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4.マーティンの家族

 

 隊長への報告を終えると武器保管庫へ向かい、支給の軽鎧と剣を返却する。


 軽鎧は肩から首筋、胸、背中の一部を守る金属防具を革ベルトで繋いだ軽微な物で、剣もキレ味の鈍い見せ掛け染みた物。大男の双子にしてみれば玩具みたいな代物だ。

 貴族や金持ちは自前の軽鎧や剣を使っている者がほとんど。

 うちはエヴァだけが、「これだけは持って出ろと言われまして……」と自前の軽鎧と細剣を身に着けている。


「「じゃあマーちゃん、ベルちゃんエヴァちゃん、また明日ねぇ~」」

「おう、お疲れ! 明日も遅れるなよ?」

「ん」

「お疲れさまでした」


 サンドとポルトが、サンディーとポーラになって保管庫を後にする。

 衛視には一人部屋の官舎が用意されているが、男性衛視官舎はいかんせん遠い。

 彼女――彼らは、自分たちの夢の為に近場に部屋を借りて二人で暮らしている。衛視の仕事で金を貯めながら、将来服飾の店を持つことを目標にしていて、空き時間はいつも部屋で服を作っているそうだ。


 支給品の紺シャツ姿で3人揃って食堂へ。

 交通整理隊は、基本的に午前・午後の交代制で大規模な通りに立つが、必ず庁舎から現場へ行き来するので、希望者は庁舎で朝・昼・晩の食事が提供される。

 貴族や余裕のある隊員は、必ずしも食堂を利用しない。

 それに、毎回日替わりのスープと固いパンだけなので、3食利用する奴は毎食同じメニューになってしまうのだ。特に晩飯は煮詰まったしょっぱいスープに悶絶することもザラだ。


「ぐふぅ~! 今日もしょっぱい……」

「ん」

「先輩方、パンにしっかりと吸わせれば? いえ……食べられるだけで幸せです!」



 食事を終えると、庁舎を出てエヴァとベルジャナと別れる。

 女性衛視官舎は逆方向で、男性衛視官舎よりも近い場所にあるからな。

 それにしても彼女らは仲が良い。

 朝も一緒に登庁して、一日中同じ班で過ごし、帰りも一緒に帰る。


 俺は一人帰路に着くが、途中で平民御用達の肉屋に寄って鳥か兎の皮を剥ぎ内臓を取り出した丸肉を1羽分買って、包んでもらわず裸のまま持って帰る。今日は太った兎肉だ。

 4階建て5階建ての高い建物ばかりの市街を抜けて旧市街に入ると、2階建ての高さで3階建ての古い建物が並ぶ。

 その一角にあるのが、平民男性衛視用の官舎だ。

 ギシギシと軋む急な階段を3階までよじ登り、部屋の鍵を開ける。


 ――カチャリ。

「すぅ~、はぁ~」


 深呼吸とちょっとした心構えが必要なんだ。

 なぜなら――


 ギィィィー。

「フシューッ! シャーーー!」


 俺の“家族”が、腹を空かせて……四肢を床に着けて丸めた背中を高く上げる『やんのかポーズ』で出迎えるからだ。

 格子窓から日も差さずに薄暗くなった部屋の中で、黒い身体を闇に溶け込ませて、目だけを金色に光らせて今にも飛び掛かって来んとしている。


「た、ただいまぁ~」


 俺が部屋に入り、バタンとドアを閉めたのを合図に飛び掛かってくる!


「フギュァァアアアアッ!」


 俺の首を目掛けて! 仕留めにくる!


「うぉっとっとぉ~!」

 ガブッ! ヌチャ……ゴリゴリゴリ――


 ちょうど首のところに買ってきた兎肉を差し出せば、バクッと咥えて跳び退き、夢中になってかぶり付く。


「お腹空いてたね~? 遅くなってごめんよ、ミミィ」


 ミミィさんは、猫……だと思う。

 魔力持ちだと判明した20年前、俺が王都に来る途中でこっそり拾った子猫(だと思う)が、20歳を超えて全長150ソンタ(cm)位になったけど……猫だと思う。


お読み頂きありがとうございます。

短編小説ですが、話数があります。

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良きところで広告下の☆☆☆☆☆を塗り潰して、評価して頂ければ幸いです。

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