六十三話 ぼーろの物語
ゆづるは『福呼び食堂』の庭の掃除をしていた。しかし、辻斬りが発生したからか、客は来ない。
そんな時1人の妖怪がゆづるに近づいてきた。
「もし?可愛らしい子、お店は開いてるかしら?」
「可愛い…?あ、はい!席にご案内します!」
「ありがとう。」
ゆづるは髪で顔を隠した女の妖怪を席に案内し、お茶を差し出す。
「すみません。今、口裂けさん達がいないので戻ってからの用意になりますが…」
「構わないわ。貴方みたいな可愛らしい子と話せるからね。」
「あの…僕、一応男なのですが…」
「あら、見たらわかるわ。」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
店の外から大声が聞こえ、顔を向けてみるとそこには一つ目と蟒蛇がいた。何やら声の主は一つ目のようだ。
「三つ目!!何してんだよ!」
「坊ちゃん、迎えに来てくれたの?蟒蛇ちゃんも、」
「違ぇよ!!」
「シャー!」
一つ目は全否定。蟒蛇は連れている大蛇が威嚇する程だ。
「えっと…知り合い?」
「知り合いっていうか…身内?」
「じゃあ、お姉さん?」
「こんな姉貴はいらねぇ…」
「????」
一つ目の回答に上手く頭で整理できず困っていると蟒蛇が口を開いた。
「その妖怪は三つ目だよ。裏の妖怪『目黒組』の鍵開け職人。一つ目は『目黒組』の一人息子なんだ。」
三つ目が髪をかきあげると確かに目が三つあった。ゆづるは少しびっくりしたが話を戻す。
「裏の妖怪って…」
「人間で言う極道ってとこかしら。」
三つ目はズズッとお茶を飲む。
一つ目は気まずそうにゆづるに顔を向けた。
「ゆづる、その…隠してた訳じゃないんだ。ただいつ言えばいいか分からなくて…」
「一つ目、僕は大丈夫。一つ目はいい妖怪だよ!嫌いにならない!」
ゆづるは一つ目の手を握ると安心したのかいつもの元気な笑みを見せた。
「可愛らしいわ!これが友情!」
「また始まったよ…」
「ねぇ、蟒蛇。これは…?」
「気にしないで、この人いつもこうだから。小さい妖怪が好きなんだよ。」
「…なるほど。」
ゆづるは納得した。すると一つ目が三つ目に問いかける。
「なぁ、この食堂になんの用があんだよ。俺の友達に迷惑かけるな!」
「ふふっ。実はそこの可愛らしい子に用がありましてね?」
「あの、僕は可愛らしい子じゃなくて、ざしき…」
「人間でしょう?」
「「「!!??」」」
一つ目、ゆづる、蟒蛇は固まった。ゆづるは2人を見るとブンブンと首を横に振る。言ってない証拠だ。一つ目は恐る恐る尋ねた。
「なんで…...?」
「私が坊ちゃんの監視をしてた際に耳にしちゃいまして。」
「うわぁ…」
「最低な妖怪だ。」
一つ目と蟒蛇は冷たい視線を三つ目に送ったが、気にしていないのか三つ目は話を続ける。
「で、人間に用なのですが。貴方、ぼーろは作れますか?」
「ボーロ?」
「はい、西洋の菓子みたいなのですが作り方は全く分からなくて…」
「おばあちゃんに聞いたことがあります。でも材料が…」
「もちろんこちらでご用意します。」
「分かりました。では…」
ゆづるが材料を言おうとした際、一つ目がそれを遮るように口を開いた。
「三つ目は諦めてなかったのか?」
「もちろん。奥様と坊ちゃんの思い出の菓子ですもの。」
それを聞いた途端、一つ目はズビズビと泣き出した。
「一つ目、大丈夫?ゆっくりで大丈夫だから、わけを話して?」
「ありがとうゆづる。実はそのぼーろって菓子な、育ての父親がよく作ってくれたんだ。その父親、人間なんだ。」
「え!?」
「出会った頃、ゆづるにきつく当たったのは親父が俺たち妖怪よりもすぐ亡くなったからなんだ。俺、悲しくてさ…どっかで人間が弱いからって悪く考えてた。それから俺のお袋は父親の話を一切しなくなった。そのぼーろも…いつしか思い出の菓子になってた。」
「なので私は坊ちゃんと奥様をまた仲良くするためにぼーろを作りたいの!」
「ゆづる、協力してくれるか?」
「僕からもお願い!」
一つ目、蟒蛇、三つ目はゆづるに熱い視線を送る。だがゆづるの答えは決まっている。
「もちろん!僕たち、友達でしょ?助け合わなくちゃ!」
「「ありがとう!!」」
「じゃあ、材料は…」
ゆづる達は手分けして材料を買い込み一つ目の家『目黒組』に向かう計画を立てた。
ボーロを作ることになったゆづる。うまく行くのか。




