五十八話 妖刀の物語
そこに居たのは蝶の羽が生えたアキヒロだった。蝶化身の姿なのだろう。
「俺達も忘れてもらっちゃ困るぞ?アキヒロ!」
「犬神!件!それに鬼女!なんじゃなんじゃ!どうなっている!?」
アキヒロはあわあわとどうなっているか分からない様子だ。しかしゆづるはそんなアキヒロをぎゅっと抱きしめた。
「おじいちゃん!会いたかった!」
「件達がいて…ゆづるがいるということは…妖怪の世界に来れたのか!」
「うん!僕、妖怪に会えたよ!おじいちゃんの言った通りだった!」
「そうかそうか!ワシの夢が叶って嬉しいぞ!」
「……アキヒロ、実はお前に謝りたいことがある。」
鬼女は今までのことを話した。
ゆづるを連れてきたこと、放っておいてしまったことなどを正直に話した。
「…そうか.....。ワシを連れてきた犯人を探ろうとしてくれたんじゃな?ありがとう鬼女。それとゆづる、すまなかった。事の発端はワシのワガママじゃ。鬼女を責めないでやってくれ。」
「おじいちゃん。僕ね、最初は怖かった…でも今は違う沢山友達が出来て、楽しいんだ!ここに来れて良かったって思ってる!」
ゆづるは元気にアキヒロに告げるとアキヒロは小さく「良かった」と口ずさんだ。
「あ!おじいちゃん!紹介するね!こっちがネコさんで、こっちが口裂け女さん!このお店でお世話になってるんだ!」
ゆづるはネコと口裂け女を連れてくるとアキヒロに紹介した。
「おぉ。ネコさん、口裂け女さん。ゆづるがお世話になってます。」
「こ、こちらこそでありんす!」
「ゆづるはよく働くいい子です。少し危なっかしいところはありますがとっても優しい子でいつも元気をもらってます。」
口裂け女はゆづるの頭を撫でながら言うとゆづるは顔を赤くした。
「ゆづる、お前はいい妖怪に出会えたな。」
「うん!他にも友達がいるんだ!また紹介するね!」
「もちろんじゃ。」
「ゆづる、アキヒロを少し借りてもよろしいですか?」
「あ!件様たちも話したいですよね。すみません。」
ゆづるははしゃぎ過ぎたと反省しながら小さく席に座った。
「どうした?件。昔話でもするか?」
「昔話もいいですが、冥界列車のことは覚えてますか?」
「冥界列車…あのことか…覚えておるよ。」
「犯人は見たか?」
「それなんじゃが、うっすらとなら見たぞ。」
「!?」
「首の無い馬に乗った妖怪じゃ。妖刀を持ったな。」
「妖刀だと!?」
犬神はガタッと立ち上がる。ゆづるは妖刀は何となくわかるがしっくりはこなかった。それを見た件は話を続ける。
「妖刀は妖怪を斬ることが出来る刀です。斬られると最悪の場合は…死です。しかし魂は切れないはず…」
「そもそも妖刀なんて何処から持ってきたでありんすか!?」
「もしかしたら…閻魔大王が持っている妖刀『沙雨』かもしれない。」
「沙雨?」
ゆづるが尋ねると犬神が答えた。
「閻魔大王は不思議な力を持つ道具や武器を持っている。その中に確か魂さえも斬れる妖刀があったはずだ。」
「ちょっと待って!もしそれが本当なら辻斬りの犯人と魂狩りの犯人は…その妖怪?」
「可能性は高い。件と犬神と私はもう少し探ってみる。」
「わかった、頼んだぞ。ワシは被害にあった魂に聞いてみるかの。」
その言葉にネコと口裂け女はある疑問をぶつけた。
「あの、アキヒロさん?アンタは魂ごと消されたはずでありんすよね?魂に聞くって…」
「そうだよ!そもそも札で呼び出せたりどうなってんだい!?」
確かにそうだ。ゆづるは嬉しさのあまり忘れていたが、魂は消滅したと聞いていた。
「あぁ、それはな?」
アキヒロは左腕の袖を捲る。そこには腕はなかった。
「おじいちゃん!腕が!」
「あぁ、腕を斬られただけで何とか消滅は免れたんじゃ。じゃからゆづるの呼びかけにも答えられたってことじゃ。」
「相変わらず、変なところで強運ですね。」
「そういう事だ!じゃあ、何か分かったら知らせる。アキヒロ、ゆづるくれぐれも無茶するなよ?」
そういうと件たちは店を後にした。
「信用されてないのぉ。ゆづる。」
「おじいちゃんもね。」
二ヒヒッとお互いの顔を見ながら笑った。
「じゃあ、ゆづる。ワシはさまよっている魂に事情を聞く。何かあればまた呼んでくれ。」
「わかった!おじいちゃん、気をつけてね。」
アキヒロは光とともに消えると札がヒラヒラとゆづるの元に戻った。ゆづるたちは夜行に近づくことはできるだろうか。
椿が桜の精のもとで特訓の休憩中だ。少し覗いてみよう




