第一章‐2回
2 姪っ子は神様
先週の風邪もどこかへ消えて、美代の我儘と腕白は留まる所を知らないようだ。
いきなり帰った無職の30男には尚更だ。やれ、それ、ほれとコキ使われてもそれほど強く文句は言えない。
おまけに夏休みと来たもんだから、遊びに行く以外は家に居るんだが、これが邪魔でしかたない。掃除だ、洗濯だとこなす私にくっついて歩いては兄嫁との違いを指摘する。
当然いい気はしないのだが、美代も空気は読めるのか時には適当に甘えてくる。
可愛い姪っ子にじゃれつかれるのは悪い気分じゃぁない。結局は悪戯も悪口も目をつぶっている。だいいち外は真夏の暑さ、遊びに行けとも言い辛いのだ。しかし私が言わぬとも、友達が来れば遊びに行く。それまでの辛抱なのだ。
しかし、こおして小さな田舎町に引っ込んでいるのを、あの頃の連中が見たら何と言うだろうか
懐かしいし、連中に会いたい気持ちもするけれど、どうしても思い出したくはない。
若いあの頃の私は、あのアパートに捨てて来た。
今は田舎で姪っ子の従僕を務める、しがない無職の30男・・・厄介叔父なんだから。
また向こうから美代が私を呼んでいる。
遊べだか、勉強を見ろだか、これでは本当に従僕のようだ。
「あまり我儘が過ぎるなら、少し厳しく言わないといかん」
などと、こんな時に幾度も思い立つが、結局何も言えない。
私に引け目があるからか、美代が加減を心得ているからなのか
「今日こそは」
と意気込むものの、いつも怒らずじまい。
そろそろ昼だ
「美代ぉ、昼は何が食いたい」
窓の外は蝉が喚いている