3 私のガラスの靴。
私は、この一日で少しだけ明のことをわかった気がしていた。
きっとこの人は、全てに真剣なんだろう。
大学卒業後すぐに、こんな大企業でいろんなことを背負わされて、彼は、一生懸命やることで、それを補ってきたのかもしれない。
誰にも本音で喋れていないのではないのか。
一人で全部を抱え込んでるのではないのか。
そんな、彼の拠り所に私は、なれないのかな。
そっと明の隣に座り、私達は見つめ合い、私は目をつぶった。
ブルルルル
明のスマホのバイブレーションが鳴った。
「仕事だ。」
キリッと明の顔が変わった。
そこは、カッコよかったけれど。
スマホの画面を隠せてない。
すごく嫌だった。
相手は、玲子さんからだった。
明は、私の部屋を出て行き、私は少しだけ寂しくなった。
それから、私は休日には明と遊びに行くようになった。
いつも強気の社長なのに、休日には急に友達に戻る。
いろんな思い出を作った。
もう、この時には私は彼に惹かれていたんだと思う。
それは、残り一ヶ月の時だった。
明が玲子さんの部屋に入っていくのを見かけてしまった。
私の部屋で緊張していた彼は、美怜さんの部屋では、しないのかな。
そんな疑問が大きく膨らんでいって、仕事にミスが生じ始めていた。
「お前何やってるんだよ。」
摂待中に、少しぼーっとしてしまった。
「す…すみません。」
「…チッ…」
玲子さんに、お前に任せたと言んばかりの目配せを交わして、その場を去る明に、私は涙を堪えることしかできなかった。
ああー。
もう帰りたい。私は、なんでここにいるんだよ。あんな明の顔みたくないし、他の女の人と何も言わずに通じあって。
私は、何!?
玲子さんとホテルの窓辺のソファに座った私は、涙を堪えすぎて変な顔になっていたと思う。
「最近どうしたの?」
玲子さんが優しくって、私の涙腺は、意味をなくしたように涙が溢れてきた。
私は、彼への気持ちを玲子さんに、伝えた。
もう私は、仕事よりも彼を見ていた。
私は、自分の成長なんて、もうどうでもよくなっていて、
休日がくるのがすごく楽しみになっていて、
彼と一緒にいたいけど、
でも、もうどうしようもなく…
好きだった。
玲子さんは、頷いて、玲子さんの部屋に連れていってくれた。
こんな女、嫌だろうな。
迷惑だろうな。
気持ち悪いんだろうな。
玲子さんは、一つの写真を見せてくれた。
「これ、明が大学卒業した時の写真。」
その写真の端には、ぶっきらぼうの顔の明、そして真ん中には、美怜さんが綺麗なウエディングドレスで写っていた。
「あの子口下手だからあんまり、家族のコト言わないでしょ?」
へ…?
私の思考が、またもや停止した。
明と玲子さんは姉弟で、結婚後に名字が変わったということだった。
玲子さんは、その後、明のことをたくさん教えてくれた。
そして、私の勘違いにクスクスとお腹を抱えて笑っていた。
私は、恥ずかしくって顔が真っ赤になっていたみたいで、それにまた、玲子さんは笑っていた。
それからは、バリバリと働いた。
社長からの文句ももうあんまりない。
もう少しで、この出張も終わる。
これが終わったら、私どうなるのかな。
私は、ちゃんと秘書として、雇ってもらえるんだろうか。
雇ってもらっても、派遣みたいに更新されないかもしれない。
また、別の場所は、嫌だなー。
そんなことを考えていたけど、
でももう、大丈夫かな。
最後の週パーティが、行われる。
その日私は、玲子さんに連れられて、ドレスを選びに行った。
私は、ブルーのドレスに決めた。
玲子さんは、やっぱりなんでも似合っていて、玲子さんと比べたらずんぐりむっくりな私は、悲しくなってくる。
玲子さんとは、もう少しでお別れになる。
「はー、悲しいなぁ。もっと玲子さんにいろいろ教えてもらいたかった。」
「大丈夫よ。すぐにまた会えるわよ。絶対に。」
ほんとに私のお姉さんの様な存在で信頼できてなんでも頼りになる人だった。
玲子さんの、お腹の中には子供がいて元々社長秘書の変わりを探していたみたいだった。
私が玲子さんの変わりには、なれないかもしれないけど、私なりに頑張るつもり。
玲子さんから極秘に、男を落とすテクニックも伝授してもらった。
私には、もういらないかもだけどね。
パーティに向かっていると、靴を買い忘れたことに気付いた。
「玲子さんどうしよ。」
「あら、たいへんね。」
笑顔で言うものだから、私は、てっきり貸してもらえるものだと思っていた。
パーティ会場の控え室に行くと赤い包装紙に包まれた箱がポツンと置かれていた。
明の文字で
『美咲へ お前の靴捨てちまったから買っといた。』
私、あの時明に投げつけて…
はるか昔のことに感じて、懐かしい。
箱を開けると、そこには、チューリップ一輪と青い靴が入っていた。
普通バラだろ、なんて思っていたけど、そこが可愛い。
明の準備が終わり控え室に入ってきた。
「靴ありがと。」
「似合ってるよ。」
「…うん。」
パーティが始まった。
パーティにきたいろいろな企業の社長様達に明と一緒に社長秘書として挨拶まわりをし、一段落した時だった。
「少し風にあたらないか?」
外は、寒そうだったけど、少し外の空気を吸いたかった私は、明の腕に手を回し外へ出た。
そこは、パーティ会場のバルコニー。
すこし雪が降っていた。
「そういえば、クリスマス…何もできなかったから、来年は、思い出つくろう。」
「う…うん。」
「ドレス綺麗だよ。。」
「ありがと。」
そして彼は膝をついて、こう言ってくれた。
「美咲俺と結婚してくれないか?」
そう言って彼は、黒い箱からキラキラ光る、まるで小さな星がそこにあるかの様な指輪がそこに光っていた。
出会いは、最悪だった。
最初は、嫌な奴だと思っていた。
あなただってそうだと思う。
でも、あなたが私にチャンスをくれた。
あなたが掴んだその未来に私を連れていってくれた。
これからも、連れていってほしぃ。
そこは、三ヶ月前の私は考えもしていなかった世界で、驚きも悔しさも今の私は、その全てを受け入れて私は、ここに立っている。
「ーーーはい。」
花火が鳴る。
私達の新しい年が始まる。
一読いただき、 ありがとうございます。
小説家になろうは、異世界系が多いと言われますが、恋愛も十分、異世界のような気がします。
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