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五十一話 毒の物語

一方その頃狐の宮で事件が起こっていた。始まりは雪女と椿が街の再建の為に歩いているときだった。

「椿、僕はこの店で話を聞いてくる。少し待っていてくれ。」

「分かりました。」

椿はそう言うと店の前にあるイスに腰を下ろす。空を見上げ時間を潰していた。すると聞き馴染みのある声が聞こえた。

「お姉さん、奇遇だね?」

「あら、土蜘蛛くん。久しぶりね、あの時はありがとう。」

「気にしないで、俺も力になれて嬉しいよ。」

土蜘蛛は構わず椿の隣に座るとニコニコと笑った。

椿もつられて笑う。椿にとって土蜘蛛はどこか弟に似ている節があり疑いをもてなくなっていた。

「あ!そうそう!お姉さんに渡したいものがあるんだ!」

「私に?」

土蜘蛛は懐から瓶を出すと中から一粒出し、椿に渡した。

「はい!頑張っているお姉さんに飴を作ったんだ!あげるよ!」

「ありがとう。じゃあ二粒頂けないかしら?お雪さんにもあげたいの。」

「いいよ!」

土蜘蛛はもう一粒瓶から飴を出すと手渡した。その時、話が終わったのか雪女が店から出てきた。

「お待たせ。おや、一人増えてるね?」

「お雪さん、彼は土蜘蛛くん。羽衣様の事で手伝ってくれた子です。」

「土蜘蛛…牛鬼様の弟子だね。その節は感謝する。で?それは?」

雪女は椿の手の中にある飴を見て尋ねた。

「飴を頂いたんです。お雪さんもどうですか?」

「君ねぇ、何でも貰うもんじゃないよ?…私が先に食べるから何も無かったら君もお食べ。」

「酷いなぁ、まるで”毒”が入ってるみたいに。」

「念の為だよ。」

そう言うと雪女は椿から飴を一つ取ると口に放り込んだ。舌でカランコロンと飴を転がすが痺れもなければ味は美味しい。

「うん、味は桃だな。僕の思い違いか…...?」

「大丈夫でしょ?ほらほら、お姉さんも!」

「じゃあ、頂きます。」

椿も飴を口に運ぶとカランコロンと味わう味は同じ桃だったが…何故か刺激を感じた。そして急に体が熱く感じ息苦しくなってきた。

激しい痛みが走る。椿はただただ倒れ込むことしか出来ない。

「うっ!あぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「椿どうした!大丈夫か!?」

「へぇ~、椿っていうんだね?お姉さん。」

「おい土蜘蛛!椿に何をした!?」

「何って、お姉さんに妖怪になって欲しいなぁって思って~飴にちょっと毒を混ぜただけだよ?」

「毒!?私には何も無かったぞ!?」

ははははっと土蜘蛛は大笑いした。

「当たり前じゃん!あんた妖怪なんだから効果はないよ!これは、人間を妖怪にする薬!」

「今すぐ解毒剤を出せ!」

「あるわけないじゃん?解毒剤はもっと作るのが難しいんだから。」

そうこうしていると周りが騒ぎを聞き付け集まりだした。

苦しむ椿を見て「なんだなんだ?」「何が起こっている?」と妖怪たちがヒソヒソと話し出す。

このまま話を続ければ椿が危ない。雪女は椿を抱き上げると土蜘蛛に叫んだ。

「土蜘蛛!話がある!お前も着いてこい!!」

「いいよ~!どんな妖怪になるか気になるし?」

「ぐぅ………」

腑に落ちないが、仕方がない。雪女は椿と土蜘蛛を連れて一旦椿の部屋に向かった。苦しむ椿を布団に寝かせる。

「へぇ、ここが椿さんの部屋かぁ。」

「…どういうつもりか知らないが、牛鬼様の差し金か?」

「確かに調合を教えてくれたのは牛鬼様だけど、あくまで俺が主体かな?」

「牛鬼様はどうした!?」

「えーと、うるさいから閉じ込めちゃった。」

土蜘蛛は悪びれることも無く返事を返す姿に怒りを感じ凍らせてやろうとした瞬間、ある人物が部屋に入ってきた

「邪魔する。」

「…...!道満様!どうして…」

「話は後だ!人間の娘は?」

「こ、こちらです!」

入ってきたのは晴明の友の道満だ。椿を見つけるやいなや額に手を当て様子を伺う。

「妖気が強くなっている…おい!土蜘蛛と言ったな。この毒が完全に回る時間は?」

「さぁ?知らないなぁ?ただ作っただけだから…イッッ…!」

知らないと話す土蜘蛛の周りに急に結界が張られる。電流のような痛みが土蜘蛛を襲う。

「答えろ…さもなくば力を強めるぞ?」

「イタタタッ…へへっ、本当に知らないよ?痛い!!」

「?……ひと…し……?」

意識が朦朧とする中、椿は痛がる土蜘蛛を見つめた。しかし椿の目に映っていたのは弟でゆづるの父である仁志だった。痛みが強いせいか頭が働かず幻覚が見えたのだろう。それでも目の前の光景は仁志が痛めつけられている場面に見えた…大事な弟が傷つけられている…そう判断した椿は手に力を入れた。

「私の…私の弟をいじめないで!!」

その瞬間周りに無数の植物のツタが張り巡らされた。

「!!何が起こってる!?」

「力が暴走している!避けろ!!」

無差別に伸びるツタを雪女と道満は避けていく。その中のひとつが土蜘蛛に掛かっていた結界を破ると椿は力尽きたの眠るように気絶してしまった。

「今のは……椿の力なのか…?」

「恐らくな。だか、力を解放してしまったのならこの娘はもう…」

その言葉を聞いた雪女は直ぐに椿の元に向かった。そこで見たのは人間のセーラー服ではなく赤い着物を身にまとい、椿の花を髪に刺した姿。

「嘘だろ…椿!!」

「やった…やったぁ!椿さんは妖怪になった!!成功だ!これで一緒だ!痛っ!」

道満は再び土蜘蛛に結界を張る。

「未来ある人間を妖怪にしたお前の罪は重いぞ?覚悟は出来ているな?」

道満の顔は怒りに満ちていた。まるで、誰でも殺す勢いだ。その時息を切らした妖怪が入ってきた。

「…申し訳ない。全て私の責任だ!」

「牛鬼様…」

「牛鬼様!?なんで?ちゃんと閉じ込めたのに!」

「あれしきの戸なんぞ、私の力でこじ開けられる。…道満殿、雪女、申し訳なかった…私が土蜘蛛に毒の調合を教えた。自分の罪を隠すためにな。本当に自分勝手だ。そのせいで罪のない人間の未来を奪ってしまった…土蜘蛛共々罪を償う所存だ。」

「そうしたら、椿さんと暮らせないじゃん!そんなの嫌だ!」

「わがままを言うな!!お前には私と一緒に地獄へ行って貰うぞ。」

「うぅ…椿さん…うわぁぁぁぁん!いやだぁぁぁぁぁぁ!!」

土蜘蛛は大声で泣いた。きっと彼は罪の重さではなく椿と暮らせないことが悲しいのだろう。

数時間後、牛鬼は土蜘蛛を連れて地獄へ自分の罪を申告しに行った。

土蜘蛛の自分勝手な行動で、妖怪になってしまった椿。彼女が目を覚ました時…彼女はどう思うのだろう…

ゆづるたちはついに冥界列車の魂狩りの犯人に会う。

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