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私は863歳

ときは32世紀。

世の中はレプリカントであふれていた、

地球以外は。

その地球に来た

ノボルとヒミコ。

タブーを破り、生身の人間となった。

「やだ~白髪!」

「そりゃあ白髪もはえるよ」

「あなたはいいわよ、男だからね」

「・・・」

「白髪の老紳士なんていいじゃない!」

「そうかあ」

「でも白髪の老婦人はみじめ・・」

レプリカントをやめたノボルとヒミコは、年々老いていった。

年齢は、863。

地球に行こうと思ったのは756歳、

木星第二衛星エウロパに住んでいたときだった。

そして唯一レプリカントの住んでいない星、地球に来た。



本当の「幸せ」


何もかも新鮮だった。

まず「家族」

永遠の命のあるレプリカントには事実上無いものだった。

小さな子供が言う

「じいちゃん、ばあちゃん」

なんて微笑ましい言葉、初めて聞いた。

そして何と言ってもすばらしいのが、

「オリンピック」

だった。

レプリカントだけの世界には無かった

「ワールドカップ」

もなかった。

だいたい、スポーツというものが無かった

「スポーツで汗をかく」

こんな言葉なかった。

スポーツしたあとは最高の気分だった。



「計画変更」


海、山、

VRでなく、

正真正銘の本物だった。

しかし、だから、

困った点もあった。

気候によって、

嵐が来、

度々計画が変更された。

VRで生活していたエウロパではないことだった。

不便だったが、

それがまた新鮮だった。



「病院」


「病院」

これも初めて経験した。

「病気」

そのものがレプリカントには無かった。

「死」へ向かう人々、それを見るのは悲しい。

しかし、レプリカントの世界にはない{悲しい}という感情があった。

そして「永遠の別れ」があった。

「死」、正確に言うなら「死の前」には様々なドラマがあった。

それは通常の世界では経験できないものだった。




地球に住んで10年たった。

老いは予想以上に速かった。

「限りある命なんて、なんてすばらしいものなんだ!

って思わない?」

「はははは!」

痴呆になったヒミコは笑うことしかしなかった。

「そうだよなあ、楽しいよなあ」

「はははは!」

この900年近くで最もヒミコを愛した。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 生きるってことは、死という名前の終わりがあって初めて価値が生まれる。いずれ、人類のみんながそのことに気づいた時には、「今日」という日を平等に、世界中のみんなで分かち合って過ごせるんじゃない…
[一言] 限りある人生だから、ふとした瞬間に輝きを感じるのよな。 でも本当にこんな時代…レプリカントの時代…がくるとおもしろいよねぇ。
[一言] VRでは本物の風も暑さも寒さもわからないですよね それと同じで、生身で生きるから身体や気持ちの不調も、なにより幸せも本当に感じられるんですよね 当たり前だけど、再認識しました
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