1.奇妙な家族
「ごめん優子。」
頼みたい事があるんだけど、と材料を刻みながら少し訛った言葉で話す40代ほどの男性、西宮康彦は言った。
「もしかして…またなんか買い忘れた?」
カウンターを挟んでキッチンと反対側にあるリビングの机を拭いていた10代半ばの少女、西宮優子はほぼ間違いなくそうだろうという口調で言った。
「ご名答!近所のスーパーまでひとっ走りしてカレーのルー買ってきて!」
康彦は悪びれる様子もなく、はいお金、と言うと500円玉を優子に渡してきた。
「え〜しかたないなぁ、分かった行ってくる〜。」
「ありがとう!!」
またかという言葉を飲み込んで面倒くさがりながらも優子はお金を受け取った。
夕日がてらす坂道を、優子は買い物袋を片手にのぼっていた。
袋の中は頼まれていたカレーのルー2種とお釣りで買った飴。こういったお使いではお釣りで何か好きなお菓子を買っていいのが家族の中での暗黙のルールだ。
なんでルーを2つも使うんだろう…と考えながら歩いていると、前方によく知っている大きく逞しい背中があった。
「父さんおかえり!今日は早いんだね!」
スーツ姿の巨漢に駆け寄って声をかけると、その男性、西宮雅仁は声を掛けてきた娘を視認するとすぐに前に視線を戻して、ああ仕事が早く終わったからな…、とだけ言って返事をした。
優子はその無愛想な返しに気を悪くするのでもなく、笑顔で歩いている父に追いつき並んで歩き、共に帰路に着いた。
「たっだいま〜!」
家に入るとちょうどエプロン姿の康彦がリビングの方から出てくる。
「おかえり〜ってあれ?雅仁くんも一緒だったんだね。」
「ただいま…。」
「うん、おかえりっ!」
互いに顔を合わせたかと思うと雅仁は目を逸らして見間違いかと思うほど僅かに顔を赤くしてつぶやき、康彦ははにかんで言った。
「はいお父さん!これ!頼まれたの買ってきたよ!」
優子は両親の甘い雰囲気に気恥ずかしくなったのでお使いの品を康彦に渡した。
康彦も娘の前でという自覚もあったのでそれを慌てて受け取ると、ああっありがとう!後もう少しでできるけ、待っとって。と言いキッチンの方へ姿を消した。
初めましてマグナと申します。
処女作で色々と文章が拙い所も多いですが宜しくお願いします。