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六十九話 来訪者の物語

とある花の郷のある日、コンコンと戸を叩く音がし、椿が近づくと聞き覚えのある声がした。

「この声は…」

戸を開けるとそこには色々お世話になった山ン本五郎左衛門と…

「お久しぶりです。山ン本五郎左衛門様。それと…」

「あぁ、椿さん。お久しぶりです。こいつは白虎です。ほらご挨拶を。」

「…こんにちは。」

「こんにちは白虎さん。はじめまして。」

白虎という妖怪はとても大きい虎の妖怪だった。強そうというのが第一印象だ。

「おーい椿。誰だったんだ?…って山ン本五郎左衛門!?」

後ろから針女が驚くと白虎が怒った顔でずいっと顔を近づけてきた。

「貴様!山ン本五郎左衛門様に無礼な態度をとりおって!」

「落ち着きなさい。白虎。すみませんねぇ。まだまだヤンチャなんです。」

山ン本五郎左衛門が白虎に改めて名を名乗るように言うと大人しく顔を引っ込めた。

「…私の名は白虎、山ン本五郎左衛門様に使えている虎の妖怪だ。」

「白虎は武術が得意なんですよ。とても頼りになります。」

「で?山ン本五郎左衛門様とその護衛がここへはなんの用で?」

針女が嫌味そうに尋ねると、山ン本五郎左衛門は何故かにっこりとしながら返す。

「あぁ、実は最近辻斬りで物騒でしょう?椿さんは妖怪になりたてですし、心配して尋ねてきたんですよ。」

怪しさ満載の笑みに椿と針女は只々苦笑いするしか無かった。

「ご心配どうも。アタシらは大丈夫だからもう帰ってもらって構わないぜ?」

「!!貴様!」

「やめなさい白虎。貴方はすぐ熱くなる。それはそうと椿さん少しお話しませんか?」

「私ですか?…賭け事ではないなら。」

「賭け事はまた後日。辻斬りについてです。」

「分かりました。ですがここは針女たちの家です。別の場所で…」

「随分と騒がしいね?」

椿たちが話している所に桜が帰ってきた。随分警戒しているようだ。

「ウチの妹達に何かごようかい?」

「妹とは…椿さんは違うでしょ?私と彼女は友人です。」

なんだか二人の間に火花が見える。

「桜さん、大丈夫です。この方は私の友人です。怪しいですが信頼は出来ます。」

「おやおや、酷いですねぇ。」

「…椿、彼と話すなら俺も参加する。」

「え?」

「構いませんよ。白虎、あなたはここで見張りをしなさい。」

「はっ!」

桜は山ン本五郎左衛門と椿を連れて裏の庭に向かった。

「で、話はなんだ。」

「辻斬りの件なのですが最近私の館にも来ましてね。」

「山ン本五郎左衛門様のところにも?」

「えぇ、もちろん追い払いましたがその際わたしの妖気がついた鈴をひっかけましてね。この鈴私にしか音が聞こえない仕組みなんです。」

「………」

「知りたくないですか?犯人の居場所。」

「賭け事か?」

「まさか!ですが教えるのは「信頼されている」椿さんだけ。貴方は…私を「信頼してない」ようですしね。」

「…山ン本五郎左衛門様」

すると椿は山ン本五郎左衛門に向かって頭を下げた。

「椿!?」

「お願いします。その犯人は私の父の魂を斬った妖怪で、罪のない妖怪たちを傷つけた犯人です。私もその妖怪を倒したい。でも一人ではどうにもできません。なのでその居場所を共有させてくれませんか?」

椿は必死に頭を下げた。

ゆづると同じく椿もアキヒロの腕を切った、罪のない妖怪たちを傷つけた犯人を知りたい。それにはきっともっとたくさんの妖怪の力がいる、そう考えたのだ。

「……はぁ~、ダメですね。私は本当に貴方に弱い様です。しかたありません。本当は嫌ですが教えましょう。」

山ン本五郎左衛門は懐からベラっと地図を出すとある場所を指さした。

「ここは…」

「そう天空山の村です。今犯人はそこに向かっています。そしてその山の頂上は閻魔大王の別邸があります。犯人の目的が閻魔大王ならきっとこの山に登るはずです。」

「その村でに足止め出来れば良いのですが…」

「椿さん!桜!」

頭上から名を呼ぶ声が聞こえ、上を見ると黒い翼をバサバサと羽ばたかせる烏天狗がいた。

「烏天狗さん!」

「盗み聞きするつもりはなかったんだが、申し訳ない。話に入っても構わないだろうか…って山ン本五郎左衛門!?」

「えぇ、椿さんの友人の山ン本五郎左衛門です。この際一人増えても一緒です。どうぞ話を進めてください。」

「あ、あぁ。実は犯人は夜行という妖怪だそうで音楽に目がないらしい。そこで、俺、桜、椿さんで足止めできないかと考えている。」

「良い考えだが、時間が…」

「夜行の居場所から天空山の村までは十日ほどの距離がありますよ。」

「なんとかしましょう。烏天狗さん、桜さん。」

「決まりだな。今回のことは俺からゆづるたちに伝える。」

「おぉ、あの子はゆづると言うのか。よろしく言っといてくれ。」

「知っているのか!?」

「まぁな、ほら急げ!」

そう烏天狗を急かすとバサっと飛び立っていった。

「じゃあ椿、君は琴を頼む。明日からにでも練習をしよう。」

「はい。よろしくお願いします。」

「では、私はこれで…白虎はここに置いていきますので。」

「はぁ!?」

「だって桜の精、あなたが練習している間警備が手薄でしょう?心優しい私が護衛を貸してあげるんですから喜びなさい。」

「うっ………どうも。」

「山ン本五郎左衛門様、ありがとうございます。」

「いえいえ、椿は練習を頑張りなさい。健闘を祈ります。」

そう言うと山ン本五郎左衛門は本当に白虎を置いて帰っていった。

椿は白虎に近づき話しかけた。

「部屋は私が借りている部屋をお使いください。」

「構わん、外で寝る。その方がすぐに対応できるからな。」

「そりゃいい。椿、こいつのことは気にするな。」

「ですが…白虎さん、貴方は女性でしょう?私は心配です。」

「は!?」

「は…?」

桜と針女は驚いた。何を隠そうこのガタイの良い虎の性別が女だったからだ。

「気づいていたか。」

「えぇ、服で体型を隠していますが胸もあるのでもしかしてと」

「その観察力は褒めてやろう。だが心配無用だ。護衛とはそういうものだ。」

「…分かりました。何かあれば呼んでくださいね。」

それから椿たちは各々の部屋に戻り一夜を過ごした。

夜行を取り押さえるにはどうすれば良いか話し合っているようだ。

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