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1話 鉄の妖怪

 妖怪。


 それは、説明不能で不可思議な出来事を無理矢理説明しようとした結果生まれた、自然な不自然の塊。


 当然現実に存在するわけもなく、徳川の天下には信じられていたその存在も、文明開化と明治維新の波にのまれて淘汰され、現代社会においてはそれこそ眉唾物だと思われている。当然だろう。ほとんどすべてが科学によって説明されつくしてしまったのだから。


 しかし、僅かに残った説明不能の事実。本当の妖怪。ある学者が真怪と表したそれは、いまだ現代社会の裏側に息づいているのだ。生きた肉体からだを持って、あるいは霊的な身体を持って、現実に。


「僕は、この目ではっきり見たんだ!」


「……何を見たんだね?」


 かすかにぼやける視界に映ったのは、国語教師のしかめっ面と、生え際の後退しつつあるまぶしい頭だった。


 どうやら僕は授業中に居眠りして、妙な寝言とともに起きたらしい。周囲からクスクスと笑い声が聞こえたり、奇異なものを見るような、厭に気持ちの悪い視線が飛んでくる。多少恥ずかしくなったりもしたが、ぐっと押さえて教師の質問に答える。このまま黙って座るのは性に合わない。


「妖怪をです」


「寝言は起きているときに言うものではないと思うがね。まあ、素月が妖怪を好きなことは分かった。もうよろしい、座りなさい」


 故・赤塚不二夫のキャラクターのような性格の言葉を吐いて、教師は教科書をなぞる作業に入る。そういえばあの教師は、ただ只管ひたすら教科書通りに授業を進められればそれでいい、国語が何たるかはもちろん、その面白ささえ教えられない所謂いわゆる“低能”と呼称されるべき教師だった。良くも悪くもマニュアル通りのことしかできないのだろう。


 さて、頭の薄い教師には一瞥もくれず、僕は静かに着席した。教科書は一応開いているが、頬杖をついて視線を窓の外に投げる。


  

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