【終劇】
私は黄昏時が嫌いだ。
ただでさえ学校で疲れるっていうのにさ、家に帰れば地下アイドルの活動なんてさせられる。
双子の妹である吏愛も私と同じく被害者みたいなものだ。アイドルとして成功する為に恋愛やバイトや友達と遊ぶ事だって禁止された。それでも吏愛は密かに彼氏を作ったみたいだけど、彼の家にまで彼女を連れてゆき、謝罪とともに破局させるようにまでした。
私らはあの母お手製のフリフリ花柄の衣装を着て地下ライブに臨む。
それも週5日。ライブ後は反省会と称した母の説教を長時間受ける。
その為に歌の特訓や動画撮影などを疲れが有る無しに関係なく強要させられる。今まで何度も泣いてきたが、その涙も枯れ果てた。
何度でも言いたいが、私は学校帰りの夕焼けをみると不快になる。
学校じゃ寝不足でロクに遊ぶ事もできなければ、勉強だってままならない。
夕日が沈むと同時に家出をしてやろうか?
何度そんな事を考えただろう。
そんなある黄昏時、路上ミュージシャンの親子と遭遇する。髭モジャの父と小学生ぐらいの娘。父がギターを弾く傍らで彼女は素敵な歌声を披露していた。
疲れきっていた私にソレは癒しを与えてくれた。
気がつけば彼らの前に立ち尽くしていた。
彼らが3曲ほど歌って私に御礼を言う。私は使い道のない千円札をこの親子に手渡した。彼らはとても歓んでいた。貧しい家庭なのだろうか?
その時だけはちょっと救われたかもしれない。
でも、帰り道で彼らと遭遇するたびに私はだんだんと苛立ちを覚えた。
或る日の夕方。
父親と逸れた路上ミュージシャンの娘を目にした。
その時は丸三日ぐらい寝てなくて眠たかった。
だからって言うワケじゃないけども、私は気がつけば幼い子供の命を殺めた。
車が走る道路へ彼女を押してやったのだ。
嗚呼、警察に捕まって私の人生も終わる。
でも、あの母親の元で過ごすよりマシか。
ところがそうならなかった。
私は血塗れになっていた。
頭から血が流れて止まらない。
あれっ? 車に弾かれたのはあの娘じゃあないのか?
私は自分の両手の掌をひろげてみた。いつも目にする自分の掌よりずっと小さかった。足も体も膨らみかけた胸だって無くなっていた。まるでSFで小学生の子供にもどってしまった感じ。
「どういうこと?」
ああ、やっと会えましたね。
「誰?」
私のお父様が呪いをかけ私を転生させてくれたみたいで。私たち親子は悪魔様に魂を売って毎日を生きているのです。そのご加護があったということ……
「出てきなさい! 目の前でちゃんと話せ!」
目の前でちゃんと話せ?
ちゃんと話して欲しいのはアナタのほうですよ?
「何を? この体は私の物じゃない! お前の物だ!」
なぜ私を殺されたのですか?
「お前が憎かったからだ! 幸せそうなお前が憎かったからだ!」
それは本当に私が悪いことなのでしょうか?
「それは……」
どのクチが何をほざいてやがる?
「おねがい……ごめんなさい……一瞬の気持ちの迷いでつい……」
コレが裁判でお前が成人であれば極刑を求刑されても仕方のないことです。お前に掛けた呪いの為にお父様も首吊り自殺をされました。
「えっ……どういうこと……」
この呪いはお父様がお前にかけられたもの。
「チョマッ! ギャアアアアアアアアアアアッ!?」
内容はお前の魂と私の魂を交換すること。そして私が生きた10年間分、車に撥ねられ続ける刑に処されるということ。ご愁傷様です。可哀想だとはこれっぽっちも思いませんが。
ああ、やっとアヤツとお会いできました。
今日も酷い叫び声が聴こえます。
でもお父様、どうして私なんかの為にそんな無茶を……
ええ。気持ちが晴れる事なんてありませんよ。申し訳ながら。
何だか今でも地獄を生きているようです。
アイツは何も答えてくれてなかったから。
でも、アイツの身で生きて分かったのですよ。
この人間というものはその使いようで利用する価値が生まれる生き物だと。
この生涯を終えたのちにそちらへ向かいます。
今度は私が此処に貴方をお連れしますから。
また御一緒に悪の讃美歌を歌いあげましょう――
∀・)読了ありがとうございました♪♪♪いやぁ~拙作でもトップ3に入るぐらい胸糞な作品だったのではないでしょうか(笑)考察して貰えたら嬉しいのは嬉しいですが、僕のなかで明確な答えなんかないですね。ただ子供の命を奪おうとした元芽久の女子高生こそ、僕は現代にある恐怖そのものだと思いますね。今回の夕暮れ企画にて拙作は「不気味な夕焼け」を意識しました。夏ホラーでだす予定だった作品。なんとか供養できてよかったです(笑)