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6.交通整理隊のお仕事

 

「よし、みんな揃ったな?」

「ん」

「はい。おはようございます!」

「「おはよぉ~」」


 元気かそうじゃないか見分けの付け難い無表情なベルジャナ。

 いつもキラキラした碧眼で見詰めてきて、ハキハキ返事をしてくれるエヴァレット。

 夜更かしして服を作っていたのだろう。まだ眠たそうなサンドとポルト。


 班員の様子を注意深く見る。


「うん、いつも通りだな。今日も頑張ろう!」

「ん」

「はい!」

「「はぁ~い」」


 揃って朝食を摂り、武器と防具を纏い、仕事道具の信号旗と砂時計を持ち、副隊長――隊長は今日は休み――の元へ。


「第19班班長マーティンです。総員準備完了しました! 指令願います」

「“平民”班は一番乗りするのが普通だと思っていたが、今日は遅いなぁ? 偉くなったものだ」


 副隊長が椅子にふんぞり返って、神経質そうな目をギョロリと光らせながら言ってくる。

 そんな決まりはないが、嫌味な副隊長のいつものイビリだ。少し付き合えば収まるさ。


「申し訳ありませんっ! 伸びた鼻を折って頂き、ありがとうございます!」

「……ふんっ! まあいい。えーっと? 19班は午後は訓練、午前は第2商会通りだ。せいぜい商人の邪魔にならんようにな」

「は! 気を付けますっ!」



 隊員揃って第2商会通りに着くと、通りでは既に揉め事が起こっていた。それに伴って渋滞も起きようとしている。

 ここは中規模商会が軒を連ねる店舗街。

 朝のこの時間帯は、仕入品の搬送や取引先への商品搬送で、一日の内に最も混雑する。

 いきなり殺伐とした様相で勤務が始まることも珍しくは無い。


「よぉーし。揉め事へは俺とぉ……ポルトで行こう」

「うっす!」


 おおっ、“男”モードで気合が入ってるな。


「他3人は、交通整理を始めちゃって」

「ん」

「はい!」

「オッス」



「はいはい衛視でーす。どうしたの?」


 市民を威圧しないように、出来るだけ軽い感じで揉め事の輪に入って行く。

 現場は大型の荷馬車と手押しの荷車の衝突、と言うか巻き込み事故みたいだな。


「え、衛視様! あっしが荷を引いて直進していたところに、外側からこの馬車が――」

「――馬鹿だとっ?」

「馬車って言っただろうが! よく聞きやがれっ」

「なんだと?! テメエッ!」


「まあまあ、落ち着いて。お互い邪魔しないで言うこと言おうよ。じゃないと『調書』を取らないといけないよ? この忙しい時に、行きたくないでしょ? 庁舎」

「「わ、わかりました……」」


 その場で解決しないような揉め事や事故だと、当人達も庁舎へ行って『調書』を取った上で裁定を下す、最低でも一日がかりの大ゴトになる。

 商人たちにとって丸一日~数日潰れるのは御免だろうし、穏やかな口調でこの場での解決を調停する。

 俺達にとっても、面倒事が避けられるので穏やかに穏やかに……。


 俺が当事者から話を聞く。

 双方の言い分を聞き、被害を確認し、責任の割合を決めて、和解させる。

 修繕費や賠償が発生する場合も、その場で取り決め、支払わせる。

 今回は馬車側が無理に追い越しを掛けて割り込もうとして発生した事故と言うことで和解が成立した。


 このように『交通整理隊』と言っても、往来整理をするだけでなく、事故・揉め事の処理といった歩道を含む道路周りのトラブル対応や、軽い道路補修までもが職務の範囲に含まれるのだ。


「衛視様、ありがとうごゼエました! 直ぐに道を空けますんで、ちょいとお待ちを」

「ああ、それなら俺達でやるから。……ポルト?」

「うっす!」


 俺の指示を受けたポルトが衝突したままの状態で止まっている馬車に近づき、その怪力で荷台を持ち上げ、ゆっくりと荷台同士を引き離す。


 ひとりで大型の荷台を持ち上げるポルトの様子を、当事者二人が口をあんぐりと開けて言葉を失っていた……。


 俺とポルトも交通整理に戻り、今日はこれ以上のトラブルは起きなかった。


「さ、メシだメシ!」


お読み頂きありがとうございます。

短編小説ですが、話数があります。

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