七十四話 開始の物語
作戦当日、烏天狗は桜と椿を連れてある小さな舞台に向かった。
「烏天狗様、桜様、椿様…皆様どうか村をお守りください。」
村に住む妖怪にそう言われより気が引き締まる。
「あぁ、村の妖怪たちはすぐ避難してくれ。あとは俺たちが請け負う。」
「よろしくお願い致します。」
「…さぁ、行こうか。もうすぐで夜行が来るはずだ。」
「はい。」
舞台に練習で使い慣れた琴などを持ち込み、構える。
「準備はいいかい?」
「大丈夫だ。」
「私も、大丈夫です。」
「では、奏でよう。」
そう桜の合図で笛の音が村に日々わたる。それから胡弓、琴も加わり美しい音色が広がっていく。
そんな中、パカラパカラと何か走ってくる音が聞こえた。馬だ。
「来た。夜行の馬だ。」
現れたのは首のない馬に乗った鬼。背中には大きな刀を背負っている。
「おぉ、なんて美しい音色なんだ。良いぞ良いぞ!素晴らしい!」
奏でた音楽は夜行のお気に召したようだ。馬の足が止まった。矢を射る絶好の機会だ。
その頃、村のある店の裏にカマイタチがいた。様子を見て矢に痺れ毒を塗る。
「夜行、動くなよ?ゆづるは準備はいいか?」
「はい!」
「良いか少年。妖刀を奪ったらオイラの元に持って来るでごわす!」
「分かった!」
各々は準備が出来たようだ。
カマイタチが相手を狙う。そして…
「そらっ!」
矢は一直線に飛んでいく。狙ったのは夜行の背中だ。
「良い良い!もっと奏でるのだ!ゔっ!?」
刺さった!命中だ。
「な、なんだ!?体が痺れ…!」
「今だ!」
ゆづるはすかさず夜行の元に走っていき、妖刀を奪い取った。
「おい!小僧!!止まれ!」
「はぁ!はぁ!」
ゆづるは一心不乱に走った。しかし作戦が上手くいき過ぎている。
その不安はすぐに的中した。
「へへっ!止まれば良いものの…『紗雨』!!」
夜行が叫ぶと妖刀は急に重くなりゆづるを振り飛ばした。飛ばされたゆづるをすぐさまカマイタチの風が受け止める。
「大丈夫か!?ゆづる!」
「は、はい…ありがとうございます。」
「どういうことだダルマ!妖刀が動き出したぞ!?」
「お、遅かったか…妖刀が成長したんでごわす。そして夜行を主と認めている…」
「嘘だろ…」
「残念だったな!もう『紗雨』はおれの下僕だ!俺を怯ませても無駄だよ!」
妖刀は独りでに動き出すと、何やら周りに黒い影が現れた。
「な、なんだ!?」
もくもくとした影が形を生成していく・・・
「え…この姿って…....!?」
「金魚さん!?どうなってる!?」
「ほほう…こいつは金魚というのか。これも妖刀『紗雨』の力だ!斬った妖怪を影として操れるのだ!行け!」
金魚の影は手の平から水の玉を出現させるとまるで銃弾のようにゆづるたちに放った。
「危ない!」
カマイタチはすぐさま風で防御をし、風の刃で反撃をしたが力では影の方が上なのか水の玉で弾かれてしまう。
「クソっ!」
カマイタチはただただ風で防御するしかない。ゆづるを庇いながらどう反撃するかを考えていると後ろから冷たい冷気が肌に当たる。
「なんだろう。寒い...」
「ふふっ、僕の冷気で凍らないようにね?」
その言葉と共に後ろから氷の礫が水の玉を撃ち抜いてゆく。ゆづるが誰だろうと後ろを振り向くと、髪の短い女性の妖怪だった。
「大丈夫かい?イタチ。それに君は…」
「あの!助けてくれてありがとうございます!えっと…」
「話し合いは後だ!僕が相手をする。」
「助けたことには礼を言うが、俺一人で十分だ!」
「はっ!風と水とでは相性が悪い。君は別の敵を頼めるかい?」
「うっ…分かった。」
図星に感じたカマイタチは渋々ゆづるとダルマを連れてその場を離れた。
「やぁ、久しぶりだね。まさかこんな形で再開するとは。この雪女が相手をしようじゃないか!」
戦いが今始まる。




