03話 自己紹介し合いっこ
「とりま、掃除しつつ計画立てますかー」
「うぇーい」
愁斗が言い、さほろも返事をする。
「えっと……決めるのは日程と持ち物と……」
「あとは一応、帰りの時間とか?」
里野と崎戸も口々に言った。
「んー、何か希望とかある?」
「その前にさほろ、ちょっといいか」
「え、どしたの優さん」
「アイツ誰?」
優が指さしたのは裕介だった。
「えっ誰って……」
そのとき、さほろはふと思った。
そういえば、自分以外と裕介は何の接点もないなと。
さほろと裕介は中学1年生の頃に同じクラスになり、趣味も似ていて意気投合した。
中学2年生以降は1度たりともクラスは被らなかったから、崎戸や里野、新村などの中学2、3年で同じクラスだった人たちは知るはずもない。
さほろは里野繋がりで愁斗、崎戸繋がりで優と知り合ったので、その2人が知らないというのも納得がいく。
「……取り敢えず、全員で自己紹介しますか」
「説明すんの諦めたな、さほろ……」
崎戸が小さい声で突っ込んだ。
「えーと、知ってると思うけど空地さほろです。クラスは3B。最近の悩みは崎戸の遅刻癖が治らないことかな」
「崎戸真慈っす。さほろと同じクラスの3B。遅刻癖は高校入学までには治す予定」
「俺は新村尊‼で、3B‼‼よろしく‼‼」
「いや短いな。僕は三矢裕介。3Cで……絵をよく描いてます」
「俺は難波優で3D、一応女子。よろしくな、三矢」
「里野筍です。さほろ、崎戸、新村とは去年だけ同じクラスで今は3A。よろしく」
「同じく3Aの山中愁斗です。一応、里野の友達やってます」
さほろと新村は明るく笑いながら、崎戸は気まずそうに、裕介と優は普通に、里野と愁斗は丁寧に自己紹介をし合う。
新生・飯メンはこの7人だ。
「あれ、そういや優さんと崎戸ってどう仲良くなったの?」
「1年の頃に築かれた主従関係により」
「なんて???????????????」
それから優はあれこれと説明を始めた。
優と崎戸は1年生の頃に、席替えで隣同士になった。
崎戸は授業中に安定の爆睡をかまし、それを優が力尽くで起こした。
それから崎戸は優にビビり散らかすようになったそうだ。
「まぁそうは言いつつ、毎時間キッチリ寝てたけどな」
「……うち、崎戸のそういうとこ嫌いじゃないよ。好きでもないけど」
「それを聞いて俺はどうすればいいの」
「「悔い改めろ」」
「うす……」
さほろ、優から言われ崎戸は縮こまる。
「話戻していい? お店決めないとじゃん」
「あ、そうだね」
愁斗の言葉で、再び会話が始まった。
「取り敢えず何食べるかから決めるか」
「なんか希望ある人……って言っても出てこないよな。日本人だし」
「あぁ……遠慮の塊ってやつね」
あるある、と裕介が頷いた。
「……あ、確か崎戸、アレルギーあったよね?」
「あるよ。卵と牛乳と胡麻」
崎戸の言葉に、崎戸・新村以外の全員が凍りついた。
「え、それってそんなにやばいのか?」
「いややばいだろ‼‼」
裕介が、初めて話して2秒の新村相手に突っ込んだ。
「卵アレルギーってことは、卵料理はまず無理だろ?」
「あとはマヨネーズとかの調味料、クッキーとかのお菓子もだね」
「麺類も食べられないの入ってきそうじゃない? それと…揚げ物もかな」
「牛乳だとパン系はまずアウトだね。肉類の加工品とかも入るかも」
「あとはバターとかヨーグルトとか……惣菜もものによっては食べられないよね?」
優、さほろ、里野、裕介、愁斗が口々に言う。
「……崎戸、お前は普段何を食ってるんだ?」
基本的に何でも食べられる新村は深刻な顔で聞いた。
因みに、〝何でも〟というのは本当に〝何でも〟だ。
本当にお腹が減ったときには、雑草でも食べようとするだろう。
「んー……でも皆と変わらないと思うよ?」
「いやいや、これだけ規制されてて俺らと変わらないはないだろ」
「崎戸の主食って何?」
優と愁斗が聞くと、崎戸はいともあっさりと、簡潔に言った。
「豆」
「「「豆」」」
さほろ、里野、裕介の声が重なる。
「主食が豆の人に初めて会ったわ……」
「だろうね。俺も、主食が俺と同じ人に会ったことないし」
「……待って? 崎戸、主に豆を食ってそこまで身長が伸びたってこと?」
里野の呟きに、全員があ、と言う。
崎戸を見ると、恐ろしいくらいに白い肌と、すらりとした体があって。
「……でも崎戸、うちと同じくらいじゃないの?」
「どうだろ。猫背だし」
「ちょっと胸張ってみ? 頭上げてー、顎引いてー」
裕介が崎戸の姿勢を矯正すること30秒。
「……あれ、新村よりデカくない?」
愁斗が呟く。
「…崎戸お前、4月の時点で身長いくつだった?」
「え? えーっと……172か3だったかな」
「お、崎戸、俺よりでかいな。俺は171だったから」
「クッッッソ高身長め‼‼」
身長163cmの里野がキレた。
「……里野も伸びるよ‼多分‼」
「そうそう、成長期はまだまだこれからだって」
「煽ってるのかな??????????」
165cmのさほろと178cmの愁斗に慰められた里野は最早怒ることしかできなかった。
プロフィール No.2
難波優
ボケもツッコミも担当。恐竜などの絵が超上手い。
実は学校内でファンクラブがあるとの噂も。
誕生日:6月4日 身長:151cm 出身地:愛知県名古屋市
一人称:俺 在籍クラス:3D
好きなもの:ハンバーガー、仲間、恐竜
苦手なもの:なし