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兄は私の手を握った。  作者: 海月 楽
妹は知らない
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1

ずっとこうしたかったんだ。


妹のふわふわの髪を掴み、乱暴に振り回した。ブチブチと髪の抜ける手ごたえを感じる。

何に例えればいいのだろうか、この高揚感を。どんな女でも与えることのできないほどの昂ぶりを。


「気持ち悪いな。」


このまま、この女をモノにしたい。乱暴に扱って泣き叫ぶ姿を見たい。全てを支配したい。抱えきれないほどの劣情が僕を支配する。それは気持ち悪くなるほどに。そしてそう思うのは気持ち悪いことで、皆から後ろゆびを指される様なことだ。

なんとか、押さえ込んで部屋から出ると、胸を押さえて安堵した。本当はそれと同じくらい大切にもしたいとも思っているのに、だ。


**


この家に来たのは5歳の時だった。愛人だった母は父の本妻が妊娠した後すぐに捨てられたが、本妻の子が女だと分かると自分だけが本宅へ連れてこられた。父と継母はとても温かく自分を迎え入れてくれた。表面上は。父はただの後継としてしか接してもらえなかったし、母からは間接的に嫌がらせを受けた。両親が本当に心から愛していたのは妹だけだ。


「おにぃちゃ!」


舌足らずな声で自分を読んで付きまとう姿は、はっきり言って鬱陶しかった。


「おぼっちゃま、すみません。サラお嬢様がおぼっちゃまの本を汚してしまいました。」


メイドはいつも白々しい嘘をつく。継母の息のかかった使用人達は僕の気に入ったものを根こそぎ壊していく。その何が嫌かというと、継母はその度に僕の味方のような振る舞いをするのだ。


「可哀相に。ダメでしょ、サラ。謝りなさい。」

「おにぃちゃ、ごめんなしゃい。」


妹のサラは継母に促されて謝る。何の罪のない子どもに謝らせる継母が気持ち悪くて吐き気を覚えた。そして、それで振り回される人間が自分だけではない事を知った。妹のサラへ同情と仲間意識を感じるようになると、それは庇護欲となった。継母に対する嫌悪感から生じた副産物だったが、サラは壊されないという点でよかった。嫌がらせの種には使うが、母としての愛があるのでサラにはあからさまなことはしない。しかしながら、愛しているはずの妹に何故そんなことをするのか、不思議で仕方なかったのを覚えている。

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