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七話 友達の物語

ゆづるは蟒蛇と一つ目に手を引かれて走り出した。人混みをかき分けるとある店にたどり着く。何故かそこだけは少し時代が進んだような感じの店だった。扇子に簪、キラキラしたものがあちらこちらに置いてある。

「ここは…?」

「ここは小物屋だよ。ここいらじゃ有名なんだ。」

すると一つ目はスタスタと慣れたように店の中に入って行った。ゆづるは一つ目について行こうとしたが蟒蛇に止められてしまった。

「会わせたい人がいるんだ。待ってて」

そう言われゆづるは少し待つことにした。その待っている間、蟒蛇に巻きついている大蛇を触ることにした。うっとりと目をつぶり身をゆだねた。

そうしているうちにバタバタと店奥から音がし、一つ目が妖怪を連れて戻ってくる。

「ほら早く早く。」

「そんなに焦らなくても今行きますよ。」

その妖は髪は長く、オレンジ色の袖と裾が長い着物を着崩している。髪には飾りがたくさん付いていて一見派手だが優しそうに感じた。

「おや、随分と大勢で来ましたね?」

「新しい友達を連れてきたんだ。」

妖怪はゆづるを見て近づくとしゃがんで視線を合わせる。

「君が新しいお友達ですか?お名前は?」

「え、えと座敷童子です。」

「座敷童子くんですね。私は金魚と言います。」

金魚はふにゃりと笑って返すと懐から可愛らしい袋を取り出した。

ゆづるは分からなかったが、一つ目と蟒蛇は目を輝かせている。

「じゃあ、お近づきの印に水飴をあげましょうか。」

「わーい!俺いちご」

「僕はソーダ」

金魚は袋から水飴を取り出し、一つ目と蟒蛇に配った。

「座敷童子くんは何味がいい?

いちごにソーダ、ブドウに桃もあるよ」

ゆづるはあまり状況を理解できなかったが

目の前に水飴を出されたので覗いてみると

そこにはまるで宝石のようにキラキラと水飴がたくさん入っている。

迷いながらも素直に好みの味を選んだ。

「じゃあ、僕は桃がいい!」

はいどうぞ。ともらった水飴を早速ねって口に運んだ。

甘みが口に広がり3人揃って幸せそうな顔になると金魚もつられてか同じく水飴を食べ、幸せに浸っていた。

「金魚さんは水飴が好きなんですか?」

「うん、キラキラしてて美味しいですからね。」

「だから金魚さん、懐にいつも持ち歩いてるんだぜ」

ゆづるはそれを聞いて、僕も好きです。と返した。一つ目はまだ足りないのか金魚にもうひとつとねだり出していた。

「ねぇ、なんで僕をここに連れてきたの?」

「そりゃ、水飴を貰いに来たのもあるけど」

蟒蛇は大蛇に水飴をあげながら答えた。

ゆづるは単純だなと思っていたがその光景に驚いた。

「ちょっと待って、蛇に水飴をあげて大丈夫なの?」

「いや、こいつらなんでも食べるから大丈夫」

蟒蛇はたんたんと答えるので返す言葉が出てこなかった。

「続きだけど、お前に金魚さんを紹介したかったんだ。」

「見た目派手だけど頼れるお兄さまだし?」

「派手は余計ですよ?コレはお洒落なんですから」

一つ目が大きな目を向けながらからかったので、金魚はコラっと小さく叱った。

「座敷童子くんも用がなくてもここに来ていいからね」

「水飴もあるからね。」と笑いながら言ったのでゆづるも「はい!」と笑顔で答えた。

「金魚さんはやっぱり金魚の妖怪なんですか?」

「はい、生まれ変わりみたいなものですよ。」

「だから泳ぎが上手いんだ。すごいだろ」

余りにも蟒蛇が胸を張って言うものだから思わずゆづるたちは笑ってしまった。

その光景に蟒蛇は首を傾げたが、金魚はありがとうと答えると蟒蛇は照れくさそうに大蛇で顔を隠した。すると店の戸をガンガンと叩く音とともに誰かが入ってくる。

「すまない。荷物を受け取りに来た。」

ゆづるたちは声のするほうを見ると山伏の服を着た烏の妖怪が黒い羽をたたんで店に入ってきた。

「「あ、烏兄ちゃんだ!」」

「いらっしゃい烏天狗くん。はいこれ」

金魚は隣にあった小包を烏天狗に渡した。

「いつもすまないな。で、お前達はまた来てるのか」

「いーじゃん別に~」

「水飴貰えるし~」

「お前らな……」

烏天狗は荷物を受け取り、一つ目と蟒蛇に呆れているとゆづるに気がついた。

「君、あの時の酒呑童子のときの子だね。」

「はい。お久しぶりです!また会えるとは思ってませんでした。」

「二人は知り合い?」

金魚が不思議そうに聞くと烏天狗が酒呑童子の件について話した。

「この子があの通せんぼしていた酒呑童子に道を開けるように説得してくれたんだ。」

「おぉ、座敷童子くんすごいですね!」

「俺も本当に驚いたよ」

賞賛の声にゆづるはゆでダコのように赤くなったが、となりでは蟒蛇と一つ目がいたたまれなさそうにしている。ゆづるは察したのか話題を変えようと小包の中身を聞いた。

烏天狗は答えにくそうに口を開く。

「お、贈り物?」

「烏兄ちゃん…なんで疑問形?」

「べ、別にいいだろ何でも!」

「怪しい…」

今度は烏天狗が顔を赤くし、小包をぎゅっと隠すように抱きしめる。

「烏天狗くん、良かったら恋の相談なら乗りますよ?」

「だから、そんなんじゃないって言ってるだろ!」

金魚は長い袖で口を隠しながらふふっと笑うと、烏天狗はあまりの恥ずかしさに「荷物は受け取ったから帰る」と言い残すとたたんでいた黒い羽を広げ大空に飛び立って行った。

「烏兄ちゃん行っちゃった…」

「言い過ぎちゃったかな」

ゆづるたちは先程のことに反省していると

金魚は大丈夫とゆづるたちの頭を撫でた。

「烏天狗くんは優しいからきっと気にしていませんよ。 でも今度あった時はごめんなさいしましょうね。」

「「「は~い」」」

金魚の店で荷物を受け取った烏天狗。ある場所に向かったようだ...

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