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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

勇者くんに祝福を!(暗黒微笑)

作者: 春猫

弱体化の効かない相手との戦い方です

「なんで、あいつ最後笑ってやがったんだ?」


 そりゃ、「目的」を達したからだよ、勇者くん。


 さて、この「祝福」を受けて、どのくらいまで「壊れずにいられる」かな?


【大魔王ガルモズディーンを倒した! 経験値947288833414455334297502562を獲得。精神強化SPEXを獲得、思考加速SPEXを獲得、時空加速SPEXを獲得、状態異常無効EXがSPEXに強化、身体強化EXがSPEXに強化…………………】


「エメリア、クララ、ミコト……俺はやったぞ」

 

 感動的だな…………だが無意味だ。


 気付いていないのか?

 お前が存在しているだけで、周囲に破壊が撒き散らされていることが?

 お前の剣でも傷をつけるのがやっとだった、この大魔王のダンジョンが現在進行形で崩壊しているのも、俺が死んだせいだとでも思ってるんだろうなぁ?

 俺は何にもしてないし、ダンジョンが脆くなった訳でもないぞ?


 歴代魔王の最後の呪詛が凝り固まって生まれた呪詛の塊、それがこの俺、大魔王の正体だ。

 ま、メンタルは前世、日本人のメタボオタ、三十代で成人病を複数抱えた挙句、心筋梗塞で死んだ一般人なんだけどな?


 前世で色々と創作も読んだり見たりしてたし、魔王でも楽しく過ごせるかなぁ、なんて甘いことを考えてたんだけどな?

 いや、周りの魔族の連中は外見こそ悪役そのままだけど、いいヤツばっかりだし、そっちには問題は無かったよ?

 人間との友好とかもね、考えたりはしたけど実行は不可能。


 うん、この勇者くんレベルの精神耐性無いと速攻で発狂するんだ、俺の側に来ただけで、人間は。

 少しくらいの耐性あっても俺の姿を目にして影響を受けないことは有り得ないし、これ、どう考えても仲良くなんて無理だよね?


「じゃあ、逆に人間滅ぼすか?」ってのもこれも無理。

 人類の最終兵器である勇者は、「女神の祝福」で光属性を得て他者からのネガティブな影響は全く受けないってことで、呪詛系と暗黒系しかない俺の攻撃は通じない。


 つまりは女神による出来レースだってこった。

 ホント、クソ女神死ね! 氏ねじゃなくて死ね!


 え? さっきまで戦ってたんじゃないかって?

 俺、そういった情報を入手してから現在まで、「祝福」を構築するために全部の力と時間を注いで来たからさ、実質、ここに居たのって抜け殻にちかいんだよね、なもんで寄生、擬態装備系の魔物を身にまとってそいつらが勇者と戦ってたってのが実態。


 クソ女神に対する恨みから来る俺の計画に、ヤラレ役として「作られた」魔族のみんなが協力してくれてたってこと。

 既に勇者一行に倒された四天王やら十魔将やら、本当は昼寝が好きだったり、金勘定の方が好きだったり、女の尻追いかける方が好きだったりする気のいい連中だったのよ、実のトコ。


 でも、女神にほえ面かかせるための俺の計画に乗って命を散らしてった。

 

 結果は大成功だ。

 ネガティブな効果は与えられない。

 ならポジティブなものは?


 そこからボスを倒した際のゲーム的なノリとかをミックス。

 勇者も女神も違和感を抱かない形で「祝福」を勇者に与えた訳だ。


 歴代魔王の恨み分にちょっぴり俺の恨みもプラスした「祝福」だ。

 与えられてしまえば女神にだって取り除けないし、勇者自身の資質と能力がその他の存在からの介入も排除する。

「無敵」の勇者をさらに「祝福」で強化してるんだ。

 誰にもなんとも出来ない。


 こうして勇者は「災厄」となった。


 大魔王だった俺と比べても遥かに大きな災厄。

 

 へっへっへ、クソ女神ザマアミロ!

 お前の勇者に与えた祝福()すら利用して、世界を滅ぼしてやるぞ?


「な、なんで皆動かないんだ? いや、何故傷つき続けているんだ? 大魔王の呪いなのか?」

 残念、不正解、祝福だよ。

 自分たちに大魔王の呪いは効かないって、さんざん戦闘前に自分で自慢してたじゃねえかよ、若年性痴呆症か?

 あー、ま、人間の王や女神の言い分だけ聞いて「俺が勇者だ」ってハーレムパーティー作って魔族虐殺しまくってたんだもんな、賢いとは到底言えんわな?

 その辺も祝福して強化してあげれば良かったか?

