プロローグ
初投稿です。至らない部分が多いと思うので、その都度ご指摘いただけると幸いです。
宜しくお願い致します。
プロローグ
僕は夢をみた。
そこはのどかで、それはお昼寝には適した温度、風量、そして光量。
そして、あたり一面に咲く黄色い花。
どことなく嗅いだことのあるようなないような、そんな香りが脳を眠りからやんわりとおこしにくる。
どれをとっても完璧で完全だ。
そこに僕は1人でいた。
いや、正確にはもう1人いる。
女の子だ。
一言でいうと「自然」だ。
生物学上の可愛さ綺麗さと言うよりも、もっと壮大な美しさを持っているような、そんな感じである。
今までに出会ったことのないような美しさである。
でも、僕はこの女の子をよく知っている。
何年もずっと一緒にいたような気もするし、はたまた一緒にいなかったような気もする。
それでも、僕は知っている。
でも、思い出せない。
知っているのに分らない。
それは、まるで真実の部分だけ靄がかかっているような感じである。
彼女はこちらを見ている。
何かを言っている。
そして、可憐に笑う。
しかし、その笑顔も声も僕に届くことはなかった。
――――――――――――――――――――
ピピピピッ! ピピピピッ!!
僕は、目覚まし時計にたたき起こされる。
時計の針は午前6時00分を指している。
まだ暑さの残る朝だ。
僕はほとんど閉じかけている目を擦りながら洗面所に行く。
頭から水を被り無理やり脳をたたき起こす。
そして、少し目が覚めたところで台所に行く。
僕の朝の仕事は、自分と妹の弁当と朝ごはんを作ることだ。
今日のご飯はベーコンエッグに作り置きしてあるジャガイモと油揚げの入った味噌汁だ。
朝食を作り終えると同時に妹は起きてくる。
時間は6時30分。
「おひいひゃんおはよ~」
妹の加奈が朝食の匂いに釣られて台所までやってくる。
「おう、おはよー。今日から学校だけど準備したよね?」
「きのうのうちにしらよー」
学生にとっては長い長い夏休みを終え、今日から二学期が始まる。
朝食を食べて、準備をして、完全には夏休みが抜けきっていない身体に鞭打って学校へ行く。
ドアを開けると身体の表面の水分が一気に蒸発するような暑さが僕らを歓迎する。
「うへー、あづぅーい」
「おわ!まだまだ夏だな、これは」
暑さにやられながらも僕らは学校へと重い足を運んだ。
―――――――――――――――――――――――
「えー、ね、今日から学校も始まることですが、特に受験生の皆さんは受験勉強を頑張るように。では、これで始業式を終わります」
毎度毎度の校長先生の長いも終え、生徒は思い思いに教室に帰っていく。
僕も教室に帰ろうと雑踏の中を進んでいると、見知った声の持ち主達から声をかけられる。
「いやー、今日も長かったっすね!コウチョー」
「それな!いっつも思うけど、よく考えるよな!あんな長いの!」
声の持ち主はそう、村下徹と山本真咲だ。
僕たちは昔からの友達で、いわゆる幼馴染というやつだ。
村下徹はいわゆる努力家である。
と言うか元気がありすぎてなんでもできるといったタイプの人間である。
何故か語尾にいつも「っす」みたいなのが入ってくる。
しかも、人の名前を「さん」付けで読んでくる。
とにかく謎い奴だ。
山本真咲はお調子者でいつも僕らにたわいもない話題を提供してくれる。
彼といると毎日が楽しくなっていく。
なかなか類を見ないタイプなので大事にしていきたいと思う。
しかもこいつはなかなか頭が切れる奴と言うよくわからん奴だ。
「そうだね」
「なんっすか、ヒロキさん!元気ないっすね!」
「お!もしかして、昨日妹さんとぉ?!」
「んなわけないから、ちょっと勉強疲れだよ」
「ヒロキさんが勉強で疲れるわけがないっすよ!」
「まったくだよ、浩希!ジョーダンは寝て言えだぞ!」
「マーさん、寝たら冗談言えないっすよ!」
