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兄は私の手を握った。  作者: 海月 楽
妹は知らない
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1つ誤算があった。

妹が婚約者に恋をしたのだ。いや、正確には恋をしようとしているのだ。

先方はスレてない妹のことを気に入ったようで、妹も婚約者が嫌いではない様子だった。それが本当の恋では無いのは分かっている。妹のサラは普通になりたいのだ。純粋だからこそ、真面目に、真っ当に。普通人が親兄弟と離れて嫁に行くように、自分もそうしなければならないと思っている。そうはいくか。こちらはずっと我慢してきたというのに。ずっと妹だけを想い続けていたというのに。


もう誰にも譲らない。


「どうかしましたの?」


自分の婚約者が首を傾け、小悪魔な表情を浮かべている。見た目も悪くない彼女ならば、他の殿方ならばとっくに落とせているだろうが、自分はそうはいかない。慾望に満ちた薄汚れた笑顔など何の魅力も感じない。


「申し訳ありません。卒業後のことを考えていました。」


優しい仮面をかぶる。幼い頃からかぶっていたその仮面は妹にだけ綻びかけているが、他人には未だ健在である。


「卒業後なんてまだお早いわ。今はまだ。」


卒業後に結婚する気である婚約者は頰を赤く染めた。それを馬鹿らしいと思いながらも微笑ましく見ているようにみせる。


早く、早く、卒業したい。

そして、父と母を殺したい。


家督を継いでしまえばこちらのものだ。邪魔者を消して、サラと二人で蜜月を。そう思うだけで、トロンとした甘味が喉の奥に広がる。

自分にその甘さをくれるのは、自分を駆り立てさせるは妹だけ。他は何もいらない。


悪い子には罰を与えてあげよう。

自分を裏切ろうとする可愛い野ネズミちゃんに。

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