あの人の“箱”
ちょっとグロいかもです(汗)
僕は昔ある人から“箱”をもらいました
その人は僕に“箱”を渡しながら言いました
「また会う日まで、それを開けてはダメですよ?」
「・・・うん!わかったよおねーさん!」
僕はまだ子供だったので
あの時なんであんな約束をしたのかは分からなかったけど
でも、あの時の約束をもう十年以上守っています
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僕は13歳になった
あの人にはまだ会っていない
“箱”はまだ開けていない
中に何が入っているのか
開けたら何が起こるのか
いつもいつも気になっていたけれど
綺麗で清楚なあの人との約束を
破りたくはなかったから
“箱”は開けずにずっと押入れの中にしまっている。
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僕は20歳になった
“箱”はまだ開けていない
というか“箱”の存在を今思い出した
あの人にはまだ会っていないし
“箱”をどこにしまったのかも覚えていない
でも約束は守っているわけだから
どこにしまったかなんて関係ないと思うけど
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僕が25歳になったある日
綺麗で清楚なあの人らしき人に会った
あの人は昔みたいに
白いワンピースに白いハイヒール
白い日傘を差していた
肌も白く
ほんのり紅い唇が目立っていた
あの人は昔と変わらない
透き通った声で僕に言った
「・・・“箱”は?」
「え・・・あ・・開けてないよ」
「・・・どこに?」
「え・・・?」
「“箱”はどこにあるの?」
「ぼ・・・僕の家・・・だけど・・?」
「そう・・・」
それだけ言ってあの人は去って行ってしまった
僕はそのとき
とても怖かった
あの人に昔のような
笑顔が無かったから
帰って僕は押入れの中を探しに探した
でも“箱”は見つからなかった
それから僕は
“箱”の事も
あの人のことも
そしてあの人と過ごしたかもしれない記憶も
すべて忘れて
今を生きている
きっともうあの人に会うことは無いだろう
もう・・・・きっと・・・・
「・・・久しぶり
あのときの“箱”・・・私に返してくれないかしら?」
あの人の顔と身体は
腐りに腐って骨と化し
目玉は無く 長かった髪も無くなっていた
ただあったのは-----
昔みたいな笑顔だけだった
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ありがとうございましたぁ
脱兎