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08話 ▷ひとが ふえた!

「えぇ、接触禁止は酷くない?」

「寧ろ妥当でしょ」

「さほろ~~~~~‼‼」


透花はさほろの苦手なものに虫が入っていることくらい知っているのに、何故わざわざ近づけてくるのか。

さほろに怒られて当然である。


「……あの、すみません。流石にちょっと煩いです。主に透花が」

「うっそ名指し⁉」

「わぁ、ご指名だね透花。中尾(なかお)もごめん、次からは気を付ける」

「ごめん教祖~‼‼」

「その呼び方()めて。本当に。」

「ちょっと待って情報量が多い」


中尾が教室に戻る中、里野は片方の手で頭を抑えながらもう片方を控えめに挙げる。


「まずさ、〝中尾〟ってまさか()()中尾?」

「あのってどの?もし〝あの〟が中尾ホールディングスのことだったら正解だけど」

「……え、てことはさっきの人って、」

「中尾ホールディングスの御曹司、中尾恭弥(きょうや)

「Oh……」


いともあっさりと答えた透花に里野が言葉を失った。


(……正直、気持ちはめちゃくちゃよくわかる……)


透花と中尾は内部進学からの持ち上がりで、小学生の頃から知り合いらしい。

しかし、さほろと里野は外部受験をして入ってきたため、中尾とはそこまで接点がなかったのだ。

同じように透花に聞き、同じように返されて驚いたのは言うまでもない。


「中尾ホールディングスって言うと超大金持ちじゃん。すげぇな」

「んね。因みに頭も良い」

「アッもうダメだ俺らとは違う人間すぎる。あんま関わらないようにしよーっと」

「いや、なかなかそういう思考になんないと思う」

「え、でも見た感じさほろもじゃん」

「うんまぁそうだけど」


ってかそれより‼‼と里野が言った。


「〝教祖〟って何だよ」

「たまねぎ教の教祖なんだよ、恭弥は」

「〝きょう〟が多すぎてわからん。そもそも何だよたまねぎ教って」

「ふっふっふ、ではこの第一国民に刮目してくれたまへ~」

「久しぶりに聞いたわ、第一国民」


さほろが(ぬる)く笑いながらそっと一歩後ろに下がる。

里野にはそれが何かヤバいことが始まる前兆だと思ったらしく、分かりやすく怯え始めた。


「ちょっと待て何する気だ」

「大丈夫大丈夫、何も変なことは起きないから」

「いや信用なんねぇな⁉⁉⁉」


信用ならないのは全く以てその通りだが、今は朝で人も少なく先生もいない時間帯である。

何も変なことは起きないというのも有り得なくはない話だ。

透花は意味深な笑みを浮かべたまま勿体ぶるように手元を隠した。


「食らえっ‼‼‼」


透花は手を程よく丸め、親指・人差し指・中指の腹同士をくっつけると、それを頭上まで上げる。


「たまねぎッッッッッッッッッッッッッッッッ‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」


後光が射し、足も開いて堂々とポーズを取った。

ぎゅっと目を瞑っていた里野だったが、特に何の変化もないことに気づくとそっと目を開ける。

そして視界いっぱいに広がったのが、謎のポーズをする透花だった訳だが。


「……………………何だこれ」

「たまねぎ教のポーズだってさ」

「……………………え、ごめんどこが?」

「ほらあそこの…………手で歪な形を作ってるとことか…………」

「エッ分かりづらっっっっっ」

「さほろ⁇⁇⁇⁇ロリコン⁇⁇⁇⁇聞こえてるからね⁇⁇⁇⁇⁇⁇⁇⁇」

「おうおう誰がロリコンだコラ」


さほろと里野がコソコソと喋っていたら、いつの間にかn回目の喧嘩に発展してしまった。


「仲良いねお前ら」

「「どこが⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉」」

「そういうとこが」


息ぴったりじゃん、とさほろが言うと、


「嬉しくない…………」

()だなぁ、私はさほろと息ぴったりだねって言われたいのに~……」

「ほら、思ってることまで一緒じゃん」

「「ヤメテ⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉」」


いやまじで仲良いな、と思いながらさほろは腹を抱えて笑う。


「いや3人共、流石に声デカすぎ。僕のクラスまで聞こえるんだけど」

「あ、2回目の裕介」

「2回目の裕介www」


廊下に出てきた裕介は、呆れた顔のまま


「どうせ、須野がまた何かやったんでしょ」


と呟く。


「お、よくお分かりで」

「いや分かるわ」

「さほろ⁉⁉⁉否定してよ‼‼‼‼‼」


そうは言えども裕介は何も間違ってないし、否定したところで嘘になるだけである。


「あ、えっと……三矢?だったよね。昨日振り」

「うん、昨日振り。里野でしょ?A組の」

「よかった、覚えてくれてて」


先ほどまでの喧嘩5秒前の雰囲気はどこへやら、中3の初秋にしてアオハルのような空間が出来上がる。


「うわぁ何このコミュ障の会話」


しかしそれも、透花の一言がぶち壊すのだが。


「これが普通だわ」

「初っ端から喧嘩腰だった透花とは違うんだよ」

「里野も大概やぞ」


さほろの脳裏に浮かぶのは、つい数十分前のあの状況である。

初対面であの状況を作れる2人には悪い意味で舌を巻くしかない。


「……でもさ、流石によそよそしいというか……他人行儀すぎん?」

「いやいや、ほぼ初対面ならさほろだってこう………………ならないか」

「ならないだろうね。さほろだし」

「よっ‼‼流石コミュ強‼‼」

「言うてでしょ……」

「海外旅行中に初対面のホテルスタッフさんと5分で打ち解ける人をコミュ強と言わずして何て言うんだよ」

「え、何その逸話」

「ちょ、私も知らないんだけど何それいつの話ていうかなんで裕介は知ってるの⁉⁉⁉」

「透花ー、どうどう」

プロフィール No.7



三矢裕介



飯メン内では珍しいまとも枠。全員のまとめ役で頼れる存在。

電車の時間が被っているため、登校中にさほろとよく会う。



誕生日:9月17日 身長:177cm 出身地:神奈川県川崎市

一人称:僕 在籍クラス:3C

好きなもの:牛乳寒天、音楽全般、料理

苦手なもの:きのこ類、ゴーヤ、「ごめんなさい」が言えない人


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― 新着の感想 ―
[良い点] TAMANEGI教登場www 私も信者になるか… タマネギィッッッツツツ!!!!!!!!! [気になる点] TAMANEGI教信者として一言だけ言うと 実は正式名称たまねぎ教じゃなくてTA…
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