七十六話 加勢の物語
「はぁ…はぁ…。」
「ふぅ、どうしたぁ?もう息があがってるぞ?茨木童子。」
「それはあなたもでしょう?お頭。」
「そりゃなぁ?ここいらの大将がまさかのがしゃどくろじゃからな。手こずるわい。」
そう、酒呑童子と茨木童子の目の前には酒呑童子よりも大きい骸骨の妖怪がしゃどくろがいた。がしゃどくろは巨大な手で攻撃をし、二人はそれを避けるのに精一杯であった。もう一度攻撃がきた時ある聞き覚えのある声が聞こえる。
「急急如律令!!」
黒い龍ががしゃどくろの周りを飛び波動をぶつけると怯んだのか、動きが鈍った。
「あれは…」
「はははっ、酒呑童子ともなろう鬼が手こずっているとはな?」
「うるさいわい道満。これは軽い準備運動じゃい!」
「助けていただき礼を言う。道満殿」
「さて、陰陽師の本気を見せてやろう。」
道満が念を唱えると龍は再びがしゃどくろに向かい飛び上がる。
「がしゃどくろの頭を狙うぞ!
酒呑童子頼んだ!」
「?よう分からんがガッテンだ!うぉぉぉぉぉ!!」
酒呑童子は持っていた棍棒でがしゃどくろの頭部を思いっきり打ち、茨木童子がそれを龍に向かって拳で突き上げた。
「今だ!行け!」
その掛け声と共に龍はがしゃどくろの頭部に向かって波動を放った。見事に命中しがしゃどくろの影はみるみる崩れていく。
「やりました!さすが道満殿、がしゃどくろの急所を見抜くとはお見事。」
「なぁに、影であろうが本物の妖怪と大差ない。観察力があればできること。」
「お頭も見習わなくては。」
「う、うるさいぞ茨木童子!」
がしゃどくろを倒したからか、影たちが酒呑童子たちを恐れ撤退していく。だがここで終わるわけがなく再び構えた。
「では続きと行こうぞ!」
「「おう!/はい!」」
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「ははっ、金魚の影。君は非好戦的な妖怪と思っていたが意外と力があることに驚きだよ。」
「………。」
影は大きな水の玉を出現させると雪女に向かって放つ。すかさず雪女は口から吹雪を吹き凍らせ、凍った玉は地面に落ち砕けた。
「まずいな…力を使いすぎた。この先耐えれるか…...?」
「つい老いたか?ゆきだるま?」
「!?…...この声は!」
その瞬間後ろから青い炎が影に向かって伸び雪女から遠ざけた。
「狐火!?もしかして…まさか!!」
「そのまさかじゃ!久しいのぉ。ゆきだるま!」
「羽衣!?地獄に言ったはずじゃ!?」
「理由は後じゃ。まずはあれをどうにかするぞ。」
羽衣は雪女ぬ耳打ちをし作戦話伝えた。なるほどと納得した雪女はすぐさま行動に移す。金魚の周りには水の跡がたくさん残っており、すぐさま吹雪を起こした。
「凍てつけ!!」
すると水の跡がみるみる凍り、ついには影の足元まで凍てついた。
影は身動きが出来ないのかもがいている。
「良い導火線じゃ。燃えろ!」
今度は羽衣がふぅと氷の道に火の粉を吹きかけると勢いよく燃えていった。
「水は火に強いが妾の火は狐火、水や氷をも燃やすのじゃよ。」
氷を伝って火はすぐさま影を燃やし、黒い煙となって消滅した。
「倒した!」
「雪女、まだ手を抜くな?敵はまだまだいるからの。」
「わかってるよ!」
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「敵さん多いわ!どんなけおるねん!?」
「窮鼠!弱音を吐くな!鍛錬だと思えばどうってことねぇ!」
「それはアンタが脳筋だからでありんすよ!」
ネコと窮鼠はへとへとになりながら戦うが、正直体力はもう限界だ。その隙を見切ったのか影が窮鼠に向かって攻撃を仕掛けてきた。
「!!!しくった!」
「「窮鼠!!」」
「武者!!」
その言葉と共に武士がその影を刀で切り裂き、その波動で周りの影は吹き飛んでいく。
「大丈夫か!?」
「おおきに晴明様、助かったわ。」
晴明は倒れた窮鼠を引き上げるとネコと鉄鼠にも問いかけた。
「ネコ、鉄鼠も怪我はないか?」
「大丈夫でありんす!」
「おぅ!さすが晴明様の式神だ、敵が一瞬で吹き飛んだぜ!」
『ありがたき幸せ。』
