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三十話 百鬼夜行の物語

「ゆづー!持ってきたでぇー!」

「ありがとう!窮鼠さん!」

「ふふっ。はしゃぎ過ぎだよ、ちょっとは落ち着きな。」

「だって!」

ゆづるは今日という日を待ちわびていた。なぜなら今日は『百鬼夜行』の日なのだから。

「それにしてもよくゆづるの大きさの浴衣を持ってたねぇ。」

「部屋の片付けをしてたら出てきたんや。」

窮鼠はゆづるに浴衣を着せると口裂け女が帯を締める。少し苦しいが、はだけない為だから仕方ない。

「おーい!ゆづるぅ!来たぞー!」

「ほれ、もうチビ達来てるで?」

「忘れ物はないかい?」

「ありがとう!大丈夫だよ、行ってきます!」

ゆづるは口裂け女と窮鼠に手を振り、一つ目達が待つ店の入口へ向かった。

「じゃ、行こうぜ!」

「うん!」

道を知らないゆづるは蟒蛇と一つ目の後ろを歩く。

「ねぇ、妖怪の長の集会って言ってたけどどんな妖怪が来るの?」

「蛇の里のヤマタノオロチだろ?烏の山の八咫烏、そして我ら鬼の村の酒呑童子だぜ!」

酒呑童子が長だったことは意外だった。あの茨木童子の尻に敷かれている鬼が長とは…茨木童子が長の方がしっくり来ることは黙ってることにした。

すると蟒蛇がモジモジしながら口を開く。

「ヤマタノオロチは僕のおじさんなんだ。」

「そうなんだ!凄いね!というか蟒蛇ってもしかして…」

「そのまさか!次の蛇の里の長の候補なんだ。」

「や、やめてよ…恥ずかしい。」

首に巻きついた大蛇で顔を隠すとゆづる達が泣かせたと勘違いした大蛇がシャーッと威嚇する。

その迫力に思わず「ごめんなさい」と一つ目と謝ってしまうほどだ。

「見てみろよ!あれが百鬼夜行だ!」

一つ目が指さす方を見てみると賑やかな声や音が溢れかえっている。まるで夏祭りのようだ。

「早く入ろうぜ!」

「うん!」

早速祭りに入れば走り回る小さな妖怪、屋台で商売する妖怪。屋台はこの間見に行った『四季』よりもたくさんあり、1つ目達とどれから回ろうか悩んでいるとドンとゆづるは何かにぶつかってしまった。

「大丈夫ですか…おや?座敷童子くんじゃありませんか。」

「金魚さん!?どうしてここに?」

「私はここで水飴を買いに」

「じゃあここは…?」

ゆづるがゆっくりと顔を上げてみると屋台から女性がひょっこり顔を出す。

「よう!ガキンチョども。よく来たね。」

「あ!二口おばさんだ!」

「こ、こんにちは…」

「はいこんにちは。おやま、知らない顔がいるじゃないか。」

二口おばさんと言われた妖怪はゆづるを見て尋ねると金魚が「座敷童子くんです。」と紹介してくれた。

「は、初めまして。」

「アタシは二口女ってんだ。よろしく!」

とても元気な妖怪だな。それがゆづるの感じた第一印象だった。すると二口女は屋台の中をゴソゴソしたとおもったらゆづる達になにかを差し出した。

「ほら、冷たいラムネだよ。気をつけて飲みな。」

差し出されたのはキンキンに冷えたラムネだった。冷たいラムネを受け取ると手が冷たすぎて痛くなるほどだ。

「「ありがとう!」」

「よかったですね」

「いいの?お金払ってないのに、」

「いいんだよ。子供は元気が一番だからね!」

「ゆづ…じゃなかった、座敷童子!蟒蛇!次はあっち行こうぜ!」

一つ目がゆづると蟒蛇の袖を引っ張り出したので二口女に再び「ありがとう」と言い、蟒蛇と1つ目を追って走しりだす。

「気をつけるんだよ!」

「若い子は元気でいいですね。」

「ほんとにね。」

金魚と二口女はお互い顔を合わせると小さく微笑んだ。

それからゆづる達は酒呑童子や蟒蛇の叔父のヤマタノオロチに挨拶をしたり、屋台で定番の焼きそばを食べたりと祭りを満喫した。

しかし祭りの定番といえば…

「次はどこ行くって……あれ?」

ゆづるは周りを見渡すが一つ目たちの姿が見えない、そう、はぐれてしまったのだ。

「どうしよう…」

人混みのかな悩んでいると再びドンと何かにぶつかってしまった。

「ご、ごめんなさい!」

「……お前…人間の匂いがするな…」

上を見上げるとぶつかったのは顔がない妖怪…のっぺらぼうだった。

しかもゆづるを人間だと判断したのか手を伸ばしてくる。どうしよう、どうしよう!と焦ったその時見覚えのある手が横からのっぺらぼうの手を掴んだ。

「旦那、違いますよ。こいつは座敷童子、人間の家に住み着いとるんやから人間の匂いはしますがな。」

「紛らわしい…気をつけろよ…」

「大丈夫やったか?」

「ありがとう、窮鼠さん。」

窮鼠は「どういたしまして」と返してくれた。

「てか、なんで1人なんや?他のチビはどうした?」

「え、えと…はぐれちゃって…」

「そらえらいこっちゃ。」と言うと急になにか閃いたのかゆずるにそっと耳打ちをする。

「えぇ場所に連れてったろか?」

「えぇ場所?」

ゆづるがキョトンとしていると「こっちや」と窮鼠は手を引っ張りながら歩き出した。

山に向かって歩く窮鼠に少し不安を抱きながら着いていくとそのえぇ場所に着いたのか足を止める。

「見てみぃゆづ、祭りを一望できる特等席や!花火もよう見えるんやでぇ!」

そこに広がっていたのは暗い世界に大量の提灯や屋台の明かりで彩られた美しい夜景だった。

「凄い!すごい綺麗だよ窮鼠さん!」

「おおきに。喜んでもらえて嬉しいわ!」

窮鼠に特等席を案内してもらったゆづる。

するとそこにある青年がやってきて…

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