二十七話 調査の物語
それからカマイタチとネコはとりあえず村を出て聞き込みをすることにした。
「この妖怪なんだが見たことないか?」
「うーん、いんや見た事ないねぇ。」
「この妖怪でありんすが……」
「ごめんなさい、見た事ないわ。」
何十件回っただろうか。ほとんどの回答は「見たことない」「知らない」ばかり。しまいには「誰だ」と言われる始末。
「こんなんじゃいくら時間があっても足りないでありんすよ…」
「言うな。やる気が無くなる。」
2人は大きくため息をつく。するとネコはふと目の前から知っている影を見つけた。
「あ!金魚さん!」
猫が手を振ると向こうも気づいたのか手を振り返しながら近づいてきた。
「ネコさんこんにちわ。どこかお出かけですか?」
「まぁ、そんなところでありんす。金魚さんは?」
「私は頼んでいた品物を取りに市場へ」
金魚は長めの袖をゆらゆら揺らしながら小脇に抱えた荷物を指すと挨拶がてら世間話で盛り上がり出してしまう。
一方、近くにいたカマイタチは何故か金魚を見た瞬間、顔を赤らめながら固まってしまっていた。
だがネコはそんなことお構い無しに金魚と話していると急に襟をつかまれ強い風ととも裏道にまで引っ張られる。
「ちょっと!何す-----!?」
やっとの事で放った言葉もカマイタチに横から刃を当てられすぐに切られてしまう。
状況が全くわからないネコは懐に閉まっていた護身用の苦無に手を伸ばす。
するとカマイタチがゆっくり耳元に囁いた。
「あの妖怪は誰だ…………」
「あぁ?あの妖怪?」
「そうだよ、さっきお前と話してた妖!!」
「え?は?き、金魚さんのことでありんすか?」
必死になって問い詰めるもんなのでネコは気迫に押され口ごもりながら答えた。
カマイタチは名前がわかると刃をしまった。
ネコは助かったと安心したが束の間、急にうっとりし始めたイタチに面倒くさそうな予感がよぎる。
「金魚さん。あの妖怪は金魚さんというのか。」
「だから何でありんすか!?」
「おい、バカネコ!俺に金魚さんを紹介しろ!」
「はぁ!?」
わかりやすい呆れ声を響かせるとカマイタチは後を振り向き独り言を口走る
「俺はあの人に惚れた!あの綺麗な人に!」
その言葉に返す言葉もなく、その前に性別に気づいてないなと感じ、仕方なく諦めるように説得しようとしたが裏道でも騒いでいれば目立ってしまうもので。 道の隙間から息を切らしながら金魚が走ってきた。それに気づいたのか、2人はまるで何事も無かったかのように口笛を拭きながらごまかしだす。
「ネコさん、やっと見つけた。心配しましたよ。強い風が吹いたと思ったら急にいなくなるんですから」
「にゃははは…ちょっと用事を思い出して…」
チラッと目を隣に向けてみると早く紹介しろと言わんばかりの殺気が漂っている。仕方ないと諦めたのか小さなため息をつくと口を動かした。
「え~っと、実はコイツを金魚さんに紹介したく「カマイタチと言います!」にゃっ!?」
自分で紹介しろと言っときながらネコの紹介を遮りカマイタチは金魚の長い袖を掴んだ。
しかし金魚は驚くどころか微笑みながら「よろしく」と返すものだからネコはもうどうにでもなれと思ってしまった。
「ご丁寧にどうも。私は金魚と言います。お近づきの印に水飴いかがですか?」
カマイタチは金魚から水飴をもらうと、嬉しいあまりか周りに小さな旋風が吹き出している。
「あ、ありがとうございます!」
キラキラと目を輝かせながら水飴を食べる姿は猫からしたら不気味な感じがして仕方がなかった。だが金魚はそれをどう捉えたのか、ネコにも水飴を渡す。
確かに水飴は美味しい。
だが、このままでは先に進まないと判断したネコは本題の目的を聞いた。
「あの、金魚さん?針女の居場所知らないでありんすか?」
金魚は元遊楽出身。何かわかるかもしれない。
「針女さん?彼女なら狐の宮にいらっしゃると思いますけど…。」
金魚から針女の居場所を知り、ネコたちは向かうことに。しかし何か持たされたようだ。




