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秋雨の朝
ぽつぽつと降る小雨のなか
少しずつ水に染まるまち
しつこくねばつく空気と
涼やかでかすかな風と
傘を差さずに歩くわたし
軒からアスファルトを穿つ水音を
ずっときいている
土が黒く湿り輝く緑を肥やし
雨を知らぬ鈴虫たちは舞い謡い
人の姿も車の喧騒もまだない朝
白いアパートの壁の染みだけが
わたしの視線に応えてくれる
常よりうすくらい道端に水の白が映え
煌めきを増している
人間たちが気づかず疎んでも
雨の日は世界がよろこぶのだ
忘れていた生命を思い出して
わたしはやっと安堵を覚える
傘を捨てれば世界の一部になれた
静かで賑やかで冷たく穏やかな日
きょうは優しくなりたい
2016年9月29日