1/9
いつも悪夢で目が覚める。
海野地紘は、いつも悪夢で目が覚める。
「……」
特段声を発することなく衝動的に瞼を開き、荒くなっていた呼吸を整えた。
落ち着くと、地紘は強張った右手をベッドにつき、ゆっくりと上半身を起こす。
整頓された勉強机と空っぽの本棚、片付けるのを忘れられたこたつが備えられた無機質な部屋を一度見回し、地紘は安堵と苦しみが混じったため息をついた、
「……くそ」
枕元に置いてあったスマホの画面つけると、そこには6:30と表示される。
高校入学初日に寝坊は回避できたようだった。地紘にとって、それは些細な問題ではあるが。
ベッドから出るか出ないか十秒ほど思案し、地紘はやる気無さげに足を布団から出した。