「ホントや!」
講堂から教室に戻ってくるこの短い間でも僕ら3人なら話ができる。
僕らは今高校三年生だ。
すなわち、ほとんどの人が受験生であるということだ。
一部の人は推薦とかで、ほとんどリーチ状態の人もいる。
しかし、僕と僕の友達のマーさんこと山本真咲と村下徹は一般受験をする。
しかも僕ら三人は同じ大学を志望しているのだ。
受験の天王山と呼ばれる夏も終わり、僕らの受験生活も終盤に差し掛かってきた時期と言える。
この時期の受験生は模試の結果でいい判定が出なかったりとピリピリしてくる時期である。
今日は始業式なのであとは教室に戻って少しホームルームをやって終わりだ。
うまくいけばお昼までには家に帰れそうである。
ホームルームで何をやるかと言うと、実際何もやらない。
お前ら受験生だから頑張れよっと、そのぐらいだ。
だから、ホームルームも必然的にすぐ終わり教室に騒がしさが戻ってきた。
「浩希、それならさ、久しぶりにアレやらないか?」
「お!ナイスアイデアっす!マーさん!」
「な!いいだろ浩希。たまには休憩も必要だって!な!」
「仕方ないな。んじゃ9時からでいいか?
「お!いいね!わかってるやん!んじゃ9時な」
「おいっす!」
「んじゃまた後でな」
そう言ってみんなはそれぞれ自分の帰路についた。
僕はというと、隣にある女子高の近くにある駐車場に向かった。
僕はここでいつも妹を待つ。
僕の学校は男子校ですぐ隣に女子高がある。
そんで、その女子高に僕の妹が通っているのだ
「お兄ちゃんお待たせ~」
駐車場で少し待っていると妹がやってきた。
「今日はどうだった?」
「特段なんにもなかったよー、いつも通り校長の話だけ」
「どこも同じなんだな」
「そだねー」
「今日のご飯は何がいい?」
「お兄ちゃんが作るものだったらなんでもいいよ~」
「お前、昨日もそれ言ってたぞ」
「えへへ~、だってお兄ちゃんが作るご飯が美味しいんだもん」
「おけおけ、理解した」
僕達の家から学校までは、歩いて15分ぐらいのところにある。
歩いて通える距離というのはとてもありがたい。
他の生徒はなかなか遠いところからきている人もいる。
経験則的に言うと、1時間以上かかると結構大変なんじゃないかと思う。
「「ただいまー」」
熱い空気と共に家の中に入る。そして寄り道をせずにリモコンに手を伸ばし、そして冷房をつける。
今まで暑かった部屋に冷蔵庫を開けたように一気に冷気が入ってくる。
「いやー、エアコンは流石ですなー」
加奈は服をパタパタとしながら自分の部屋に入っていく。
僕も自室に戻り普段着に着替える。
僕は普段黒い服を着る。
黒が好きなんだよ。
パパッと普段着に着替えると次はもちろん勉強。
なんせこれでも受験生なんでね。
ちなみに、僕は塾には行ってない。
もちろん経済的な理由もあるけど、一番の理由は加奈だ。
僕がいなくなると夕飯を作る人がいなくなる。
時間は17時30分。
「カナー!これからお買い物するけどついてくる~?」
「行く行く~!!今から準備する~!」
この時間に買い物に行くのは日課だ。
今日はたまたま学校が早く終わったから家からだけど、いつもは学校から直で買い物に行く。
何故かって?
ちょうどこのタイミングで行くと、安くなっている商品とかが並び始めるのだ。
家から一歩出ると、やはり外は暑かった。
スーパーまでは歩いて15分程でつく。
今日もスーパーでお買い物して夕ご飯を作ってゲームして終わりと言う、なんの変哲もない一日が過ぎていくと思っていた。
しかし、それは突然起きた。
カッと何かがはじけるような錯覚に陥る。
初めは目眩かと思った。
しかし、気づいた時には黒く暗い世界に閉じ込められていた。
それは運命だったのか、必然だったのかはわからない。
しかしこれだけは言える。
ここから全てが始まったんだと。