六十四話 調理の物語
あれからゆづるは帰ってきた口裂け達に事情を話す。予想はしていたが裏の妖怪達の住処に行くことを反対された。
「『目黒組』なんて危ないじゃないか!!」
「そうでありんすよ!いくら一つ目の身内としても心配でありんす。」
その言葉に一つ目は徐々に落ち込んでいく。
するとゆづるは大きな声で口裂け達に頭を下げた。
「口裂けさん、ネコさん。心配してくれてありがとう。でも僕の友達が困っているんだ!僕は助けたい!お願いします!」
「ゆづる…お願いします!絶対、ゆづるを危険な目に合わせません!」
「お願いします!」
ゆづる、一つ目、蟒蛇のお願いする姿に口裂けは困った顔になったが隣にいたネコはニャハハハッと笑う。
「ゆうちゃんには敵わないでありんすね。分かったでありんす。」
「ちょっとネコ!?」
「姐さんも知ってるでありんしょ?ゆうちゃんが友達思いの頑固な事。」
「…そうだね。そこの三つ目、ゆづる達になにか危害を加えたらタダじゃおかないよ!」
「もちろんです。可愛らしい子達には指一本触れさせませんよ。」
「……不安だけど頼んだよ。」
ゆづるは口裂けから許可がでたのを機に買い集めた材料を持って『目黒組』に向かった。
場所は鬼の村の山奥。
館はとても大きく、ゆづるの口が塞がらない程だ。
「相変わらず大きい館だね。」
「蟒蛇の家と変わらないだろ?」
「えっ!?」
蟒蛇の家と変わらない…
自分はとても凄い妖怪と友達になったんだなと思いながら館に入っていく一つ目達に着いていった。
すると中にいた妖怪達が一つ目を見つけると一斉に頭を下げた。
「「「おかえりなさい!!坊ちゃん!」」」
「…やめてよ、恥ずかしい。」
「お!坊ちゃん、今日はご友人と一緒なんですね!おめぇら!茶を出せ!」
「そんなのはいいよ!今日はぼーろを作るだけなんだから!」
『ぼーろ』の単語を聞いた途端、周りの妖怪達が顔を上げた。
「ぼーろ!?ぼーろってあの旦那様の得意な菓子ですよね!でも作り方が…」
「大丈夫よ。この可愛らしい子が知ってるみたいだから、ね?」
三つ目はぽんぽんとゆづるの肩を叩いた。
「?見ない顔ですな?その子は新しいご友人ですか?」
「そ、そう!座敷童子!俺の新しい友達!」
「座敷童子?あぁ!坊ちゃんがよく話に出てくる妖怪の一人ですな!初めまして。」
「ちょっ....!!」
「一つ目、素直じゃないね。」
「うるさい!」
蟒蛇が茶化すと一つ目は恥ずかしいのか大きい声を出した。
一つ目は身内にゆづるの事、座敷童子としてだが話していた。その事を知りゆづるは照れくさくなる。
「もういいだろ!俺たちは行くから!着いてくるなよ!?」
そう言うと一つ目はゆづると蟒蛇の手を引いて館に入っていった。
「相変わらず坊ちゃんは素直じゃねぇな。まだまだお子様だ。」
「そこが可愛いんじゃないか。」
「お前…いつか坊ちゃんに嫌われるぞ?」
「ふふっ…気をつけますわ。」
三つ目も一つ目の後を着いて歩いていく。
たどり着いたのは広い調理場。
さすが大きい館、調理場も広い。
「ここで作ろうぜ!三つ目には人払いを頼んだから大丈夫だ!」
「僕たちだけで作れるの?その『ぼーろ』って...」
「大丈夫。そんなに難しくは無いよ。ただ同じものを作れるかは保証できないけど、そこは一つ目の味覚が頼りだね!」
「が、がんばるぜ!」
「じゃあ、始めよう。」
早速ゆづる達は『ぼーろ』作りに励んだ。
生地を作り、平たい鍋に形を作った生地を焼く。とっても簡単だがが、どうしても味が上手くいかない。一つ目の思い出の味にならないのだ。
「なんだろ、美味いんだけど何かが足りない…」
「何が足りないの?」
「うーん…なんか甘い?いや、甘酸っぱい…色も桃色っぽかったし。」
「甘酸っぱい…桃色…果物かな?」
「いちごではないかしら?」
一つ目と話し合っていると三つめ目が会話に入ってきた。
「三つ目!人払いは!?」
「大丈夫ですよ坊ちゃん。皆、坊ちゃんの邪魔はしませんわ。」
「ねぇ三つ目さん、いちごって…」
「旦那様がよく使っていた果物です。あまりここいらでは流通していませんが、花の郷では作られていて旦那様もよくそちらから買っておられました。」
「花の郷って…遠いな…」
「大丈夫ですよ、今日は花の郷の商人が来ますのでいちごを頂きましょう。」
「本当!?」
ゆづる達は良かったと胸を撫で下ろしていると外から「商人さんが来たぞ!」と声がした。
花の郷から商人が来た。何やらゆづるの知り合いを知っているようだ。




