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彼とあの人と僕
今日も彼は、あの人の隣で、柔らかな笑みを浮かべて側にいる。
めったに笑う事のない彼が、あの人と一緒に居る時だけは表情が豊かになって、それを見る為だけに、彼のファンだと名乗る人達がコソコソと物陰に隠れている。
彼とあの人は幼等部から一緒で、家も隣同士という世間でいう【幼なじみ】という関係だけれど、
彼があの人に恋情を抱いている事は、学園内では有名な話で、片思い歴も長いという。
彼のファンの中には、あの人と結ばれて欲しいと願っている人も多いけれど、表立って公言出来ないのは、他ならない僕の存在があるからだ。
僕と彼は【恋人同士】である。告白は彼からで、当時はかなり驚いたのを覚えている。
同学年で同クラス、ただそれだけの接点の中で、彼が何を思って僕に告白をしたのか、今でも解らない。
ただ言えるのは、彼は僕の事は好きではない、それだけだった。