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君は思い知る。君は逃れられない。
知っていても、いざこの光景を見ると嫉妬の炎が湧き上がる。サラは婚約者である伯爵家の嫡男の手を取り、恥ずかしそうに頬を染めていた。それは自分のものなのに。
今すぐあの男を八つ裂きにして、あの男の為に飾られたサラの髪を鷲掴み、ドレスを引き裂きたい。そして、二度と他の人間には見せられないように傷つけて、自分のモノにするのだ。
微笑んで二人を見送ると、自分の人差し指に歯を立てた。狂気に飲まれすぎないようにしなければ、大切な妹を壊し過ぎててしまう。どうか、もうこれ以上自分を壊さないでくれ。
機会はすぐにやってきた。
適当に邪魔なヤツらを追い払い、妹の手を引いて連れ出す。立派な庭では各々楽しんでいるみたいだが、それをくぐり抜けて引き離した。
チラリと見た妹とその婚約者はいかにも初々しく仲睦まじい様子だった。その妹の横に立つのは自分で、笑いかけられるのも自分のはず。どれだけ自分は彼女を大切にしてきたか、それをいとも簡単に奪おうとするヤツに妹はなぜ心を開きかけているのか。許さない。絶対に許さない。
妹の編み込んだ髪に指を食い込ませた。妹は歯を食いしばり、声を我慢させた。騒いで群衆に醜態を晒せばいいのに、妹のためではなく私のためにやめてほしいとのたまう。どうせ嘘なのだろう。アイツのせいで、妹はすぐに裏切る嘘つきな汚らわしいものになってしやった。でも許してあげよう。愛しているから。
音に気づき、妹の唇を貪る。妹はそれをすぐに受け入れ、身を任せた。下手くそな妹のせいで歯が当たっても血が出てしまっていても、痛みさえもさらに興奮させる材料になる。
名残惜しかったが唇を離す。すると妹は腰が抜けてしまったように地面に座り込んでしまった。




