表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロリと微乳は紙一重  作者: 西木田浩姫
4/6

第三話 エンカウント

第一章 成長編


 第三話 エンカウント


 「人は強い。」

 「人はやればなんだってできる」


 これはよく言われることだ。

 いろいろな本やネットのニュースにも載っている。

 ましてや小学校低学年で習うような話でもある。

 そう、協力すれば必ず窮地を脱することができるという風にだ。

 しかし、本当に人間は強いのだろうか。

 

 例えば、人間が一人だった場合はどうだろうか。

 まず、協力という動作は出来なくなる。

 協力できなければどうなるだろうか。

 その人ひとりのマンパワーだけになるということになる。

 ああ、そうだ。

 小学校で習う内容は基本的に他人との共存、協力が不可欠な話ばかりである。

 すなわち前提条件が間違っているのだ。

 人間は協力するものであるという。


 すなわち、人間が本当に強いときと言うのは周りにたくさんの人がいて、助け合える、協力しあえればの話である。 


 なら僕は?


 弱い。

 今のままではね。


 なんせ一人だし、戦う(すべ)も知らない。

 

 そう考えると、僕はこの森の中で最弱なのかもしれない。

 うん。そうだ。

 なんて言ったって目の前に敵がいるのに僕はただ震えて通り過ぎるのを待つしかできない。

 そのことを知っていれば下手な好奇心と期待感と言う感情だけで突き動かされることはなかった。

 そして僕の人生はもう少し変わっていたかもしれない。

 しかし、それは考えれば考えるほど後悔の念しか湧かず、逆にさっきまでの好奇心と期待感はシャボン玉のようにどこかへ飛んで行ってしまった。

 

 音のなる方へと足を運んでいくと次第に音は大きくなってきた。

 時折、枝を切るような鋭い音が聞こえる。

 少し歩くと、音のなる方向には何かしらの生き物らしきものがいた。

 僕はとっさに物影に隠れる。

 あれはいけない。

 今の僕が関わっていいものではなかった。


 目の前には人型の何か。

 それは、グレー色の何か。

 三体。

 手には(なた)を。


 グレー色の何かは何かを探している動きをしている。

 そう、まるで何かを守っているかのような。

 そんな動きだ。

 


 そして直感でわかる。

 見つかったら殺される。

 そう考えると汗が止まらない。

 僕は息を殺す。


 見つかったら、まっているのは死。

 ドクンドクンと心臓が高鳴る。

 グレーの物体はこちらに近づいてきている。

 こちらには気づいていない。

 そうわかっていても汗は流れ、心拍数は上がる。

 

 足を少しずらしたとき、

 「パキッ!!」

 近くで音が鳴る。

 

 僕は反射的に音が鳴った瞬間立ち上がり走った。

 

 近くにいたのがバレた。


 僕は振り向くこともせずに走る。

 振り向いたら最後、僕は恐怖で足が動かなくなってしまうと思った。


 ある程度走って僕は立ち止まる。

 「はあ、はあ、このくらい走れば大丈夫でしょ」

 そして、僕は安心しきって後ろを振り返る。

 僕は思った。

 もとから見つかった時点で絶望しかないことに気付くべきだったと。

 

 振り返って見た先には、グレーの何かが我先にとものすごい勢いで走って来ていた。

 まるで僕を殺せば確かな報酬が期待できるといわんばかりに。

 

 僕はまた走り走り始めた。

 今度は先よりも早く。

 

 その刹那。


 「うわぁっ!!」

 ふいに自分の体が浮くのを感じた。

 そして体の表面が焼き焦がされるような激しい痛みが降りかかってくる。

 目の前は地面。

 僕はすぐに今の自分の現状を理解し立ちあがろうと、手を地面につけた。

 しかし、その考えはすぐさま打ち破られる。

 

 「バスンッ!」


 立ち上がろうとした瞬間に槍が目の前に刺さった。

 槍の先は僕の頭を優に超えるぐらい大きく、地面に深々と刺さっていた。


 「あ、あ…あああ…」

 

 恐怖は僕の体を完全に硬直させ、僕に一ミリも体を動かすことを許さなかった。

 そして僕はせめてもの抗いで後ずさることしかできなかった。

 

 グレーの何かは鳴き声ともつかぬ音を立てながらじわじわと距離を詰めてくる。


 ガッ!


