【第一幕】
ああ、あんなにもアナタを慕おうと思いましたのに。
ああ、あんなにも私達を応援されておりましたのに。
アナタの心眼には私の夢が写ってすらなかったようで――
残念です。
ああ、あんなにも痛くて辛い思いをしましたのに。
アナタは私を迎えに来てくださらなかった。
でも、お陰様でたくさんの歌が出来上がりました。
特にこの歌がきっと世に広がる事となるでしょう。
全て今のアナタに捧げましょう。
アナタはきっと私がお嫌いだったのでしょう?
ええ……そうですよ?
何を隠そう、この私も同じで御座います。
目を覚ましました。とても心地が良いです。
ふかふかのベッドという訳ではございませんが、それとは違った素敵な寝心地ですね。
ええ? 昨晩も素敵な夢をみましたよ?
大きなステージで吏愛さんとご一緒に歌手デビューをしましたの。
その光景も遠くはなさそうです。
「おはよう」
「おはようございます。吏愛さん」
「今日も気持ち悪い感じね?」
「そう仰らないでください。私は元々こういう人間ですから」
「双子なのだし、タメ語でよくない?」
「いいえ。私は吏愛さんをお姉さまと思って慕っておりますので」
「まぁ~芽久がそう言うなら、いまの芽久に慣れるしかないよね~」
吏愛さんとお揃いの寝間着で顔を合わせます。
吏愛さんは化粧にまぁお時間を掛けられるお姉様。
私はその間を使ってアナタに祈りを捧げるのです。
あんなにも愛おしくて可愛らしかったのに、幼くして亡くなられたアナタを忍んで。
「終わったよ」
「あら、今日もお美しいですね。吏愛さん」
「お世辞は結構よ。どうぞ」
「では。失礼致しますね?」
「何で家族なのにそんなよそよそしいの?」
こうして棚原芽久と棚原吏愛さんの1日がまた始まるのです――
∀・)読了ありがとうございます♪♪♪今年の公式企画である夏のホラー2023でだそうかと思っていた作品なのですが、家紋武範さま主催「夕焼け企画」に作品の背景がマッチすると思いまして投稿いたしました。え?どこがホラー?と思いになられるかもしれませんが、最後まで読んでください。
∀・)このおはなしは「夕焼け」もおおいに関わってきます――