五十二話 遭遇の物語
翌日、晴明の言っていたある場所にゆづるたちはいた。ある場所とは通りゃんせの森の入口だ。
集められたのは、ゆづる・ネコ・件・犬神。本来なら椿も来るはずだったが、道満から事情を聞いてゆづるは絶句した。
「椿さんが…妖怪に?」
「すまない、晴明から言われて向かった時にはもう…..。」
「そんな…」
「ゆうちゃん、大丈夫でありんすか?」
ネコは暗い顔のゆづるの背中をさする。晴明も「日を改めるか?」と言ったがきっと椿はそんなことは望まないだろう…ゆづるは「大丈夫です。」と言うと背筋を伸ばした。
「うむ。ネコ・犬神・件、ゆづるを守ってやってくれ!」
三人は大きく頷く。覚悟が決まったみたいだ。
「よし、では始めるぞ!」
その声を合図に道満と晴明は術を唱えていく。ゆづるは何が起こるのだろうと身構えているとだんだんと暗い雰囲気になってきた。
魂みたいなものがゆづるたちの周りに浮いている。森はざわめき空も曇っていく。しばらくして術を唱え終わったのか晴明たちはゆづるに話しかけた。
「今、術で通りゃんせの道に手を加えた。鬼女を誘き出す方法だが、ゆづるに協力して欲しい。」
「僕ですか?」
「鬼女の目的は少なくとも君の可能性がある。出来るかい?」
「分かりました。」
ゆづるは力強く承諾すると、晴明たちと共に通りゃんせの森に入っていった。もちろん通りゃんせの森の決まりの歌を忘れず。
「通りゃんせ、通りゃんせ。ここはどこの細道じゃ。」
『天神様の細道じゃ』
「ちっと通して下しゃんせ。」
『御用の無いもの通しゃせぬ。』
「この子の七つのお祝いに、御札を納めに参ります。」
『行きは良い良い帰りは怖い。怖いながらも通りゃんせ、通りゃんせ。』
すると再び森がざわざわと騒ぎ出した。ゆづるはスタスタと晴明を目指して歩いていたが、急に声が聞こえた。
「そこの者。誰を探している?」
振り向くと兎の面をした女妖怪が立っている。この森で動物の面となれば…
「面霊気さんですか?」
「そうだ。誰を探している?」
「…晴明さ…あれ?」
ゆづるは周りを見渡すが晴明、道満、ネコ、犬神や件もいなかった。
「晴明様たちは!?」
「?何を言っている、最初からお前一人だ。」
「え?」
「で?誰を探している?」
兎はゆづるに近づくと再び問いかける。ゆづるは恐る恐る答えることにした。
「…鬼女に会いに来ました。」
「鬼女?見たことはあるのか?」
「いえ、姿は見た事ありません。」
「では、私が案内してやろう。」
兎はそう言うとゆづるを抜かして先に進む。現状どうすることも出来ないゆづるはついて行くことにした。
「どうして鬼女に会いたいんだ?」
「…帰る方法を…真実を教えてもらいたくて。」
「真実?それにどこに帰るんだ?」
「僕…実は人間なんです。青い蝶を追ってこの世界に迷い込みました。だから元の世界に帰りたいんです。それで魂狩りの犯人が分かれば帰れるかもって…」
ゆづるが兎に秘密を打ち明けても兎は何故か驚くことはしなかった。だが足を止め、ゆづるの方に振り向いた。
「何故、鬼女が犯人と思ったんだ?」
「"半妖“で妖力が強い妖怪は鬼女と聞いて…本当かどうかを確かめたくて..。」
「"半妖"か…」
兎がそう答えた瞬間崩れるように倒れてしまった。
「兎さん!?大丈夫!?」
ゆづるが揺すっても兎は動かないが息をしている…気絶しているだけみたいだ。ゆづるはこの状況を見てもしかしてと口を開いた。
「もしかして…鬼女さん!近くにいるんですか?」
そう叫ぶと森の奥から人間のような見た目の人物が歩いてくる。
「…お前がアキヒロの孫か…はじめまして。私が鬼女だ。」
ついにゆづるは鬼女と出会った。しかし何か事情がありそうだ。




