六十二話 蜘蛛の物語
ある日、椿はゆづるの手紙を読んでいた。体調のことや鬼女などのことが書かれていた。
「ゆづるくん、帰ることが出来るのね。よかった…」
「なんだ?あのチビ帰るのか?」
「いいえ、手紙には魂狩りの犯人が分かるまでは残るみたい。」
「そうか。何かやらかさなけりゃいいがな。」
針女はそう言っているが本心は心配しているのだろう。そわそわしていた。それに気づいた椿は声をかける。
「ゆづるくんなら大丈夫よ。それより桜さん遅いわね。もう練習時間が過ぎているのに。」
「あぁ…多分美人に引っかかったな。椿、今日は休暇にしよう!何処か出かけ…」
そこまで声が出かけたところで戸がドンドンと叩く音が聞こえた。
「はい!ただいま。」
椿は戸を開けるとそこには見覚えのある姿をした妖怪がいた。
「…土蜘蛛くん?」
「何!?土蜘蛛だと!?」
「違うのよ!私は土蜘蛛じゃなくて女郎蜘蛛なのよ!」
女郎蜘蛛と名乗った女の子の妖怪はプンプンとしながら答えた。
「あんなお兄ちゃんと一緒にしないで欲しいのよ!」
「ごめんなさい。で、女郎蜘蛛さんはどのようなご用かしら?」
「椿っていう人間に会いに来たのよ。狐の宮に行ったらこの時間ならここだって言われて…疲れたのよ、」
「それはごめんなさい。椿は私です。」
「あなたが椿?妖怪じゃないのよ。」
「最近、妖怪になりまして…」
「そうなの?まぁ、いいのよ。今日はただの挨拶だから。私最近漣の山の頭首になったのよ。あなた、牛鬼様と知り合いみたいだから伝えに来たのよ。」
女郎蜘蛛はエッヘンと胸を張り自慢げに話した。
「ご丁寧にありがとう。あら?」
「なんなのよ。」
「あなたの着物…袖が少し破けているわ。」
「あ、本当だな。」
「えぇー!嫌なのよ!お気に入りのなのに!」
「大丈夫よ。私が修繕してあげる。」
「…本当に直る?一番可愛くてお気に入りなのよ。」
女郎蜘蛛は不安なのか問いかけると椿は優しく「大丈夫よ」と頭を撫でる。
「…わかったのよ。牛鬼様の羽織を直したもの。信じてあげるのよ。」
「ありがとう。」
椿は女郎蜘蛛を部屋に入れると、裁縫箱を取り出し針に糸を通す。そして慣れた手つきでチクチクと縫っていく。その姿に女郎蜘蛛は釘付けだ。
「凄いだろ?椿は裁縫が得意なんだ。」
「…凄いのよ。」
小さい穴だった為、修繕に時間はかからなかった。出来上がった袖を見て女郎蜘蛛はまた感動した。
「凄いのよ!破けた場所が分からないのよ!」
「ふふっ、そんなに喜んで貰えると嬉しいわ。」
「さすが椿だ。さぁ、用は済んだだろ?帰った帰った。」
針女は女郎蜘蛛を玄関に連れていくと、女郎蜘蛛は最後椿にこう叫んだ。
「直してくれたお礼をしたいのよ!何かあれば漣の山に来て欲しいのよ。」
「ありがとう。今度は遊びに行かせていただくわ。」
「さぁ帰った帰った。」
女郎蜘蛛は椿を気に入ったのか、最初の印象はどこへやらブンブンと手を振って帰っていった。
まさか近々、本当に頼ることになるとは知らず。
アキヒロが魂に聞き回っている。何か収穫はあるのか