 背中に何か固いものが当たる感触がした。

 後ろには大きな大木があった。


 前にはグレーの何か、そして後ろには木。

 完全に逃げ場がなくなった。


 い、いやだ。こ、こんなところで死ぬの。い、いやだ。死にたくない。死にたくない。まだ生きたい。カナにあいたい。いやだ。死にたくない。死にたくない。死にたくない。


 思考が加速する。

 今までの記憶がフラッシュバックするような感覚だ。

 そしていろいろな感情が交差する。

 

 いやだいやだいやだ。こんなところで死にたくない。まだ生きたいまだ生きたい。まだ生きたい。


 なら死ななければいいじゃん。

  

 何かが僕の感情に返答する。


 死なないためにはどうする。


 僕は問いかける。

 しかしそこに答えは一つしかないことは自明である。

 

 コロスシカナイ。


 「ああああああああああああああああああああああああああああああ」


 グレーの何かは僕の雄叫びに一瞬だけびくりとさせたがすぐに鉈で切りつけようと大きく振りかぶる。

 

 集中しろ!!絶対によけるんだ!!死なない!死なない!死なない!!


 僕は思考を加速させていく。

 少しでも生きながらえるために。


 グレーの何かが鉈をこちらに振るってきた瞬間、すべての動作がゆっくりと動くようになった。

 もちろんグレーの何かの動きもゆっくりになり同様に鉈もゆっくりになった。


 僕は驚いたが、すぐに横に転がり攻撃から避けた。


 ガッ!!


 鉈は木に刺さり僕は間一髪で避けることに成功した。


 今のはいったい何だったんだ…


 そう考えているうちにもう一体の攻撃が迫ってくる。

 しかし、こちらも最初は普通の速度で鉈がやってきたが途中からゆっくりとこちらにやってくる。


 僕はグレーの何かの足に蹴りを入れる。

 しかし、自分の体は予想以上に重くゆっくりとしか動かない。


 どうなっているんだ。

 自分の体も、相手の体もゆっくりにしか動かない。

 まるでそれは体が思考に追い付いてないような感覚である。

 例えてみるなら思考はそのままで体がスローモーションになっているみたいだ。 

 いや、そうなっているのか?


 そうこうしているうちに、僕の足相手の膝に当たりグレーの何かは体制を崩す。

 そのまま僕はゆっくりと立ち上がりグレーの何かの鉈を奪い取る。

 そして勢いをつけてグレーの何かの首の部分に鉈を振り下ろす。

  

 ブシャアアア!!!


 と首から血が噴き出す。


 あは!あははははは!!!

 何だ!弱いじゃん!!!あははははは!!!


 僕は鉈を振り回す。

 あたり一面に血しぶきが飛ぶ。


 アハハ!!アハハハハハハ!!!!

 アハハハハ!!!アハハ!!


 

 あたりは血だらけ。

 木々にも血は飛び、一面が真っ赤になっていた。

 地面にはバラバラになったグレーの何かが横たわっている。

 もとは三人だったが気づけばそこにある死体は三人だけではなかった。 

 思い出せば後から何体か来たのを思い出す。


 そして、僕の手には血がぽたぽたと垂れている鉈が。

 まぎれもなくこの惨事は僕がやった。

 しかし、信じたくはなかった。

 もちろん、言わずもがな助かってうれしい。

 しかし、自分と言う存在がまた自分ではないような錯覚に陥る。

 今まで知らない僕がそこにはいた。

 血をこんなに浴びても平気でいる僕がいる。

 ここにいる女の子は本当に僕なのだろうか。


 気づいたら目には涙がたまっていた。

 痛みではないことは明白だ。

 もちろん転んだ時のけがは痛い。

 しかし、泣いている理由はどちらかと言えば恐怖だ。

 ひたすらに怖かった。

 でも僕は前に進まなければいけない。

 この道を選んでしまったから。


 僕は歩き出す。

 僕が僕であることを立証するために。

 このまま立ち止まっていても僕と言う存在が霧に隠れるだけだ。


 僕は歩き出す。

 偽りのない本当の僕を見つけるために。

 それが僕のことを知る一番の近道であるから。


 僕は歩き出す。

 血の滴る鉈をもって。

 今の僕は弱い。

 しかし、僕は僕を知るために強くなる。

 そう決めたから。


今のうちに更新していきます!!

ぜひ読んでください!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