七十二話 痺れ毒の物語
白虎が一蹴り二蹴りしたぐらいに気づけば漣の山に着いていた。
虎の脚力はすごいなと感心していると、近くにこんじんまりとした家を見つける。
「ここに頭領がいるはずだ。」
「えぇ。」
トントンととを叩くと中からドタバタと音がし、次の瞬間スパンと勢いよく戸が開いた。
「誰なのよ!」
「こ、こんにちは。女郎蜘蛛さん、」
女郎蜘蛛は椿を見つけると先程の少し怒った表情は解け、明るくなった。
「椿なのよ!来てくれたのよ!」
「えぇ、あ!こちら白虎さん。最近物騒だから着いてきて貰ったの。」
「…どうも。」
「なんか態度悪いのよ…まぁ、いいのよ!さ、入って入って!」
「お邪魔します。」
女郎蜘蛛は椿たちを中へと招くとそこには毒の材料と思われる草や木の実などが沢山。本も難しいものばかりだ。
「ここは牛鬼様の部屋だったのよ!今はそのまま私が使っているのよ…って、それより私に用があってきたのよ?」
「えぇ、毒に詳しい貴方にお願いがあるの。今辻斬りが流行っているでしょ?その犯人を捕まえたい。そこで貴方に相手を怯ませる毒を作って欲しい。ダメかしら…」
「構わないけど…殺さない程度なのはどうして?」
「え?」
「悪いことをしたら罰を受ける。当然なのよ。辻斬りならとっても悪いのよ!」
女郎蜘蛛はブンブンと手を振りながら言った。
「私も同意見だ。どうせ捕まえてもいつかは出てくる。殺した方がいい。」
白虎と女郎蜘蛛が言っていることは分からなくは無い…だからといって殺すという行為は椿にはできない。何故なら
「もし殺してしまったら、犯人とやっていることは一緒になってしまうわ。私たちはやり返すために捕まえるんじゃない。これ以上被害を食い止めるためよ。」
椿は淡々と静かに話した。
最初二人は納得しなかったが、椿の真剣な顔に女郎蜘蛛はふぅとため息をついた。
「なるほど、そういう考えもあるのよ。分かったのよ。椿には服を直してもらった恩があるのよ。」
「ありがとう。」
「材料はここにあるもので何とかできるけど、一つだけ足りないのよ…怯ませるのに必要な雷神の雷が。」
「それって…」
椿は袖から雷神から貰った雷を取り出した。ピリピリするため布で包んである。
「これ…かしら?」
「そ、それなのよ!!何処で手に入れたのよ!?」
「えっと…助けたら貰ったの。」
「あぁ、助けたらな。」
「わわわ!こんなにあれば沢山できるのよ!」
すると女郎蜘蛛はドタバタと棚から草、何かの爪、液体を取り出すと潰したり混ぜたりしだした。
煙が巻き、少し臭うと布を渡される。
「今から毒の調合に入るのよ。これで鼻と口を覆って!じゃないと死ぬのよ!」
そう言われ白虎と椿はすぐさま鼻と口を布で覆った。
「最後にすり潰した雷を入れて…できたのよ!」
女郎蜘蛛の合図に布を外すとそこにはパチパチした黄色い液体があった。
「綺麗…」
「バカ!毒だぞ!?」
「ふふん!これは身体が麻痺する毒なのよ!これを矢に塗って当てれば動けなくなるのよ!」
「ありがとう。女郎蜘蛛さん」
「これで恩は返したのよ!…でも椿…?」
「どうしたの?」
「その…私ここら辺じゃ一人なのよ…女の子。だから女子会とやらをしたいのよ!」
「いいわね。しましょうか、女子会。」
「本当!?じゃあ、前にあったあの妖怪も入れてやるのよ!」
「それと白虎さんもね?」
「私は…」
「あなた、女だったのよ!?」
「失礼だな!!」
「まぁいいのよ!人数は多い方が楽しいのよ!」
「ふふっ、楽しみね。」
女郎蜘蛛はニコニコしながら色々妄想していた。きっと楽しいことだろう。
しかし椿たちにはやることがある。
「絶対、無事に帰ってくるのよ!死にかけたりしたら許さないのよ!」
「もちろんよ。絶対帰ってくるわ。」
「指切りするのよ!あなたも!」
「私もか!?」
椿と白虎、女郎蜘蛛は三人で指切りをし、約束をした。無事作戦は成功するのだろうか…
『福呼び食堂』に帰ってきたゆづるたち、何やら騒がしいようで。