そんな会話をしていると敵がぞろぞろと湧いてくる。その中に一際大きい影がいた。
「ありゃ…この影たちの大将か?」
「ついにお出ましってことか!」
「…あれは鶴瓶落としの影か。」
ドスンドスンと大きな頭が飛んでくる。この頭に潰されたら一溜りもないだろう。
「武者、いけるか?」
『御意、お任せ下さい。』
武者はザッと地面を蹴ると影に向かって刀を振り下ろしたが、それを察知してか影は更に高く飛び上がる。
「式神ばかりに良いとこ取らせへんで!鉄鼠!ネコ」
「おう!」
「行くでありんすよ!」
すると鉄鼠は窮鼠を影よりも高く投げ、窮鼠は短刀を抜くと影の頭に刺した。
「準備できたでありんす!」
落ちていくだけの影の先には地面に散りばめられた鋭い刃の数々。
逃げられない影は上からも下からも刃を受けると最後に武者が刀を正面から突き刺した。すると影は弾けるように消えていき、倒したことを実感する。
「やったで!」
『皆様の連携、お見事。』
「ありがとな!」
「しかし、まだまだ敵はいる。皆、気を引き締めろ!」
「もちろんでありんすよ!」
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「ありゃりゃ、敵がなかなか途切れないね。」
「ダメだ、逃げ道もない!」
針女と椿、煙羅煙羅は影たちに囲まれ、身動きが取れずにいた。
どうしようかと考えていると目の前になにか細い糸が光ったのが見える。細い糸は影たちの周りを何周もしていて急に数々の影が消滅した。
「なんだなんだ!?」
「おじさん、ダメダメじゃん。俺がいなかったら死んでたよ?」
「!!!土蜘蛛くん!?」
「あ!椿さん!大丈夫?怪我してない?」
「お前!なんで…もしかして脱獄!?」
「違うよ!ま、今は話してる時間ないし椿さんにいい所見せようかな?」
土蜘蛛は細い糸を指に絡ませるとクイクイと引っ張った。その先には近くにあった大岩、その岩を糸で引き上げると再び影にぶつけ倒していく。
「やるねぇ。俺もいい所見せなくちゃね?」
それに対抗してか煙羅煙羅は今までより濃い煙を発生させ、影を苦しませていく。
「息を止めても無駄。酸素はいつか欲しくなるからね?影でも呼吸は必要だろ?」
煙を吸い込んだ影はみるみる倒れていく。
「椿さん!今のうちに逃げて!」
「土蜘蛛くん!」
「本当は嫌だけど、このおじさんと食い止めるよ!」
「針女も早くお逃げ?大丈夫。俺強いから、」
「アタシはてめぇなんか心配してねぇよ…だけどありがとう。」
「ありがとう!土蜘蛛くん!」
そう言い、椿たちは走っていった。
「足引っ張んないでよ?」
「そっちこそ、年上舐めんなよ?」
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「これは…キリが無いな…」
「ごもっともだな。どうしたものか。」
桜と烏天狗は倒しても倒しても減らない敵に手を焼いていた。
「この数だと二人では限界がある。」
「誰か助っ人が来てくれれば助かるんだがな?」
「その言葉!待ってました!」
聞き慣れた声に顔を向けると上空に大量のカラスが舞っており、影に向かって銃弾のごとく次々と突撃していく。
「あれは…八咫烏団のカラスだ!」
「てことは…お前が呼んだのか?」
「いや、俺は…」
「私ですよ!わ、た、し!夜雀が助けに来ました!」
夜雀は上空をバサバサと羽を羽ばたかせ答えた。1番驚いたのは烏天狗だ。何故なら夜雀には一切話していないからだ。
「お前!どうしてここに!?話してないはず!」
「烏天狗さんには悪いですが、探索ガラスを付けました!怪しかったですしね?」
「バレバレじゃないか。でも助かった!すまないが加勢してくれないか?」
「もちろんです!カラスたち!攻撃態勢に入れ!」
その声掛けにカラスたちは自慢のくちばしを影に向ける…そして。
「貫け!」
カラスは今度は光線のごとく影を貫いていく。
桜はこれ以上影を増やさせまいと力を使い影を桜の枝で動きを封じ、烏天狗は槍で貫く。
「どんどん行きましょう!」
「夜雀、はしゃぎすぎるな!」
「二人ともよそ見をしないようにな?」
ゆづるは犬神たちと合流したようだ。




