王太子妃の恋
あの方が好きだった。
好きで好きで好きで、どうしょうもないくらい好きだった。
身分が違い過ぎたなら諦めていたかしら?
いいえ!! いいえ!! 諦める事ができるなら恋などしなかった。
彼と私の身分が釣り合っていることもあり、あきら諦め切れなかった。
だって手の届く所に彼はいたもの。
彼の両親と私の両親は仲が良く。
彼と兄が同い年で良くつるんでは馬にのり海辺を駆け回っていた。
月に一度ど訪ねて来る程度だったが、前の晩は興奮しすぎて中々眠れなかった。
彼の隣でふさわしいように私は頑張った。
頑張りすぎて王太子妃候補になってしまった。
フイル王太子には彼が好きなのだと素直に話した。
王太子もお后様も笑っていたから、直ぐに候補から外されると思っていたわ。
だって王太子妃候補は五人もいたんですもの。
しかも皆さん頭も顔も血筋もよくって、私など比べるのもおこがましい。
父も母も権力には関心のない人だったし。
兄も幼馴染の彼なら良いよと言ってくれていた。
彼には婚約者も好きな人もいなかったしビインズ伯爵家の三男だったから。
彼は騎士科に進み将来は王族護衛騎士になるつもりだと言っていた。
中立派の彼の家が貴族派になるなんて!!
思っても居なかった。
王族派と対立して王に謀反を起こすとは!!
思っても居なかった。
彼の命乞いに王太子妃になることを承諾する事になるとは……
思っても居なかった。
彼は国外追放になり、他の反乱者は吊るされた。
ただただ私は彼の幸せを願った。
フイル王太子が王になり、私は后となった。
王を支え、五人の子を産み。
前王様や前后妃様が身罷られ。
王も戦で亡くなり。
お父様やお母様やお兄様も亡くなりました。
我が子を支えながら国を守って来ました。
「お婆様……」
「ふふふ……昔の夢を見ていたわ。まだ小さかった時。お父様とお母様と兄様とあの人もいた時の。幸せだった時の夢。そうねいろいろあったわね。みんな私を置いて逝ったけど。今度は私が逝く番だわ」
「お婆様……」
「あらあら。泣いてはダメよ。折角のお化粉が崩れてしまう。お前は私に似てそそっかし所があるから心配だわ」
私は微笑む。
「幸せになってね。ああ……白いウエディングドレスが綺麗よ」
孫娘は出ていった。
看護師がドアの所まで見送る。
『やっと迎えにこれたよ』
『ええ。逝きましょう』
愛しい人に手を取られ、私は死出の旅に出る。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
エルガー帝国の歴史を語る上で、最も有名なのは女帝エリザベスである。
彼女の功績を抜きにして、この国の歴史は語れない。
諸説紛々の人物で、初恋の人の命乞いの代償として王太子妃になったと噂されるが。
この初恋の人も謎である。
恐らく兄の友人のサミエル・ドリトルとみられるが。
貴族名簿に彼の名は存在しない。
貴族籍を剝奪されたとしても犯罪者名簿に記されているはずだがそれもない。
恐らく彼の一族は暗部ではなかったのか?
エルガー帝国初期王族の暗殺未遂事件が頻発してフイル王子も命を狙われた時期があった。
そこでサミエルが王子の影武者に成りすまし王子はエリザベスの住む領地にいた節がある。
頻繫に王が暗号文を送っていた形跡がある。
今となっては憶測の域をでないが。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『で……俺がサミエルだって気付いたのはいつだい?』
『初夜であなたのおしりを見た時よ』
『尻……?』
『落馬してズボンと下着が破けた事があったでしょ。その時の痣を見たの。可愛い~猫の形した痣を(笑)』
彼は苦笑する。
『ねぇ。結局サミエル・ドリトルはいたの?』
『いたとも言えるし、居ないとも言える』
『 ? 』
『暗部が使いまわしていた偽名だからね』
『子供の時に俺が使っていた。俺が城に戻った時、使っていたのは俺の影武者だ。影武者は君に会ったことは無い』
『彼は国外追放の後どうなったの?』
『各国の情報収集で商人をしていた。君と同じ孫に囲まれてまだ生きているよ』
『ねぇフイル』
『なんだい?』
『今度私より先に死んだら許さないわよ。』
彼は微笑むと。
『もう君を一人にしないよ』
と言ってくれた。
~ Fin ~
*********************************
2018/4/13 『小説家になろう』 どんC
*********************************
★エリザべス
王太子妃候補。サミエルが好き。
黒髪・黒目 17歳
★フイル王太子
エリザベスの夫
銀髪碧眼 18歳
★サミエル・ドリトル
エリザベスの初恋の人。
焦げ茶の髪と瞳 20歳
お読みいただきありがとうござい。




