三十一話 陰陽師の物語
「ええか?ゆずる。妖怪はな、元は人間やったヤツもおる。はたまた元から妖怪やったヤツもおる。この世界はそんな奴ばかりや。」
窮鼠はゆずるの頭を撫でながら言う。
「でもな?そんな奴らがいるからこの世界は賑やかなんや。」
「面白い話をしているな。」
声がする方をむくとそこには身だしなみが綺麗な青年が立っていた。それを見つけたゆづるはすぐに窮鼠の後ろにかくれる。
「あんた…清明さんか?懐かしゅうな」
「あぁ、久しぶりだな。窮鼠。」
窮鼠と晴明という男がそう話すとゆづるは少し口を開いた。
「清明….さん?もしかして安倍晴明さん?」
「おぉ、ゆづる知っとんのか。そや、陰陽師さんや。」
陰陽師とは妖怪を祓う人…ゆづるの中ではそう理解している。
「いかにも。私が安倍晴明だ。君は、妖怪じゃないな…人間だね。」
「え、えっと……。」
そう清明が言うとゆづるはバレたと怯え窮鼠の袖をギュッと掴んだ。
「大丈夫や。この人はワシらの味方や。」
「あぁ、安心したまえ。君に危害を加えるつもりもない。もちろん彼にもだ。」
清明がゆづると目が合うようにしゃがみこむとそのまま続けた。
「にしても、ここに陰陽師以外に人間がいるのは珍しい。君はどうやって来たんだ?」
「分かりません。僕は青い蝶についって行ったらこの世界にいたんです。」
ゆづるはそう言うと「青い蝶か…」と清明は顎に手をつく。すると清明の後ろからガサガサと草が揺れる音がした。そこから出てきたのは清明とは対称的な黒を着た青年だった。
「探したぞ清明。急に居なくなるから何事かと思ったぞ。」
「道満か。ちょうどいい。お前は青い蝶の妖怪を知っているか?」
清明は立ち上がり尋ねた。
「何を急に………いや、知らないな。聞いたこともないが、精の類では無いのか?」
道満という男は腕を組みながらそう答えた。
「貴方が芦屋…道満さん?」
「ん?そこの子供。私の名前を知っているとは…何者だ?」
スタスタとゆづるに近づくと窮鼠がすかさずゆづるを庇う。
「道満さん。この子はゆづる。人間ですわ。」
「人間だと?」
「あぁ、青い蝶に連れられて来たらしい。」
清明、道満、窮鼠がゆづるについて話し合いをしているとゆづるはじっと道満を見ていた。
「何だ?子供。私の顔になにか着いているか?」
「え?い、いえ。清明さんと道満さんは仲が悪いと思ってたので、本当は違うのかなって。」
これは本当にそう思っていた。いや、元の世界の本にはそう書いていたのだ。するとそれを聞いた清明は大笑いした。
「ハハハハッ!そうか、私と道満は仲が悪いと思ってたのか。」
「す、すみません。」
ゆづるはすぐさま失礼なこと言ったと思い、謝ると「いや、気にするなと」と道満も口を開いた。
「確かに私と清明は力比べや勝負をすることはあるが、それはお互いを高め合うためであり、同じ陰陽師として力を貸したりすることもある。」
「おうとも。だが一概に仲が悪い訳では無いが、特別にいい訳でもない。私たちは持ちつ持たれつな関係が正しい。」
清明と道満は腕を組みながらゆづるに語った。
「そうなんですね。」
「良かったなぁゆづる。清明さんと道満さんの事が聞けるのは珍しいことやで!」
「痛いよ。窮鼠さん。」
窮鼠はバンバンとゆづるの背中を叩くと清明は口を開く。
「そうだ、妖怪のことなら件に聞けばいい。彼は物知りだからな。」
「くだん?」
「あぁ、体が牛、顔が人の妖だ。確か通りゃんせの森の奥にいるはずだ。」
清明は袖から持っていた人型の紙を取りだし筆で字を書くと「急急如律令」と唱える。
ゆづるは本物の陰陽師だとワクワクして見つめた。すると人型の紙が独りでに動き出す。
「か、紙が動いた!」
「これが陰陽術だ。この式神が通りゃんせの森へと案内してくれるだろう。」
清明はそう言うと式神をゆづるの肩に乗せた。
「通りゃんせの森は少し厄介でな。もし行くなら詳しい妖怪と一緒がいい。」
「一緒に行ってくれないんですか?」
「そうしたいのは山々だが、他にもやることがあってね。申し訳ない。」
陰陽師なら仕方ないか…ゆづるはそう思い「分かりました。」不安そうに言った。
「子供、お前にこれをやろう。」
今度は道満がゆづるに札を渡した。
「これは…」
「もし自分に危険が迫った時に使え。君も陰陽師に詳しいならわかるだろ?唱える呪文は…」
「急急如律令…だよね」
ゆづるがそう言うと道満はにっと笑う。
「そうだ。式神が助けてくれだろう。」
「ありがとうございます。清明さん、道満さん。」
「ほな、ゆづる。みんなのとこに戻ろうか。時間ももう遅いし心配してるやろ。」
うん。とゆづるは言い、窮鼠と一緒に元来た道を歩き始める。
「ゆづる、達者でな。」
「次に会った時には式神が役立ったか教えてくれ。」
清明と道満が手を振る姿をみてゆづるも大きく手を振った。
晴明たちと別れると後ろから音が、そこには沢山の花火が…




