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それでも妹は父と母に愛されていたので、妬むこともあった。私一人を除いて、誰もが理想に思うような幸せな家族を形成してして、羨ましかったのだ。今思えばすぐに諦めればよかったのだが、幼さがそれを許してはくれなかった。
しかし、分かることもある。妹だけが自分の求めていた愛をただ一人与えてくれる人だと。舌足らずの甘い声がしっかりと兄と言えるようになる頃には、妹への執着が強くなっていた。それは愛だった。妹が向けるような何処まででも甘く優しい家族愛とは違う、灼きつくような愛。他の人間が周りに居ればいるほど、妹の存在だけが浮き彫りになる。どうしたら手に入れることができるかわからない自分はただ甘やかして、依存させるしか無かった。
「髪を結んであげる。」
妹のふわふわした髪が好きだ。そのまま抱きしめて眠ることができたらどんなに幸せだろうか。
「お兄様、大好き。」
自分はこんなにも妹のことを愛しているのに。妹は無邪気に自分の気持ちを乱していく。
愛している。愛してるんだ、サラ。
ジリジリと焦げ付く思いは苛立ちに変わる。
時に愛しくて、壊したくなるんだよ、全部。
それから少したった頃、継母の不貞を知った。
そしてわかった。私は裏切りの子であるならば、妹は復讐の子であると。
だから、我が子を簡単に嫌がらせの道具にできたのだ。初めからサラは復讐のために産んだ子どもだったのだ。
そのことを父が知ったらどうなるのだろう。
妹はどうなる?そして自分はどうなる?妹がいないならば、自分が愛される?…妹がいなくなるなんて絶対に嫌だ。
もういい、父や母から愛されなくていい。あんな輩になんて愛されなくていい。サラが愛してくれるのならば。
父と母に少しずつ諦めてしまっていたし、サラという存在は日に日に大きくなっていて、もう自分には無くてはならないものになっていた。
愛してる。愛してる。愛してる。
サラを奪われるくらいなら、凶行さえ考えてしまうほどに。
妹というタガが外れて、サラを失うかもしれない鎖で縛られた。継母はバレたことを知っていても黙っていたのはそこだったのか。自分がサラを好きなのを知っていて苦悶するのを分かったから。もしかしたら、サラを好きになるように仕向けていたのかも知れない。考えが駆け巡る。しかし、結論は全て「サラだけは譲れない」に行き着いてしまうのだった。




