02話 プール掃除で仲間確保
次の日。
さほろたち飯メンは、6時間の長い授業を終えたにも関わらず帰宅することはできなかった。
「…………なーんでこうなったんだっけなぁ…………」
強い日差しが照りつける中、さほろは今日の昼休みのことを思い出していた。
昼食の弁当を食べ終え、さほろや崎戸たちは廊下に出る。
そしてタイミングよく出てきた愁斗や優たちと談笑していたときだった。
「空地、崎戸、新村。ちょっといいか」
「あ、先生」
昨日の先生がさほろたちを呼んだ。
「悪いが今日の放課後、プール掃除をやってくれないか?」
「プール掃除?」
明日以降の天気は雨や曇りが続く予報。
学校にあるプールは屋外のため、天気が悪い日は掃除できない。
だから掃除は今日中に済ませたいのだが、午後から急な出張が入ってしまったらしく。
「他の先生方も忙しいから、中3も忙しいだろうけど、頼めないか?」
さほろ、崎戸、新村が顔を見合わせた。
「3人だとどれくらいで終わんのかな…………」
「そもそも終わるのか?」
「終わるか終わらないかじゃねぇ、大事なのは終わらせる心だ」
「何その名言みたいなの」
新村の言葉に呆れ笑いしか出ないが、結局はそうなのだろう。
なるべく早く帰りたいのが本音だが、かと言って断るのも申し訳ない。
「てか何で今の時期なんすか?」
「忘れてた」
「えぇ…………」
本当に緩い先生である。
生徒ながら、少し心配してしまいそうになるほどの、だ。
「ここだけの話…………頑張ったら差し入れもらえるぞ」
「「やります」」
「さほろも新村もチョロくないか……?」
崎戸の呟きを、さほろと新村は拾うことができなかった。
(…………あれ、自業自得か?)
先生からの差し入れにつられてしまった時点で、さほろの負けである。
(まぁ、里野たちを巻き込めたしいいかな…………)
ちらっと後ろを見れば、里野、愁斗、優がホースやデッキブラシを持って準備は万端の状態だった。
「優さん、付き合ってくれてありがとね」
「いーよ、3人でやるのも大変だろ」
「イケメンかよ…………」
優にはファンクラブがあると聞いた。
きっと惹かれている要因は、優の懐の広さによる頼もしさだろう。
「それと……いきなりごめんね。裕介もありがとう!」
さほろが声をかけたのは、隣のクラスにいる三矢裕介だった。
「いや、それは構わんけども。今日中に終わらせれんの?」
「うーん…………」
さほろが後ろを見ると、そこには皆でふざける飯メンがいた。
「…………ごめん無理かも」
「デスヨネー」
あ、とさほろが呟いた。
「裕介、飯メンに入ろう」
「なんて?」
飯というグループができた経緯をかくかくしかじかで話すと、裕介は興味を持ったように見える。
「そこで裕介が入ると、このグループが無法地帯じゃなくなってツッコミが追いつくようになる‼」
さほろが裕介をびしっと指差した。
「あ、僕にメリットはないのね」
「ない‼」
「いっそ清々しいな」
さほろのそういうとこ、嫌いじゃないけどさぁ…………と裕介が呟いた。
「強いて言うなら馬鹿騒ぎする口実ができる」
「…………それはそれでアリ」
「アリなんかーい」
さほろが軽い笑い声を上げる。
「んじゃ、そういうことで。裕介、飯メンとして(このグループを)宜しくね」
「…………なんか僕、今すっげぇ重いモノを任されなかった?」
「気の所為だよ気の所為。木の精」
「それは違うだろ」
裕介もニヤリと笑うと、さほろと握手を交わした。
(これでツッコミの過労死は免れた……!)
「とか考えてたりする?」
「‼⁉」
バレバレだった。
「さほろ?何話してんの?」
「あ、崎戸」
いぇい、とハイタッチをすると、
「崎戸、この人は裕介。うちの友達。裕介、こっち崎戸。うちのクラスの問題児」
「え゙、俺ってそんな認識?」
「十分だろ」
さて、とさほろは言った。
「プール掃除、始めますか!」
プールの底を見る。
底には、自主規制がかけられるほどの汚れで埋め尽くされていて。
「……うち、やっぱ帰っていい?」
「「駄目」」
『飯』 現在:7人
空地さほろ、難波優、里野筍、三矢裕介、新村尊、山中愁斗、崎戸真慈
プロフィール No.1
空地さほろ
コミュ強でツッコミ担当。常識はあるがすぐ悪ノリする。
基本的に標準語で話すが、本当に焦ったり怒ったりすると方言が出る。
誕生日:1月27日 身長:165cm 出身地:北海道札幌市
一人称:うち 在籍クラス:3B
好きなもの:某一番塩ラーメン、夏祭り、海
苦手なもの:ドライフルーツ、虫、幽霊