三十八話 家族の物語
「ゆづる!!!」
急に後ろから抱きつかれ振り向いてみると涙でくしゃくしゃになった口裂け女だった。
何事かと心配していると今度は鉄鼠と窮鼠が「おーい!」と走って来た。
「ゆづる!戻ってきたのか!!」
「えらい心配したで?」
「ご、ごめんなさい………」
「謝るなら一番心配してた口裂け姐さんに謝り?」
ゆづるは口裂け女と目を合わせると「ごめんなさい。」と謝る。すると口裂け女はズビズビと鼻をすすりゆづるから離れた。
「本当に心配したんだよ。今までは窮鼠やネコが一緒だったから良かったけど、今回は急にどっか行くから攫われたと思ったじゃないか!!」
「こ、これ以上迷惑をかけたくなくて……」
「何が迷惑かけたくないだ!?アンタがやったことが1番迷惑だってなんで分からないんだい!?」
「……ごめんなさい…。」
「もう………」
ゆづるは口裂け女の言葉が胸に刺さったのか再び謝ると口裂け女は今度は優しくゆづるを包み込む。
「いいかい?アンタは人間だ。本来なら喰われたり攫われる立場なんだよ。だから…もうアタシ達に迷惑をかけたくないならアタシ達を頼れ!!家族なんだから…。」
「そやで。ワシらでもええし、ネコでもええ。いっぱい頼ったらええねんで。」
「そうだぜゆづる!俺たちの仲じゃねぇか!!」
「口裂けさん、窮鼠さん、鉄鼠さん、ありがとう。」
口裂け女に優しく頭を撫でられ今度はゆづるがくしゃくしゃの顔になりながら泣きじゃくる。
本来ならこれでまるく収まるのだがこの騒動はこれで終わりじゃなかった。
「人間って………どういう事だ!?」
はっと我に返り振り向くとゆづるを探すのを手伝ってくれていたのか烏天狗、茨木童子、酒呑童子が驚いた表情で立っていた。
「もしかして…騙していたんですか。」
「ち…ちが「アタシがそうしろと言ったんだ!ゆづるを責めないでやってくれ。」」
「しかし…」
今まで仲良くしていた相手が人間だったことは妖怪の彼らにとって信じられない事だった。
口裂け女は前に行くと頭を下げる。
「すまなかった。アンタ達を騙すような真似をして…でも仕方なかったんだ。もし人間だと分かったらゆづるが危険な目に合うと思って…」
「確かにそうかもしれないが…。」
「まさか人間だとは……」
ゆづるが人間だと分かった瞬間烏天狗たちの目が変わったのが分かった。まるで異物を見るような目。あまりの冷たい視線に肩を震わせていると
「お、俺たちのせいなんだ!!」と烏天狗たちの後ろから一つ目と蟒蛇が顔を出した。
「僕達、ゆづるが人間だって分かった時意地悪したんだ。石を投げたりもした。」
「きっとそのせいでゆづるも余計に言いにくくなったんだ!だけどゆづるはそんな俺たちを友達に入れてくれた!人間でもゆづるはゆづるだ!!俺たちの友達をそんな目で見るな!!」
「そうですよ。皆さんもこの子が優しい子だと知っているでしょう?」
「そやでぇ、アンタらの目は節穴かいなぁ?」
一つ目が大声で叫ぶと近くにいた。金魚と猫又もまるでゆづるを庇うかのように声をかけてくれた。それが効いたのか烏天狗たちのゆづるを見る目が元に戻った。いつもの優しい目だ。
すると大きな手が一つ目たちの頭をわしゃわしゃと掻き回す。
「よく言った坊主ども!その通りじゃ。前に言ったじゃろ?座敷童子、いやゆづる。お前が人間であろうと友ということには変わりないと。」
「そうですね…すみませんゆづる。私たち人間に会うのが初めてで困惑していました。」
「だな、ゆづるはゆづる。変わりはない。悪かった。」
烏天狗たちはゆづるに頭を下げて謝るとそれを見たゆづるは首を横に振る。
「気にしないでください。僕も最初は妖怪が実在するなんて考えてもみなかったし少し怖かったのは事実です。でも違った。烏天狗さんも金魚さんも酒呑童子さんも茨木童子さんに猫又さんも優しかった。それに一つ目と蟒蛇とも仲良くなれて嬉しかった。僕!本当は帰りたいのにここに来ててよかったと思ってます!」
ゆづるは皆に自分の気持ちを打ち明けると安心したのか涙が溢れていた。
「じゃあ、ゆづるが人間ってことは分かった。お前たちは何を探しているかを教えてくれ。何か力になれるかもしれない。」
「それは………」
ついに人間とバレてしまったゆづる。しかし皆はそれを受け入れてくれた。ゆづるは今までのことを話すことに、そしてネコたちも帰ってきて……




