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四十三話 病の物語

「ゴホッゴホッ……」

「大丈夫ですか!?」

「えぇ、大丈夫よ。ありがとう折姫。」

布団に横たわっている妖怪は折姫の顔に手を当てた。

「いつもごめんなさいね、この病が早く治れば良いのだけど…」

「気になさらないでくださいまし。アマビエ様」

アマビエと呼ばれた妖怪はゴホッゴホッと咳むと近くにあった水に口をつけた。

「アマビエという妖怪でありながら自分が病にかかるなんてね…」

「早く治る方法が見つかるといいですね…」

「折姫様!折姫様!ここに居られましたか!」

「あら、どうかされたの?」

妖怪は折姫を見つけると近くに駆け寄った。

「実は…折姫様に会いたいと言う妖怪がおりまして…座敷童子という妖怪なのですが…」

「座敷童子様!?その方は以前迷子のところを助けて頂いた妖怪様ですわ!」

「なんと!!」

折姫は会いに行きたいが、アマビエを置いて行く訳には行かない…..。チラッとアマビエを見ると「会いに行っておいで」と手を振られ折姫はお辞儀をして駆けて行った。

「あ!折姫!」

「座敷童子様!……と……そちらの妖怪様は?」

「こちらは鉄鼠さん!僕の友達だよ。」

「よろしくな!」

折姫の前にいたのは座敷童子に扮しているゆづると筋肉があるネズミの鉄鼠だった。

「鉄鼠様、私は折姫と申します。よろしくお願いしますわ。」

「へへっ…鉄鼠様だなんて…照れるじゃねぇか!よろしくな。」

「ふふっ。あ!そうだわ!座敷童子様は私に用があるとお聞きしたのだけど。」

折姫はゆづるに尋ねるとゆづるは懐から折り紙の花を取り出した。

「これ、折り鶴で帰った時に落としたでしょ?届けに来たんだけど…迷惑だったかな?」

「とんでもないですわ!ありがとうございます。これ…実はこの「治癒の都」の頭首であるアマビエ様の為に作ったモノですの。そうですわ!座敷童子、鉄鼠様!アマビエ様に会われませんこと?」

「いけません!」

折姫の声を被せるかのように大きな声が聞こえた。声のしたほうを向くと杖を持った妖怪がそこにいた。

「油すまし、どうしてダメなのですか?アマビエ様だっていつも一人は寂しいですわ。大勢いた方が…」

「いけません!いけません!アマビエ様は病に苦しんでいます。そんなアマビエ様にお客様を会わせるなんて…鬼ですか!?」

油すましという妖怪は杖をトントンと地面を叩きながら折姫を叱った。まぁまぁとゆづるはなだめながらも何か気になった鉄鼠が口を開いた。

「アマビエ様って疫病を退治する類の妖怪だろ?その妖怪が病ってどういう事だ?」

「…実は以前この都にて風邪のような病が流行りましてな。皆がアマビエ様の治癒を望んだ。アマビエ様も優しいお方な為に拒まず治癒したのです。その代償か妖力が落ちたアマビエ様が逆に病にかかってしまったのです。」

「それって、元を正せば都の奴らのせいじゃねぇか!」

「おっしゃる通り。なので我々は責任を果たすべくアマビエ様の病を治す方法を探っているのです。」

「私が通りゃんせの森に行ったのもアマビエ様の病を治す手掛かりがあればと思って…」

「それで迷子になっては意味がありませんぞ!」

「ごめんなさい…」

その話を聞いたゆづるは何か力になれればと考えているとある事を思い出す。椿の手紙に書いてあった.....確か……

「そう言えば、漣の山にいる牛鬼様は毒に詳しいって聞いた事がある…じゃあ薬にも詳しいかも!」

「確かに!だがどうする?漣の山はここからかなりの距離はあるぞ。」

うーん…とみなで頭を悩ませる。

手紙の話だと牛鬼はあまり山から出ず研究に勤しんでいるとのこと。

やはり漣の山に向かうしかないのかと思っていると後ろからトントンとゆづるの肩を誰かが叩いた。

「ねぇ、牛鬼様を探してるの?」

「えっ?」

「あ、ごめんごめん。俺は土蜘蛛。牛鬼様の弟子だよ。」

「ええっ!?」

運が良いのか、ゆづるは牛鬼の弟子という土蜘蛛に出会った。

ということは牛鬼は近くにいるのだろうか?

「弟子ってことは牛鬼様はこの近くにいるの?」

「ううん、俺一人。薬草の買い出しを頼まれてさ。でも、俺もまぁまぁ薬草類に詳し役に立つかもしれないよ?」

「なんか胡散臭いなぁ…」

鉄鼠は窮鼠のような振る舞いの土蜘蛛にあまりいい印象はなかった。しかし、薬草に詳しいのは助かる。ゆづるは土蜘蛛に尋ねた。

「土蜘蛛、アマビエ様が病で苦しんでるんだ。治す薬草を教えて!」

「うーん…症状によるなぁ。」

「咳と熱がありますの。でも風邪薬じゃ治らなくて、日に日に酷くなってますわ。」

「じゃあ…」

土蜘蛛はごそごそと懐からある薬草を出すとゆづるに渡す。

「この薬草が効くんじゃないかな。これを煎じて飲んだらいい。」

「こ、これは!!治癒の都に数百年に一度に生える薬草!どこでこれを!?ここいらでは手に入らん。都出身である我々でもだ!」

「それでアマビエ様の病は治せそう?」

「あぁ、この薬草はアマビエ様に匹敵する治癒力を持つ。助かるぞ!」

「本当!?」

油すましは嬉しさのあまりプルプルと震えていた。

「解決出来て何より。じゃあ俺は他に行く場所があるから、」

「待て!土蜘蛛とやら!何か礼をしたい!」

「本当ですか?じゃあ…」

その後、土蜘蛛に貰った薬草を煎じてアマビエに飲ませた。

薬が体に馴染むまで数日かかるため、ゆづると鉄鼠は折姫と油すましに別れを告げ、「治癒の都」を後にした。後日折姫から折り鶴と共に手紙が来た。

『アマビエ様はあれから元気を取り戻し、今では外出出来るまで回復しました。ありがとうございます。今度治癒の都を訪れた際は是非とも案内をさせてくださいまし。 折姫』

「良かったな!アマビエ様が良くなって!」

「そうですね!」

鉄鼠はゆづるの頭をわしゃわしゃと撫で回す。だがある疑問もあった。何故土蜘蛛はお礼に『アマビエ様の鱗』を欲しがったんだろう。

土蜘蛛にはまだ何かあるようだ。覗いてみよう…

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