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七十八話恐れの物語

「おい!椿、あれ!」

そこには様子がおかしい夜行と近くに犬神、件、鬼女が警戒していた。

「ぎ……ぎがががが…ち…から…ほし…い…よこせ…」

「夜行…..?」

近くにいた犬神が声をかけるが返事がしっかりしていない。もしやと思い件と鬼女にその場から離れるように声をかけた。

「まずい!夜行は妖刀に乗っ取られた!今すぐ離れろ!!」

「「!!!」」

夜行は今度は低い唸り声をあげ、妖刀の構えが違うことが乗っ取られた証明だった。

「ゔゔゔゔっっっっ……ゔぁぁぁ!!!」

刀を持った夜行は素早い動きで犬神たちに襲いかかり、滑らかに動く刃が犬神の毛並みをかする。

「犬神!」

「待ってろ、今行く!」

件は隙を見て後ろ足で夜行を蹴り上げ、鬼女が犬神を夜行から離した。

「大丈夫か!?」

「あぁ、しかしあれじゃあ近づけん。」

「妖刀に斬られれば、影を増やすことになります…」

「妖刀を夜行から引き離せればいいんだが…」

「引き離す…」

椿は聞こえてきた犬神たちの言葉にある案が思い浮かんだ。

すかさず護身用に持っていた木槌を振ると煙と共にあの妖怪が現れた。

「山ン本五郎左衛門様!お願いがあります。」

「おやおや、人使いが荒いですね。今度はなんでしょうか。」

現れたのは怪しげは侍の山ン本五郎左衛門。そんな彼に椿は頼み事をした。

「私があなたと賭けをした時、あなたは私の恐れを映しましたね。夜行の恐れているものを映していただけませんか?妖刀から引き離したいんです。」

その言葉に山ン本五郎左衛門はうーんと何か考え込みながら答える。

「…いいでしょう。ただし条件があります。私と賭けをしましょう?」

「こんな時に何言ってんだ!!」

「こんな時だからこそです。切羽詰まった環境の方が賭けは面白い。どうです?貴方が勝てば貴方の言うことを聞きます。私が勝てば…そうですね…私の使いはどうでしょう?」

「お前…!!」

針女が怒りをぶつけると対象に椿は冷静に返す。

「分かりました。お受けします。」

「よろしい。では夜行は何に恐れていると?私は閻魔大王に賭けます。」

「私は…力を制御出来なくなった夜行自身に賭けます。」

「おや?何故と言いたいところですが、時間がありませんからね。審判と致しましょう。」

山ン本五郎左衛門はふわりと目の前から消えたと思うと、今度は夜行の前に現れた。

「では、夜行。あなたが恐れているものを見せていただきましょうか?」

「うががががが…」

黒い霧が夜行を包み、みるみる何かが映っていく。そこに映っていたのは……閻魔大王と思われる大男。

「ほう、私の勝ちですね。」

「おい待て!続きがあるぞ!」

針女の掛け声で続きを見てみると閻魔大王は後ろから何者かに刀で刺されてしまう。その正体は…夜行だった。

「なんと……」

映った夜行は閻魔大王を倒したのに暴れている…理性が無くなっていた。

「恐ろしい…恐ろ…しい」

「やった!椿の勝ちだ!」

「…また負けてしまったじゃないですか…せいぜい貴方は恐れに溺れなさい。」

黒い霧の夜行が襲いかかると本物の夜行は恐れのあまり刀を手放した。カマイタチはその隙を見逃さず、痺れ毒の矢を射った。

「今だ!そらっ!」

「ゔっ!!」

矢は再び命中し、痺れ毒が効いた夜行はその場に倒れ込む。犬神はすぐに近くにあった刀から夜行を遠ざける。

「助かった!山ン本五郎左衛門!」

「礼は彼女に、私はただ力を貸しただけですので。」

「…お前は…アキヒロの娘の椿か。ありがとう。礼を言う。」

「いえ…犬神様、件様、鬼女様、ゆづるくんは?無事ですか?」

「大丈夫だ。あそこで仲間が守っている。」

犬神がカマイタチたちを指さすとゆづるは気づいたのか椿に軽く手を振った。無事と知った椿は安堵し、良かったと呟いた。

「椿、あなたも安全な場所に隠れてなさい。」

「あぁ。針女、椿を頼む。」

「分かった!行こう!」

鬼女に言われ、再び針女は椿の手を引き走っていく。

「…では私もひと仕事しましょうか。白虎。」

「はい。」

「お友だちの護衛をしなさい。」

山ン本五郎左衛門に呼ばれた白虎は少し分からないという顔をする。

「お友…だち?」

「おや?椿さんたちのことですよ。」

「あいつたちはそんなんじゃ…」

「あなたのその表情で分かりますよ。お友達は大切にしなさい。」

「…はい!」

白虎はどんな表情したのから本人は分からない。しかし山ン本五郎左衛門から見たら優しい表情をしていたそう。白虎は自慢の足ですぐ椿たちの元へと向かった。

椿も敵に遭遇、遂に特訓の成果が…

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