、無駄なことを聞いてしまった。
そんなことは初めから分かっていたのに...
「ん?別に主は悪くないぞ。主が言わねばいつか我が言っていた事じゃ。」
「じゃあ1つ聞いてもいいか?」
「うむ。」
「そんな事をされたのに、何で人を滅ぼそうとしなかったんだ?」
「したぞ(・・・)」
「......そうか。」
「いくつもの人を焼いた。街を焼いた。国を焼いた。我に挑んだ男も、それを仕向けた王も、その国の子供を女を...全て焼いて焼いて...焼き尽くした。そして...」
「そして?」
「我は疲れてしまった。」
「.........」
「殺すのも、殺されるのももう嫌じゃ。あの悲鳴も怒号も、人が燃える臭いも...そして、怒り狂う我自身にも嫌になったのじゃ。だからあの森の奥に居ればもう誰も来ない。誰も来れないと思ったのじゃ。そしてそのまま幾年か経った。そこでずっと一匹で誰とも話さず合わずただただそこに居った。」
「寂しかったんだな。」
「うむ、寂しかったのじゃ。だから...だから嬉しかった。
我を見て恐れず、怯えず、何気無く話しかけてくれたのが堪らなく嬉しかった。
だからじゃ...」
「ん?」
「だから主がいいんじゃよ。
主じゃなくてはダメなのじゃ。
だから主が好きなのじゃよ」
「.....俺は...」
「今はそれで良いのじゃ」
「.........いや、そうじゃなくてな」
「良いと言っておる!」
「あー、えーと。そのだな...」
「聴きたくない!いいからさっさと帰るのじゃ!」
と言って走り出した。
「あ、おい!道分かってるのか!?」
「門じゃろう?分かっておる!」
そう言って走り去ってしまった。
アイツの顔、真っ赤だったな...




