四話 昔の物語
「ゆうちゃーん 寝てるでありんすか?」
ガラッとネコが戸を開けるとそこには布団にくるまっているゆづるがいた。
そぉっと顔を覗いてみると目には涙が浮かんでいる。
「ぐずっ……お母さん…お父さん…ううっ…」
「…………」
ネコはそっとゆづるの頭を撫でるとその場を離れ、戸を閉めるとそこには口裂け女が立っていた。
「どうだい?ゆづるは」
「うなされてるでありんす。可哀想に」
「そうかい…早く帰れる方法を見つけないとね。」
2人がそう会話している時、ゆづるは夢を見ていた。昔昔の懐かしい夢。まだゆづるが5歳でおじいちゃんがまだ生きていた時の夢だった。
「おじいちゃん!!」
「おぉ!ゆづる。」
幼い体のゆづるはおじいちゃんに抱きついた。
「ねぇおじいちゃん。またあのお話を聞かせて!」
「ゆづるは本当にあの話が好きじゃのう。いいぞ、おいで。」
おじいちゃんはゆづるを膝に乗せるとゆっくり話し出す。
それはおじいちゃんが今のゆづると同じ年齢の時、妖怪と過した日々のお話。ゆづるはその話が好きだった。
「友達だった妖怪とよく一緒にいてな、よく色んなことをしたよ。イタズラしたり探索したり、楽しかったなぁ。」
「おじいちゃん、妖怪って本当にいるの?」
「あぁいるとも!おじいちゃんのこのふたつの目でしっかり見たからね。」
「僕も会えるかなぁ?」
「会えるとも。いつかおじいちゃんが会わせてあげるよ。」
「ほんとぉ!?」
「あぁ、約束だ。指切りしよう。」
いつか会わせてあげる。それがおじいちゃんの口癖だった。
しかし現実は妖怪に会わせてもらえずにおじいちゃんは癌で亡くなった。
ゆづるはその日を鮮明に覚えていた。悲しみと同時にまだ幼かったせいかおじいちゃんを恨んだ。
「会わせてくれるって言ったのに…嘘つき」
それからは本当に妖怪を信じていたゆづるは通っていた学校からも笑いものになり、周りから悪口をいわれるようになっていた。
「妖怪なんているわけないじゃん!」
「お前のじいちゃん、変な奴だな。」
いつの間にかそんな言葉が日常の一部になっていた。
そしてゆづるは妖怪を信じないようになっていたのだ。そう信じないことで自分がおじいちゃんみたいに【おかしな人間】にならないように。そう決めたのだ。
「うぅ…ん。はっ!!」
ゆづるの目が覚めると外は鳥がチュンチュンと鳴きながら飛んでいる。
「もう朝だ…。嫌な夢を見たな。」
布団を剥がし寝間着を見てみるとびっしょりと汗をかいていた。
「…着替えなきゃ…。」
ゆづるは慣れた手つきで着物を着ると遅れないように口裂け女とネコが待つ店の台所に向かった。
初めての休みを貰ったゆづる。1人で妖怪の世界を散策していると…