 自分のやらかしたことが「よーく」分かる様に。

 お前のやったことは単なる「虐殺」なんだって。


 ま、「絶対に狂えない」様な祝福はあげたからいいだろ?


「な、なんで、魔法で治るより傷ついていく方が速いんだ? それに、なんでみんな動かないんだ、状態異常になってないのに!?」


 そりゃ、正常だもん、当たり前だ。

 お前の仲間が傷ついてるのはお前のせいだよ、勇者くん。

 あんまり真面目にお勉強して無かったみたいだから因果関係を説明してやっても理解出来ないだろうけどなぁ。


 俺の死をスイッチに発動した「祝福」、その最大の効果は勇者の「すばやさ」だ。

 

 勇者の主観では俺が倒されてから五分以上経ってるんだろうが、実際はまだ秒針一つすら動かない短時間しか過ぎていない。


 要は世界が静止したと感じるほど勇者が速くなったってことだ。

 手に持ったままの剣でも手を離してみれば面白い光景が見られるだろうに。

 重力で落ちていく速度すらじっくりと観察でもしない限り分からないほどの時間感覚になっている勇者の目には、きっと宙に浮いてピクリとも動かない様に見えるはずだ。


 さて、そんな速度で動いている勇者が声を上げ、体を動かしている訳だ。

 周囲にどれだけの衝撃波が発生していると思う?

 いや、たとえ身動きひとつしなくても、瞬き一つ、心臓の鼓動一つですら衝撃波は発生するし、呼吸は急激な気圧の変化を起こす。

 女神の祝福を受けたお仲間の装備ですら紙装備も同然。

 装備も身体も祝福されてるからお前は無事だろうがな?


 いや、少しは考えろよ、お前の頭は兜の陳列用かよ?


「エメリア~!!! な、なんで!?」


 だから、お前のスピードで揺さぶりゃ、どんなにステが高くても人体なんか、プリンをシェイクする様なもんだって。

 美人も形無し、ミンチより酷えな。


「な、クララ、目を覚ましてくれ! う、うわぁああああー!」


 お前にとってはちょっと軽く叩いたつもりでもギガンテスの斧の一撃以上だぞ?

 ソニックブーム発生してるけど、こいつの主観じゃ、それですらちょっとした空気の流れにしか感じられない。

 そりゃ首から上が無くなるくらいは当たり前だろ?


「ち、ちがう、俺じゃない、俺のせいじゃ、なミコト、分かってくれるだろ?」


 少しは学習したか?

 でもなぁ、軽く触れる程度でも

「うわあああああっ」

 ……ってなるわな、やっぱ。


「か、帰らないと、俺は大魔王を倒したんだ、王様に報告しなくちゃ……」

 精神耐性も祝福で強化してやったからな、「狂えない」……だろ?

 まあ、マトモとも言い難いけどな。



 

 すげえ、すげえ! 良くさ「僕の後に道は出来る」ってあるじゃん!?

 あれの逆が目の前で発生してるよ!

 勇者くんの通る後、道も町も森も山も消えていく。


 いやあ、俺が持ってた力全部使って外を攻めててもここまでは出来なかっただろ?


 あ、空から光。

 焦って女神が送還しようとしたか?

 酷えな、あんなもん送り返されたら日本滅亡どころか地球\(^o^)/オワタじゃねえか!

 ま、無理なんですけどね……pgr!

 時空系も祝福強化で「他者からの干渉は一切受けない」様になってるんだ!

 どう、嬉しい? 嬉しい?

「私の考えた最強の勇者」をさらに強化してあげたよ、やったね!

 今なら「不老不死」も付いてさらにお徳!!

 いやいや、お礼なんかええんやで……にっこり!


 王城も王都も完全に崩壊したか……、ここまで見れば十分かな?

 何が起こったかすら分からない、痛みすら感じない短時間で死ねたんだ、女神の手先のカスには手緩いくらいの優しい最期だろ?

 

 先にいっちまった魔族の連中との酒盛りの話の種にはなったな。


 じゃ、逝くか…………。

 

 


強化のし過ぎでの自滅を誘う、普通は勇者サイドの手口ですよねぇ……

あ、大魔王主人公だから主人公サイドの手口としてはいいのか!

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― 新着の感想 ―
[良い点] もはや快感に近い 素晴らしい作品をありがとう
[一言] あらゆる物を消滅させるのに何で地面は無事で歩けるんだと最初は思ったけど、装備も祝福されてるかそれのお蔭か? コイツの待ってる未来は、飢えと渇きと孤独に苛まれながら死ぬことも狂う事も出来ない…
[一言] 女神は勇者のスピードに対応できるの?
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