七十三.五話 助太刀の物語
とある牢獄でやかましい声が聞こえる。
「あーあ、捕まってもう何日?退屈なんだけど。」
「うるさいぞ小僧。少しは静かになれんのか!?」
「だってさ?椿さんと結ばれるには交際期間?が必要でしょ?会えない時間がもったいない!」
「お前という奴は…まだ諦めてなかったのか土蜘蛛。」
「諦めないですよ?俺、諦めが悪いですからね?牛鬼様。」
「そのうるさい口を慎め、燃やすぞ?」
「おー怖い怖い。狐の宮の元頭領は怖いなー。羽衣様?」
「…燃やす。」
そんな会話をしているとカン!と地面を叩く音が牢獄に響き渡る。
「土蜘蛛、牛鬼、玉藻の前。閻魔大王様がお呼びだ。ついて来い。」
「…閻魔大王が?何の用じゃ。」
「……。」
「まさか解放してくれるの!?」
「バカを言うな。土蜘蛛、世の中はそんなに甘くないぞ。」
「ちぇっ。」
牛頭丸、馬頭丸は羽衣たちを檻から出すと逃げ出さないようにするためか足枷をつける。
そして閻魔大王がいる天空山の屋敷の居間へと向かった。
カランカランと鎖が屋敷に響く。自分の行った罪を再認識させているようだ。
「止まれ!そこに膝をつけ!」
居間にたどり着くとそこには大きな鏡があった。
「閻魔大王様。連れて参りました。」
「……ご苦労。」
その言葉と共に鏡に強面の大男が映った。
「玉藻の前、牛鬼、土蜘蛛。よく来た。お前たちは大罪を犯した。、その罪を改める気は無いか?」
「……どういう意味でしょうか?」
「今、妖怪の世界では辻斬りが発生している。凶器は私の妖刀『紗雨』だ。」
「妖刀が?…盗まれたという事か、まさか妾たちで解決しろと言うんじゃあるまいな?」
「そのまさかだ。しかしもう何人かの妖怪が動き始めている。お前たちはその妖怪たちの助太刀をしてもらいたい。」
「じゃあ、もし成功したら解放してくれる?」
土蜘蛛は目をキラキラさせると隣の牛鬼が「口を慎め」と叱った。しかし閻魔大王の反応は意外なものだった。
「もちろん。解決に繋げることが出来ればお前たちの罪は許そう。」
「本当!?」
「閻魔大王様、よろしいのですか!?」
「閻魔大王様のお言葉は絶対だ。牛鬼、玉藻の前、土蜘蛛。命拾いしたな。」
「やったー!」
「では、今から向かえば良いのか?その動き出している妖怪の情報も欲しいのぉ。」
羽衣の問いに今度は鏡にその妖怪たちが映し出された。
「この妖怪たちが今、犯人を見つけ動き出している。」
「あ!椿さんだ!おーい!」
「その近くにいる小僧…もしや人間か!?」
「気づいたか。彼はこの世界に迷い子をだようだ。牛鬼は見覚えあるだろう?」
「…えぇ、私が毒で殺してしまった人間に似ています。」
「その人間の孫のようだ。」
「……!!」
「そしてその椿という人間…いや妖怪の甥だ。」
「…世の中は狭いな。」
鏡に再び閻魔大王が映ると三人に問いかけた。
「…やってくれるな?」
「……。」
「妾はやるぞ。閻魔大王、本当に成し遂げれば解放してくれるな?」
「あぁ、本当だ。」
「俺も!椿さんにいい所を見せるいい機会だし!」
「牛鬼はどうだ?」
「私は…」
牛鬼は怯えていた。いつか人間が自分に復讐して来ることを。孫や娘なら尚更だ。もしその場に行けば…と。
「…牛鬼、腹を括れ!そして罪に向き合え!」
「…玉藻の前。」
「妾たちが犯した罪は消えん。しかしこの先は変えることができる。怯えたって何も変わらん。分かっているんじゃろ?」
「…そうだな、その通りだ。閻魔大王様、そのご提案お受けいたします。」
「うむ、頼んだぞ。牛頭丸、馬頭丸。後は頼む。」
「御意。」
命令を受けた牛頭丸と馬頭丸はカンと地面を叩くと羽衣たちの足枷が外れた。
「今からお前たちを連れて行く。抵抗しないように。」
「心配性だなぁ。」
「では参ろうかのぅ。」
「…あぁ。」
羽衣たちはスタスタと閻魔大王の居間を後にした。
ついに作戦が開始、うまく行くのか…




